「情報通信データ技術の進歩はマスマーケティングをターゲットマーケティング化する」

マスマーケティングとターゲットマーケティングの違いは、潜在的な不特定多数を対象にするか、予め特定された市場を対象にするかにあります。しかし、情報通信技術やAI、ビッグデータの進歩により、マスマーケティングでもパターンやトレンド分析を通じてメインターゲットとなる顧客属性を抽出することが可能となっています。

これにより、マスマーケティングがターゲットマーケティングに近づいていると言えます。そのため、マスマーケティングにおいてもシェア(市場占有率)を指標とすることが重要になります。

顕在的市場においてシェアを指標とするべき理由は、企業の競争力を総合的に評価できる点にあります。まず、市場シェアは、企業が市場全体でどれだけの割合を占めているかを示すため、競合他社との相対的な競争力を評価するのに非常に有用です。競合環境の中で自社の位置を明確に把握することで、戦略的な意思決定がしやすくなります。

さらに、高い市場シェアは、顧客に対するブランド認知度や忠誠心の高さを反映しており、市場での影響力を定量的に示します。これにより、企業がどの程度市場を支配しているかを理解することができます。シェアの変動を継続的に追跡することで、市場のトレンドや競合他社の動向を迅速に把握できるため、適切な対応策を講じることが可能となります。

また、市場シェアのデータは、どの市場セグメントにリソースを集中させるべきかを判断するための重要な基盤となります。具体的には、シェアが高いセグメントではさらなる強化策を講じる一方で、シェアが低いセグメントでは改善策や撤退を検討する材料となります。これにより、限られたリソースを最適に配分し、効率的なマーケティング戦略を構築することができます。

情報通信技術やAI、ビッグデータの進歩は市場を顕在化し、マスマーケティングとターゲットマーケティングのいずれにおいても、シェアを指標とすることにより、企業は競争環境における自社の位置付けを正確に理解し、戦略的な意思決定を行うことができます。これにより、より効果的な市場戦略を策定し、競争優位を確立することが可能となるのです。

DXS Stratify®は市場の競争環境を定量化し可視化するための分析アプリケーションです。

「市場参入の条件とKGIの設定」

新規市場参入する際は、利益を得るに十分な市場規模があるか、市場が成長期にあるか、自社の競争優位性があるか、この3つが重要です。

市場規模が予め把握できる場合、KGI(Key Goal Indicator, 重要目標指標)としては、売上金額よりも市場占有率(マーケットシェア)を設定する方が合理的です。

市場の成長と競争力の評価
市場占有率をKGIとすることで、自社の競争力や市場での立ち位置を明確に評価できます。売上高では市場全体の成長や他社との比較が困難ですが、市場占有率は市場全体に対する自社の割合を示すため、競争力の指標として有用です。

長期的な戦略立案
市場占有率をKGIとすることで、短期的な売上目標よりも長期的な戦略立案が可能になります。市場占有率を維持または向上させるための施策を考えることで、持続的な成長を目指した計画を立てることができます。

マーケティング効果の測定
市場占有率を目標とすることで、マーケティング活動の効果をより正確に測定できます。新製品の導入やプロモーション活動が市場占有率にどのような影響を与えたかを分析し、効果的なマーケティング戦略を策定することができます。

資源配分の最適化
市場占有率をKGIとすることで、リソースの配分を最適化できます。市場占有率を高めるためにどの市場や顧客層に重点を置くべきかを明確にすることで、効果的なリソース配分が可能になります。

競争優位性の強化
市場占有率を高めることは競争優位性の強化につながります。市場占有率が高い企業はスケールメリットやブランド力を活かしてさらに競争力を高めることができます。

