近年、製薬業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)が盛んに叫ばれています。経営陣はAI創薬、デジタルプラント、MR活動のデジタル化などをアピールし、「DX銘柄」選定にも力を入れています。

しかし現場では、「何のためのDXか」という疑問が根強く、医師からも「情報が多すぎて逆にアクセスしない」という声が上がっています。デジタル化が必ずしも医療現場のニーズに沿っていない現状が浮かび上がります。

さらに、MRのデジタル化を推進する一方で、「MRは必要」という現場の声も根強く、デジタルと人的支援のバランスが問われています。

成果もあります。武田薬品工業は製造DXで作業時間を大幅に短縮し、AI創薬で研究開発期間の短縮を実現しました。しかしこれらは業務効率化が中心であり、患者アウトカムへの直接的な影響はまだ限定的です。

DX推進における課題は、費用対効果、部門間連携、人材・リテラシー不足など多岐にわたります。特に現場ニーズとの乖離や、海外拠点との連携は多くの企業にとって大きな壁となっています。

真のDXを実現するには、DXの目的を明確に伝え、現場の声を戦略に反映し、効率化と価値創出の両立を図ることが重要です。加えて、DX人材の育成と、デジタルと人の力を融合する取り組みも不可欠です

。製薬業界のDXは、単なる業務効率化ではなく、患者価値の向上を目指すものでなければなりません。経営と現場が一体となり、地に足の着いたDXを進めていくことが求められます。

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