経済(Economy)、政治(Politics)、社会(Society)、技術(Technology)。この4象限で外部環境を俯瞰する「PEST分析」は、マクロトレンドを可視化する定番フレームワークとして広く知られています。製品開発や事業進出を考える上で、“自社ではコントロールできない環境要因”を把握するのに役立つものでした。
しかし、現代はPESTの想定を大きく超えた“環境の変化スピード”と“不確実性”の時代です。たとえばAIや生成技術の進化は、T(技術)領域の変化というより、むしろS(社会)やE(経済)の構造すら書き換える破壊力を持ちます。また、社会不安や分断、パンデミック、気候変動などは、それぞれが複数のPEST領域にまたがって連動し、静的な整理枠では到底読み切れません。
本来、PESTは「何が外部から影響を与えるか」を整理するためのフレームですが、今や「何が外部か」の定義すら揺らいでいるのです。SNSや口コミ、個人の発信が企業の評判を左右する時代に、“外部”と“内部”を明確に切り分ける意味はどこまであるのでしょうか。
そこで必要なのが、“PESTの再構築”です。
たとえば、
• 静的な分類ではなく、トレンドの勢力図・影響度・変化速度の三軸で評価する
• 領域の再定義として「P→Power」「E→Economy」「S→Sentiment」「T→Technology」などに読み替え、感情・認知・影響力を含める
• 最終的には、自社のKFS(Key Factor for Success)にどう接続するかという実務視点の接着が求められる
つまり、PESTとは「答えを出すための型」ではなく、「問いを広げるための地図」として使うべきなのです。
時代がフレームの寿命を超えたとき、私たちにできることはただ一つ。再定義し、再接続し、再起動(REBOOT)することです。

