製薬業界で働く多くの方が、言葉にはできない違和感や不安、焦燥感を抱えているそうです。

言語化の難しい「モヤモヤ」が存在しています。このモヤモヤは、単なる感情論ではありません。製薬ビジネスが持つ構造的な特徴に深く根差しているからです。

一般消費財のように自由市場で価格が決まるビジネスとは異なり、製薬業界では価格は国が定める薬価制度によって決まります。

医師や病院との価格交渉で競争優位を築くことはできず、さらに薬価は2年ごとに見直され、売上が伸びれば薬価が下がる市場拡大再算定も適用されます。

つまり、努力して成功を収めたにもかかわらず、制度変更により売上が減少するリスクを常に抱えているのです。

この「成功しても必ずしも報われない」という構造は、現場の努力が無力化されるかもしれないという無意識の恐怖を生み出します。

現場にとっても、本社にとっても、成果と結果がダイレクトに結びつかない環境は、活動の意味や手応えを見失いやすくします。これが、製薬業界に蔓延するモヤモヤ感の根本原因です。

さらに社会保障費抑制という国家的命題のもと、高額薬剤に対する制度的制約は今後ますます強まるでしょう。市場の拡大だけでは成長を保証できない現実に直面している今、従来の延長線上の努力だけでは、いずれ立ち行かなくなる危機感もまた、モヤモヤの一部となっています。

このモヤモヤは、個人の意欲やスキルの問題ではありません。制度と市場の構造そのものがもたらす、業界全体の深い課題なのです。これを正しく認識することが、製薬業界で働く私たち一人ひとりにとって、第一歩となるはずです。