市場占有率をKGIとする場合、シェア理論、ランチェスターの法則、ゲーム理論は非常に有効なツールとなります。

シェア理論
市場での占有率(シェア)を中心に企業の戦略を考える理論です。市場占有率が高いほど、スケールメリットを享受しやすく、競争力が増します。

ランチェスターの法則
戦闘理論をもとにした市場シェアの戦略を分析するツールです。特に弱者が強者に対抗するための戦略に有効です。

ゲーム理論
競争相手との戦略的なやり取りをモデル化し、最適な行動を導く理論です。競合他社の動きを予測して戦略を立てるのに有効です。

これらの理論を組み合わせて活用することで、より効果的に市場占有率を向上させることが可能です。理論が補完し合い、多面的なアプローチが取れるのも利点です。

DXS Stratify®はシェア理論、ランチェスターの法則、ゲーム理論により、市場環境を定量化および可視化することで、意思決定支援を可能にします。

「新しいマトリクス分析法のご紹介」

1. 現代市場環境の変化

現代の市場環境は、以下のような大きな変化に直面しています。

  • 人口減少と経済の低迷: 市場が縮小し、従来の市場拡大を前提とした戦略が有効ではなくなっています。
  • ゼロサム市場: 限られた市場シェアを奪い合う競争が激化しています。

2. 既存のマトリクス分析法の限界

従来のマトリクス分析法には以下の限界があります。

  • GEマッキンゼーマトリックス: 市場の魅力度と競争力だけでは、縮小する市場での競争の激化を十分に捉えられません。
  • BCGマトリックス: 市場成長率と市場占有率に基づくため、成長しない市場での戦略には限界があります。
  • アンゾフの成長マトリックス: 市場と製品の軸だけでは、競争優位性の維持や競争地位の変化を十分に評価できません。

3. 新しいマトリクス分析法の優位性

市場規模競争地位および競争優位性(シェア理論に基づく)の2軸に基づいて、12のマトリクスに分類する新しい分析法は、現代の市場環境において以下のような利点を提供します。

  • 市場規模と競争地位: 縮小する市場においても、競争力を維持し、強化するための戦略を明確に立案できます。
  • 具体的な軸: 競争地位と競争優位性の軸は、競争が激化するゼロサム市場において、他社との相対的な位置を評価するのに有効です。

4. 販売データを活用した新しい方法論

販売データを活用して、さらに具体的な戦略立案と実行を支援します。

  • データ駆動型意思決定: 3Cに則って市場規模と競争地位のデータを収集・分析し、より精緻な戦略を策定します。
  • リアルタイム分析: リアルタイムで市場と競合の動向をモニタリングし、迅速に戦略を調整できます。

新しいマトリクス分析法のまとめ

この新しいマトリクス分析法は、ビジネスの成長と競争力の維持に向けた強力なツールです。現代の市場環境において非常に有用であり、従来の方法では得られない洞察と戦略的優位性を提供します。

「マーケティング(形式知)とセールス(暗黙知)のバランス:ピーター・ドラッカーの教え」

「現代経営学の父」として知られている、ピーター・ドラッガーは、「マーケティングの理想はセールスを不要にすること」と言いましたが、一方で、「真に重要なことは定量化できない。数値だけで判断しようとすると決断を誤る」とも言っています。

すなわち、観察によって顧客の行動変容を認識している営業担当者の存在が必要と言っているように見えます。

ピーター・ドラッカーの言葉は、一見矛盾するように見えますが、実際にはマーケティングとセールスの役割、そして定量的データと定性的観察のバランスについての深い理解を示しています。

「マーケティングの理想はセールスを不要にすること」というドラッカーの言葉は、マーケティングの目的が顧客ニーズを深く理解し、それに基づいて製品やサービスを提供することによって、顧客が自発的に購入を決定する状況を作り出すことだという意味です。これは、製品やサービスが顧客にとって非常に魅力的であり、必要とされるものであるため、セールスの力を借りなくても売れるという理想を描いています。

一方で、「真に重要なことは定量化できない。数値だけで判断しようとすると決断を誤る」という言葉は、ビジネスにおける意思決定がデータだけに頼るべきではないという警告です。定量的データは重要ですが、それだけでは全体像を把握することはできません。顧客の行動や心理、文化的背景など、数値化しにくい要素も大切です。

営業担当者は、顧客との直接的な接触を通じて、数値データでは捉えきれない顧客の声やニーズ、行動変容を観察する重要な役割を担っています。営業担当者のフィードバックは、マーケティング戦略をより精緻にし、顧客満足度を高めるために不可欠です。

このように、ドラッカーはマーケティングの力を最大限に引き出すことを目指す一方で、人間の感覚や直感、観察を軽視せず、それらをビジネスの意思決定に組み込むことの重要性を強調しています。したがって、定量データと定性的観察の両方をバランスよく活用し、顧客のニーズや行動を深く理解することが重要です。

