「とりあえず手元のデータを全部AIに放り込めば、何かすごい気づきが得られるんじゃないか?」そんな期待を抱いたことはありませんか?実はこれ、今のビジネス現場でよく見かける“データ神話”です。そしてこの神話、かなり危うい幻想でもあります。

たしかに、AIやビッグデータという言葉は魅力的に聞こえます。大量のデータを使えば、きっと人間には見えないパターンや関係性を発見してくれる……そんな夢が広がります。でも現実には、分析対象とアウトプットが明確でないまま大量のデータを処理しても、ほとんど役に立たない結果しか出ないことの方が多いのです。

なぜでしょうか?
第一に、AIは“魔法の箱”ではありません。何の目的も持たずに投げ込まれたデータからは、当然ながら“何をすべきか”という答えは出てきません。むしろ余計な変数やノイズが多いことで、誤った解釈や方向性につながるリスクすらあります。

第二に、データ分析とは「問い」から始まるものです。仮説があるからこそ、データはその検証の材料として価値を持ちます。問いが曖昧であれば、出てくる答えもまた曖昧。意味のある発見にはなりません。

第三に、スモールデータの方がむしろ効果的なケースも多く存在します。特にBtoBや医療業界のようにターゲットが明確な領域では、ビッグデータで広く浅く見るよりも、スモールデータで深く鋭く切り込んだ方が、再現性の高い分析結果が得られるのです。

つまり本当に重要なのは、AIでもデータ量でもなく、「どんな問いを持って、どんな仮説を検証したいのか」という視点。そしてその目的に合った最適なデータと手法を選ぶセンスです。

ビッグデータとAIを“お守り”のように使うのではなく、意思決定の武器として使いこなすことが、今後ますます求められます。主は人でありAIは従であるのです。