コンサルティングの世界では、「顧客の課題=ネガティブなギャップを解決すること」が価値提供の基本だとよく言われます。でも、それは本当に正しいのでしょうか?
もちろん、困りごとを解決することは、コンサルティングにおいて重要な役割の一つです。しかし、市場が縮小し、あらゆる分野がゼロサム型の競争環境へとシフトしている今、「課題解決型」の支援だけでは、もはや十分とは言えません。
これからの時代に求められるのは、「すでにうまくいっていること=ポジティブな状態」をさらに伸ばし、強みを起点に新たな価値を生み出す“価値創造型”のアプローチです。
たとえば、既に持っている優位性をさらに尖らせたり、自社の得意領域を最大限に活かせる市場にフォーカスする、つまり、STP戦略(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を通じて“勝てる戦い方”を選ぶことが、ますます重要になってきています。
強調したいのは、「課題解決型アプローチ」一辺倒に陥ると、かえって競争優位性を失うリスクがあるという点です。なぜなら、似たような課題に対して、どの企業も似たような解決策を採用することで、差別化が機能せず、同質化に陥ってしまうからです。
その結果、「課題は解決しているのに、なぜか選ばれない」というジレンマに直面することになります。
このようなコモディティ化(=差別化が困難な状態)のリスクは、特に成熟市場において顕著です。これは、ポジショニング理論(M.ポーター)やブルーオーシャン戦略でも繰り返し指摘されていることです。
一方で、顧客の強みや競争優位を起点とする支援は、単なる問題解決にとどまらず、依存型ではなく自律的な成長を促す支援につながります。それはクライアントとの長期的な関係性を築くうえでも、今後ますます求められる姿勢です。
「助ける」ことをゴールにしてしまうと、支援行為の“実施”で止まってしまいます。
しかし、「勝たせる」「成果を出させる」ことを目的にすれば、そこには戦略思考が不可欠です。
これからのコンサルティングには、問題を解く力だけでなく、「顧客を、どう勝たせるか」を設計する力が求められます。過去の延長線では勝てない時代だからこそ、価値の本質を見極め、“支援の質”そのものをアップデートする必要があるのです。