「顕在市場を対象とする業界では先ずは市場占有率を決める」

予め対象市場が顕在化しており、市場占有率が重要な戦略となる業界には、医療用医薬品や医療機器、公共インフラ、教育業界、ウェディング業界、住宅建設業、自動車販売業、教育玩具業界、人材派遣業界などがあります。

これらの業界は人口統計、経済成長率、購買力、法規制や政府の政策などから、市場の規模が比較的明確で、需要が予測しやすいため、事業計画や戦略、マーケティングプランが立てやすいという特性があります。

例えば、医療用医薬品の使用は、定められた適応症を持つ患者に限定されており、これらの製品は医師の処方が必要です。そのため、市場は事前に顕在化しています。

反面、予め市場が潜在化しているために、複数の競合参入により、激しい競争が特徴的なビジネスモデルとなります。さらに、特有の規制と保護により同一化を余儀なくされることで、差別化が困難な、いわゆるレッドオーシャン市場です。

医薬品ビジネスは特定の患者層に限定されるため、消費財ビジネスのように広範な潜在顧客を対象とした、売上の積み重ねを目的する戦略とは根本的に異なります。消費財市場では売上の増加が主な目標であるのに対し、医薬品ビジネスでは顕在市場におけるシェアの拡大戦略が重要です。

市場シェアの獲得は、顧客のニーズや競合との関係によって直接的な影響を受けるため、戦略の選定はこれらの要素に基づいて相対的に行う必要があります。

そのため、市場占有戦略を立てる際には、市場規模だけでなく、自社の競争地位や競争優位性を理解することが不可欠です。

競争の激しい市場での戦略を設計では、市場規模と成長性から、製品のライフサイクルごとに、競争優位性による実現可能なターゲットシェア値を定め、ドミナント戦略で最終的な市場占有率を達成することになります。

すなわち、事業戦略ではターゲットシェア値を定め、事業計画ではターゲットシェア値を達成するための手段を定めます。

DXS Stratify®は実現可能なターゲットシェア値を競争地位および競争優位性から算出することが出来ます。

「顧客ターゲティングの3つのケースとその精度」

顧客ターゲティングは、製品やサービスを最も求めている見込み顧客に効果的にリーチするための戦略です。顧客ターゲティングの方法について、3つのケースを想定してみました。
①:顧客情報のみで行う
②:①に自社の要因を加味する
③:①と②に競合他社の要因を加味する。

①:顧客情報のみで行うケース
このケースでは、顧客の基本的なデモグラフィック情報(年齢、性別、居住地など)や過去の購買履歴、行動データを基にターゲティングを行います。この方法の利点は、顧客の基本的な傾向やニーズを把握しやすいことです。しかし、このアプローチでは、自社の製品やサービスがどのように顧客の特定のニーズを満たすか、また、競合と比較してどのような優位性を持つかを考慮していません。そのため、ターゲティングの精度は基本的なレベルに留まり、より細分化されたニーズや特定の顧客グループを見逃す可能性があります。

②:①に自社の要因を加味するケース
このケースでは、顧客情報に加えて、自社の製品やサービスの特徴、価格設定、ブランドのポジショニング、利益率などの要因を考慮します。これにより、自社の強みや弱みを踏まえた上で、最も適切な顧客セグメントにターゲットを絞ることができます。自社の資源を最も有効に活用し、ROI(投資対効果)を最大化する顧客グループを特定できるため、ターゲティングの精度は大幅に向上します。このアプローチでは、自社の提供価値を最も必要とする顧客セグメントを明確に特定できます。

③:①と②に競合他社の要因を加味するケース
このケースでは、顧客情報と自社の要因に加えて、競合他社の戦略、製品/サービスの特徴、価格設定、市場でのポジショニングなどを考慮に入れます。競合分析を行うことで、自社の相対的な強みや弱みを客観的に評価し、市場の隙間や競合が満たしていない顧客ニーズを見つけ出すことが可能になります。この全面的なアプローチにより、ターゲティングの精度はさらに高まり、競争上の優位性を確立するために必須の戦略的な意思決定が可能になります。市場全体の動向を把握し、競合に対する有効な差別化戦略を立てることができるため、最も効果的なターゲティングが可能になります。

