「市場成長率」と「自社の相対シェア」で製品や事業を分類し、資源配分の優先順位を決める。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、1970年代にボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱した、経営戦略上の金字塔ともいえるフレームワークです。


当時は、成長市場に資源を集中投下すれば“スター事業”が育ち、いずれ“金のなる木”となって企業全体を支える、そんなシンプルなロジックが成立していました。しかし現代において、その前提が次々と崩れています。


たとえば、


• 市場成長率という指標自体が曖昧になり、成長市場=成功とは言い切れない
• 相対シェアの優位性は、デジタル化によってネットワーク効果やエコシステムの支配に変わっている
• そもそも「花形商品」や「金のなる木」という構図が成立するまでに市場の入れ替わりが早すぎる


さらに近年はサブスクリプション、D2C、リカーリングモデルといった新しいビジネスモデルが主流となり、「単体の事業でどれだけ利益を出すか」よりも、「LTV(顧客生涯価値)」「CAC(顧客獲得コスト)」といった顧客指標が資源配分の軸になりつつあります。


では、現代においてPPMはもう不要なのか?


答えはNOです。ただし“再定義”が必要です。
たとえば以下のような形で再構築することで、PPMは今なお有効な戦略思考ツールとなり得ます。


• X軸:市場成長率 → 収益性 or 顧客LTV
• Y軸:シェア → 競争優位性 or ブランドポジション
• 象限名も「スター」「問題児」ではなく、「集中」「育成」「維持」「撤退」と実務に即した表現に変える


PPMは、本来「意思決定の補助ツール」です。
フレームが古くなったのではなく、“意思決定の基準”が変化したのです。


だからこそ、我々に必要なのは「使える形でアップデートする力」、
クラシックフレームワークは、リブートすれば再び武器になるのです。