一般的に外部環境を整理する際には「PEST分析(Politics, Economy, Society, Technology)」が広く用いられます。特に消費財や一般サービス業など、比較的自由競争が働く市場においては、PESTは有効なフレームワークとして機能してきました。
しかし、医薬品ビジネスにこのPESTをそのまま適用することには大きな限界があります。
その理由は2つあります:
1. 「制度に依存した市場構造」であること
医薬品市場は、自由な価格決定や流通が許されている消費財とは異なり、
薬価制度・診療報酬・承認制度といった国の制度に強く制約されている点が特徴です。
特に薬価改定や適応拡大の判断ひとつで市場が一変するため、制度的な要因(Politics)と規制(Regulation)を切り分けて分析する必要があります。
2. 「医療提供体制の変化」が売上やマーケティング活動に大きく影響すること
医薬品は患者が自ら選んで購入するのではなく、医師の診療行動や医療機関の体制に依存して処方されます。
そのため、消費者のライフスタイルや嗜好を中心としたSociety視点では不十分であり、医療機関の再編、病診連携、地域医療構造の変化などを独立して評価すべきです。
こうした背景を踏まえ、S.I Labは医薬品業界における戦略立案や環境分析においてより本質的なフレームワークが必要であると考え、新たに「PHRSTE分析(ファースト分析)」を提唱します。
■ PHRSTE分析とは

このPHRSTE分析により、医薬品業界に特有な外部環境の変化を過不足なく整理することが可能になります。
とくに戦略仮説の構築・上市判断・地域戦略立案・社内の合意形成において、従来の「PEST分析」よりも実務的かつ再現性の高いフレームワークとして機能します。
今後の製薬ビジネス戦略は、「マーケティング思考」だけでは不十分です。
構造の理解から始まる“戦略思考”の第一歩として、このPHRSTE分析を活用してください。