結論
顧客情報のみに基づくターゲティングは基本的なレベルで有効ですが、自社の要因や競合他社の要因を加味することで、ターゲティングの精度は大幅に向上します。特に、自社と競合他社の要因を両方考慮することで、市場の深い洞察を得て、競争上の優位性を確立するための戦略を立てることができます。各ケースでの精度向上は、市場の理解を深め、より効果的に顧客にアプローチするための重要なステップです。

「ランチェスター戦略を概念から実践へ」

ランチェスター戦略の代表的な事例の一つに、対馬における陶山訥庵先生のイノシシ退治があります。

1700年、対馬の人口2万人に対し、イノシシが8万頭もいたといわれています。農民たちは毎年、必死で育てた作物をイノシシに荒らされて困っていました。退治しようとしても、イノシシの方が数で勝っており、さらに退治する数より毎年増える数の方が多く、問題解決は困難でした。

そこで立ち上がったのが、奉行である陶山訥庵です。

イノシシによる農業被害に悩む農民を助けるため、陶山訥庵によって「猪鹿追詰覚書」が実施されました。彼はまず、島のエリアを9分割し、大きな柵を立ててエリア間でイノシシが移動できないようにしました。

そして、全島民の勢力を1つのエリアに集中させ、1年かけてそのエリアのイノシシを全滅させました。その際、残りの8/9のエリアには一切手をつけませんでした。

翌年には次のエリア、その翌年にはまた別のエリアのイノシシを全滅させ、9年間で問題を解決しました。

これは、戦力量で劣る中小企業(人間)が、戦力量で勝る大企業(イノシシ)に対抗するための、弱者の戦略の例です。

例えば、戦力量に劣る中小企業であっても、市場を細分化し、戦力量を集中させることで、局所的に大企業の戦力量を上回り、市場を拡大するドミナント戦略としています。

しかし、この有名なランチェスター戦略の弱者の戦略は、実際に用いるには少し概念的過ぎるかもしれません。

DXS Stratify®は、独自のアルゴリズムを用いて市場を12のマトリックスに細分化し、優先順位と必要な戦力量を定量化および可視化することが可能です。

製薬企業では外資系を中心に早期退職やポジションクローズを実施し、9年連続でMR数が減少しており、23年3月末のMR数は前年同期比2166人の減少となりました。

デジタルマーケティングがもたらすMQL(Marketing Qualified Lead、マーケティングにより資質が確認された見込み顧客)からSQL(Sales Qualified Lead、販売に繋がる資質が確認された見込み顧客)への受け渡しは、人的資源に依存するプロセスです。MRの数が減少する中で、デジタルツールを活用した顧客開拓が進むと、購買に結びつけるための人的リソースが不足する可能性があります。

MRの数が1/3に減少した場合のリソースアロケーションを演習問題としてご用意しました。

選択肢は3つです。①欠員の担当顧客を残った人員が全てカバーする、②欠員の担当顧客は当面担当者不在とする、③市場規模の大きな顧客を再ターゲティングし優先顧客とする

①ではリソースが分散してしまいますし、②では担当者不在の間に顧客が離れてしまうでしょう。③は一見合理的なようですが、様々な市場環境の顧客が混雑することになるため、短期間でのリカバリーは困難なため、①~③には正解がありません。

先ずは現在の売上実績を崩さないために必要な顧客と、その上で売上実績を向上させるべき顧客を特定することです。そのためには、顧客を「維持」、「強化」、「撤退」と、状況とリソース量により判断する「検討」に分類する必要があります。これは担当交代による引継ぎでも同様です。

マトリクス分析を用いれば、市場規模と競争地位および競争優位性の2軸から、顧客を「維持」、「強化」、「撤退」、「検討」に分類することが出来ます。さらにカバー率とそれに対する売上寄与率を定量および可視化することで意思決定を支援します。

Demoでは36.59%の顧客をカバーすれば、現在の売上の80.03%を維持することが出来ることが分かります。極端に言えば60%くらいの人員を削減しても、8割の売上を維持することが出来るというわけです。

さらに「戦力量分析」と「活動量分析」の機能により、より詳細なリソース配分を算出することが可能です。