製薬企業をはじめ、多くの企業が国内市場の縮小に伴いグローバル化を進めています。しかし、市場縮小期に適した戦略を持たずに海外展開を進めると、結局は国内でも海外でも競争に敗れるリスクがあります。これは、多くの企業が未だに高度経済成長期に成功したビジネスモデルを基盤にしていることが原因です。
成長志向型モデルの限界
日本企業はこれまで、以下のようなモデルで成長してきました:
- 市場拡大による生産量増加
- 規模の経済によるコスト削減
- 安定した雇用環境のもとでの人材投資
しかし、このアプローチは拡大市場では機能しても、縮小市場や成熟した海外市場では適用が難しくなっています。市場縮小期に適した戦略を持たない企業は、成長の鈍化とともに競争力を失いかねません。
従来のグローバル化戦略が通用しない理由
海外市場であっても、従来の成長モデルでは以下のような課題に直面しやすくなります:
- 海外市場も常に成長しているわけではない
かつては無限の成長が期待された新興市場も、経済の成熟や人口動態の変化によって成長が鈍化しています。戦略のない無計画な海外展開は、結果的に企業のリスクを高めることになります。 - 価格競争に巻き込まれる
特に新興国市場では、低コストの現地企業との競争が激しく、日本企業が単に価格競争で勝つのは困難です。価格ではなく、価値を提供する戦略が必要になります。 - ブランド力とマーケティングの弱さ
日本企業は技術力を強みとしていますが、海外市場ではブランド戦略やマーケティングの不足が原因で、製品の良さが伝わりにくい傾向があります。 - 市場縮小時の適応力不足
多くの企業は、市場が縮小すると撤退やリストラを選択肢としがちです。しかし、これでは競争力を維持できず、海外市場でも持続的な成長が難しくなります。
縮小市場で勝つための「収益性最大化」戦略
市場の拡大を追い求めるのではなく、勝てる市場を選び、収益性を最大化することが重要です。
- 勝てる市場を選定する
ただ成長市場を狙うのではなく、自社の強みを発揮できる市場を選ぶことが鍵です。- 競争が激しい市場ではなく、特定のニッチ市場を狙う
- 価格競争ではなく、技術力やブランド力で勝負する
- 既存顧客との関係を深め、LTV(ライフタイムバリュー)を高める
- 規模の経済よりも収益性を優先する
成長のための成長ではなく、以下の点を重視するべきです。- 高利益率のビジネスモデル(サブスクリプションやサービス提供型など)
- コスト競争から脱却し、付加価値を高める
- 単なる製品販売ではなく、ソリューション提供型のビジネスに移行する
- 戦力を集中し、競争優位性を発揮する
分散的な投資ではなく、競争力のある分野に資源を集中すべきです。- デジタル技術やデータ分析を活用してターゲティングを強化
- 自社の強みを活かせる市場に重点的に投資
- 収益性の低い市場からは計画的に撤退する
- ゼロサム市場での競争に備える
成長が鈍化すると市場はゼロサムゲーム化し、競争がより熾烈になります。- 競争相手のシェアを奪う戦略を明確化する
- 価格競争ではなく、提供価値を高める
- 景気変動に強い事業ポートフォリオを構築する
結論
グローバル展開は、単に海外市場に進出すれば成功するものではありません。市場縮小期の戦略を持たずに海外進出すると、結局は国内と同じように競争力を失うことになります。
「撤退やリストラを前提とするのではなく、勝てる市場を選び、収益性を最大化する戦略」が不可欠です。成長だけを追い求めるのではなく、市場が縮小しても持続的に勝ち続けるための戦略を持つことが、今後の企業の成長にとって重要となるでしょう。