かつて“華やかな知的職業”として注目を集めたコンサルティング業界に、今、静かな淘汰の波が押し寄せています。東京商工リサーチのデータによると、2024年度のコンサル会社の倒産件数は過去最多の151件。特に、資本金1億円未満・従業員5人以下の小規模事業者に倒産が集中しています。

背景には、顧客ニーズの高度化とAIの台頭による業務代替、そして「経験」や「人脈」に依存した旧来型ビジネスモデルの限界があります。差別化できないサービスや、専門性に欠ける提案は選ばれなくなりつつあるのです。

一方で、アクセンチュア、デロイト、マッキンゼー、BCGといった大手4社の状況は全く異なります。売上・利益ともに堅調に推移し、AI・DX・サステナビリティといった成長分野へ積極的に投資しています。例えば、BCGは生成AIと気候変動に特化した専門部隊を構え、わずか1年で数千件のプロジェクトを実施しています。

アクセンチュアは年間30億ドル規模のM&Aを計画しながら、クラウドやGenAI分野でさらなる優位性を確保。デロイトはグローバルで組織再編を進め、税務・法務サービスでも高成長を実現しています。

では、なぜここまで差がついたのか?その理由は「構造」と「戦略」にあります。大手はすでに属人的なスキルや営業に依存するのではなく、テクノロジーと専門チームによる再現性ある仕組みでサービスを提供しています。また、グローバル展開により地域リスクを分散し、多様な人材を獲得・育成する仕組みも整っています。

コンサルティング業界でも「Winner Takes All(勝者総取り)」の構造が明確に現れつつあります。これは、他業界、たとえばIT、小売、製造、物流などとまったく同じ潮流です。小規模なコンサル会社は、主に中小企業をクライアントとしています。結果として、小規模コンサル側も案件数が減り、資金繰りが悪化し、連鎖的に倒産しています。

まさに「顧客の衰退=自分の衰退」という構造です。このままでは、業界の二極化はさらに進むでしょう。AIやDX、サステナビリティの専門性を備えた「勝ち組」と、差別化や人材確保ができない「淘汰組」に分かれ、生き残れるのはごく一部かもしれません。

中小企業を顧客とするコンサルタントは、この強者が圧倒的な競争優位に対して、弱者がいかに戦うべきか、を提供しなければなりません。

時代は「知の専門家」から「変革のパートナー」へ転換しています。これからのコンサルタントに求められるのは、課題を解決する力ではなく、未来を共創する力なのかもしれません。

製薬企業退職後に、資格を必要としないコンサルタントとして起業される方は少なくありません。そのような方の中には、これまでの経験や感覚に基づいた、武勇伝型コンサルタントも存在します。

知識はあっという間に陳腐化してしまいます。これまでの経験はVUCAの時代の前では意味を持たないどころか害悪になりかねません。常に勉強を心掛けアップデートをしていかなければ淘汰の波に飲み込まれてしまうでしょう。