以前、ある希少疾患向け新薬を開発する製薬企業のビジネスプラン作成のお手伝いをした際のお話です。新製品のロンチにあたって「売上目標は100億円」と宣言されていました。しかし、なぜ100億円なのかを尋ねると、「社長がそう言うから」という根拠が曖昧な理由でした。そこで改めて市場規模を調べてみると、対象となる市場は約200億円と試算されました。つまり、100億円の売上を達成するためには市場の50%を獲得する必要があるということです。
もし100%のシェア値であれば全体市場を占有する必要があります。では、このシェア目標がたとえば25%や10%であれば、どう変わるでしょうか。ここで重要になるのがSTP戦略です。STPとは「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の略称で、市場をどのように区切り、どこを狙い、どんなポジションで勝負するかを決定するフレームワークです。
たとえば半数以上のシェア獲得を目標とするならば、市場全体に対して積極的にアプローチし、大きなマーケティング予算や営業体制が必要になります。しかし10%を狙うのであれば、より特定のセグメントに集中し、限られた人員・予算でも効率的に成果を上げられる戦略を組むことが可能です。
売上目標が意味する市場シェア値は、STPにもつながるという視点は、戦略策定にとって欠かせません。目指すシェア値に応じて、必要となるリソースの量や配分、マーケティング手法、さらには提携やパートナーシップの選択肢も変わってきます。
単に大きな数字を掲げるだけではなく、「その数字が市場全体の中でどの程度の位置づけになるのか」「それを達成するためにどんなSTP戦略が必要なのか」を明確にすることを理解してください。