マーケティングの教科書に必ず登場する「STP」。
Segmentation(市場細分化)→ Targeting(狙う市場の選定)→ Positioning(差別化戦略の構築)という、マーケティング活動の設計図ともいえるフレームワークです。
しかし、その“基本”が、実務においては空回りするケースが目立ちます。
たとえば、STPのS(セグメンテーション)で「性別」「年齢」「職業」などのデモグラフィック属性を切ったものの、実際の購買行動と乖離していた。T(ターゲティング)でボリュームゾーンを狙って疲弊し、P(ポジショニング)で「安さ」や「安心感」といった抽象的な差別化に落ち着いた、、こんな“見覚えのある失敗”は、現場に山ほどあります。
なぜSTPはうまく機能しなくなったのか?
理由は明快です。顧客の可視化手段が進化したのに、STPの使い方が古いままだからです。
現代は、SNS、サブスク、1on1マーケティング、D2Cといった“個”を起点とする消費活動が主流です。属性だけで区切るのではなく、「文脈」「価値観」「瞬間の課題」で切り取らなければ、ターゲットは見えません。
つまり、STPは今、“定義の仕方”を再構築する時期に来ているのです。
たとえばこうです。
• Segmentation:属性ではなく、ニーズ文脈/カスタマージャーニー起点での分類
• Targeting:LTV(顧客生涯価値)や共有可能価値を重視した“拡張性ある狙い”
• Positioning:スペック比較ではなく、“選ばれる理由”を体験として再構成
STPは「順番にやればうまくいく」手順書ではありません。
それは“顧客との接点”を論理的に捉えるための設計思想です。
フレームワークを生かすも殺すも、使い手次第。
時代に合わせて再定義すれば、STPは今なお強力な武器となりえます。

