製薬業界の構造変化が、かつてない速さで進んでいます。
DX推進による営業の効率化、業界全体の成長鈍化、さらには早期退職優遇制度の導入、、、。こうした背景のもと、MR(医薬情報担当者)の総数は年々減少しています。

ある調査では、実に83.7%のMRが将来のキャリアに不安を抱えていると回答しています。現場で感じている「自分の市場価値はこのままでいいのか」「次の選択肢はあるのか」といった声は決して少なくありません。

では、これからのMRキャリアはどうあるべきなのでしょうか?
もしこれを“戦略的”に捉えるなら、まず考えるべきは「強みのレバレッジ」です。

多くのMRは、医療業界という専門性の高い環境で顧客対応や情報提供を行ってきました。その経験は決して無駄ではなく、むしろヘルスケア業界内での転職は最も即戦力性が高く、効率的な選択肢です。
理想を言えば、いまの会社の中でマーケティングや企画、渉外など、多様なポストを経験しながら社内でキャリアの幅を広げることが最も安定的で自然なキャリア形成といえるでしょう。

しかし現実は、それすらままなりません。
制度としては「社内公募」や「キャリア自律」が掲げられていても、早期退職制度による選択肢の縮小、人員構成の歪み、ポストの飽和によって、機会そのものが限られているのです。

さらに、転職市場に目を向ければ、そこもまた甘くありません。
ヘルスケア業界での転職は候補者が非常に多く、同じようにキャリアの出口を求める人で溢れる“レッドオーシャン”です。たとえ業界知識があっても、競争の中で埋もれてしまうケースも少なくありません。

このような状況だからこそ、考え方の“起点”を変える必要があります。
それは「MR起点」ではなく、「スキル起点」でキャリアを捉えるということです。

「自分はMRとして何ができるか」ではなく、
「自分の持っているスキルや経験は、他業界でどう活かせるか」
と視点を切り替えることが、長期的なキャリアの可能性を広げる第一歩になります。

キャリアは、会社や職種が決めるものではなく、自分自身で設計していくもの。
「MRとして何をしてきたか」ではなく、
「自分の中に、どんなスキル資産が蓄積されてきたか」
それを見つめ直すことが、これからの時代における最も重要なキャリア戦略となるでしょう。