製薬企業でよく使われている「エリアバリューマトリックス(AVM)」は、営業戦略において非常に有用な手法です。エリア単位で市場ポテンシャル(患者数や売上)と自社シェアを2軸に取り、9つのセグメントに分類してリソース配分の指針とする。多くの製薬企業では、すでにこのAVMを活用しているため、DXS Stratify®を紹介した際に「それ、もうやってますよ」と言われることがあります。


しかし、この2つは似て非なるものです。DXS Stratify®はAVMの延長線ではなく、まったく別の思想と構造に基づいた戦略意思決定支援アプリケーションです。


まず最大の違いは、分析単位の解像度にあります。AVMは支店単位やエリア単位という広域集計を前提としており、施設ごとの違いを埋没させてしまいます。一方、DXS Stratify®は施設単位で市場規模・競合シェア・自社シェアを数値化し、1施設ごとにターゲティング精度と勝ち筋を明示できます。


また、AVMは基本的に「今ある数字を区分けする」ためのマトリクスに留まり、行動方針は個々の営業やマネージャーの判断に委ねられます。対してDXS Stratify®は、施設のタイプ別に「攻めるべきか」「維持か」「撤退か」といったアクションガイドラインを提示します。つまり、単なる分析ツールではなく、戦略設計と実行支援の両方を兼ね備えているのです。


さらに、新規性の観点から言えば、DXS Stratify®はシェア値の“差”=競争優位性を用いる点において、従来の分析にはない視点を提供します。単に「シェアが高い/低い」ではなく、「相手とのギャップは埋められるか?」という戦力差の概念が組み込まれており、これはLanchesterの法則やゲーム理論に基づく構造であり、実際に特許も取得しています。


これにより、属人的な勘や慣習ではなく、数理的な根拠を持ったターゲティングとリソース配分が可能になります。さらに、施設タイプに応じた活動量指標(KPI)や評価指標(KGI)の設計にも直結するため、戦略と現場行動の一体化が図れるのです。


AVMはあくまで過去の売上と構造を俯瞰する“地図”だとすれば、DXS Stratify®は勝ち筋と次の一手を示す“羅針盤”です。「もうやってるよ」の一言で片付けるには、あまりにも異なる可能性を秘めています。

現在の製薬企業の営業活動は、かつてないほど多様なチャネルと指標に囲まれています。MR(医薬情報担当者)の訪問、Webディテール、セミナー、メール、オウンドメディア、、、活動の幅は広がったものの、「どこに集中すべきか」「どう成果に結びつけるか」という本質的な問いには、明確な答えが出ていない企業が多いのが実情です。


現場では未だにABC分析によって売上順に顧客をランク付けし、上位施設にリソースを集中させる運用が主流です。一方、本社はエリアポテンシャルやスコアリングによる優先順位を導き出します。しかし、そこには致命的なギャップが潜んでいます。なぜなら、「市場性(ポテンシャル)」と「競争状況(競合との戦力差)」が分離したまま、戦略が組まれているからです。


また、戦略よりもKPIや行動指標が先行してしまう傾向も深刻です。「訪問回数を増やす」「講演会を開催する」といった施策はあっても、それがどの顧客で、どの製品に、どの競合を意識して行われているかが曖昧なままでは、効果が見えづらく、疲弊だけが残ります。


つまり今、多くの製薬企業が直面している問題は、「動いているのに勝てない」「データはあるのに活かせない」「戦略があるようで無い」という戦略不在のPDCAなのです。


この混迷を打破するには、行動量ではなく戦略的な“リソース配分の意思決定”を先に置く必要があります。顧客・市場・競合の構造を定量的に把握し、戦うべきターゲットと引くべき戦線を明確にする。いま、製薬営業に最も求められているのは、行動ではなく意思決定の可視化です。


「ではどうするか」──戦略を“見える化”してから動く
このような混迷を抜け出すために必要なのは、まず戦うべき場所(市場)と勝てる相手(競合)を明確にすることです。これを実現するのが、競争構造を定量的に可視化し、戦略的リソース配分を可能にするアプリケーションがDXS Stratify®です。


DXS Stratify®は、独自に構築し特許を取得したアルゴリズムによるデータ分析アプリケーションです。IQVIA社のDDDなど医薬品販売データベースから、市場サイズ、自社シェア、競合シェアをもとに、「市場の大きさ」と「競争優位性」の2軸から施設をタイプ分類します。その結果、以下のような判断が可能になります。


• 高ポテンシャル × 優位性あり:維持・強化のための重点投資
• 高ポテンシャル × 優位性なし:短期集中的な戦力投入による勝負
• 低ポテンシャル × 優位性あり:コストを抑えて維持
• 低ポテンシャル × 優位性なし:撤退や対応簡素化を検討


このように、「どこで勝ち、どこを捨てるか」を事前に明確にしたうえで戦略を立てることができれば、MR個人の勘や経験に依存する属人的なターゲティングから脱却できます。また、本社と現場が“戦略という共通言語”でつながることで、KPIの意味づけも変わります。回数を追うのではなく、「このターゲットに対して、何を実現したか」、すなわちKSFを語れるようになるのです。


さらに、DXS Stratify®は“過去データを分類する”だけで終わりません。施設タイプごとの活動量やアプローチ法、推奨KPI設定まで支援できるため、PDCA全体の骨組みとしても活用できます。つまり、“分析”ではなく“戦略設計の起点”として機能するのです。


市場ライフサイクルが成熟期から衰退期に向かういま製薬営業に必要なのは、「手段の最適化」ではなく、「戦う場所と勝ち方の選択」です。動く前に、まず“どこで勝てるか”を見極めましょう。戦略の見える化が、その第一歩になります。