同じエリアに同業競合他社が参入した際に、脅威ではなくお互いのシナジーによって共に成長が可能かのように語られることがあります。

同じ新しい作用機序を持つ製品がまだ市場内に自社と競合一社しかない場合、同じクラス内で争うべきか、あるいは同じ患者群が対象となるセグメント内で争うべきか迷うことがあるかと思います。

判断のポイントは、自社、競合のどちらもが十分な利益を得るだけの市場規模があるか、あるいは共に売上を伸ばせるだけの成長期にあるかです。

もしいずれも満たさなければ競合を市場から駆逐しなければなりません。

技術の進歩により、MRの訪問計画までAIがサジェスチョンするようになりました。

顧客の専門性、研究内容、医療機関の種別、情報ニーズ、情報収集チャネル、自社との関係性、納入実績など、様々な構造化データをAIに学習させ、最適な訪問計画をMRに提示します。

既に多くの製薬企業で導入されているCRMを有効に運用するためには活動履歴を速やかに漏れなくMRに入力させる必要があります。

AIの指示通りに活動し、活動結果を入力し、そして次の活動を指示されるわけです。

DXはMRのサポートツールか、あるいはマニピュレーターか?

あなたはどのように思いますか?

戦略プランからマーケティングプラン、そして実行プランを作成するプロセスはまさに千里の道を行くかのようです。

何度も立ち止まり、引き返し、縦に横に歩き回り、塾考に塾考を重ねても作成したプランに確信を得ることはありません。

もしそんなプランニングに疲れ果てているのであればマトリクス分析を試してみてください。

私が提唱するマトリクス分析は定量データと数式を基にした理論とプロセスです。

同じデータを使えば誰が分析を行っても同じ結果が表示されます。

知識や経験、スキルの有る無しは関係ありません。

国内の社会保障制度を背景に製薬業界は様々な保護を受けています。

一般財であれば製品の価格は需要と供給バランスで変動し、購入には個人の経済水準などが影響しますが、医薬品では国民皆保険により経済的な理由に依存せず医薬品を受け取ることが出来ます。

また医薬品の価格は薬価制度により保護されており、価格競争による薄利多売によって利益確保が困難になることもありません。

特許による保護から一定の期間は競合の出現による競争の激化を避けることが出来ます。

つまり製薬企業は市場の確保、価格の維持、競合参入の抑止など多くの面で保護されています。

一方で社会保障費の減額などの影響を直接的に受けるデメリットがあります。

度重なる薬価再算定による引き下げや、特許切れに伴う後発医薬品への切り替え、フォーミュラリなど、多くのパイプラインと人員を抱える大手製薬企業ほどそのダメージは大きくなります。

そのような背景の中、台頭してきたのがバイオベンチャー・スタートアップ企業です。

希少疾患というニッチ市場であっても競合不在であれば100%のシェアを得ることが出来ます。

また少数の人員で構成されるため販売管理費を抑えることで利益を確保することが出来ます。

生産性ランキング上位にバイオベンチャー・スタートアップ企業が名を連ねているのはこのせいです。

しかし少数のパイプラインで成立しているため、競合の参入や製品ライフサイクルが衰退期に入ると継続的な成長が難しくなります。

とはいえパイプラインを増やし人員を拡大しては大手製薬企業の轍を踏むことになりかねません。

「アンゾフの成長マトリクス」に基づけば、既存製品の適応症の拡大によるドミナント戦略と製品ライフサイクルの既存製品の成熟期と次期主力製品の成長期の曲線を上手くつなぎ合わせることが理想的な経営戦略ではないでしょうか。

製薬企業の製品である医薬品は「生命関連性」 という特徴をもつことから、他の産業にもまして高い企業倫理が求められる業界です。

経済活動として企業が持続的に存続するには利益を追及することは当然のことです。

しかしこれら当然の理論も経営者と一般社員では認識に相違があるかもしれません。

「目標」「指針」「手段」が美しいまでの整合性でつながることが理想です。

「戦略」は目的を達成するためには外部からの示唆や影響によって決める向かうべき方向性となる「指針」であり、「マーケティングプラン」は目的を達成するための手段であるならば、その前提となる「目的」が存在するはずです。

「目的」「戦略」「マーケティングプラン」の三つは本質において一つのものであり、三つの側面による三位一体です。

目的は客観的で誰もが同じ理解/認識を共有できるように定性的ではなく定量的でなくてはなりません。

すなわち具体的で測定が可能、現実的で期限が明確である必要があります。

そして達成可能であることは言うまでもありません。

「目的」「戦略」「マーケティングプラン」では「マーケティングプラン」の実行に多くの時間と経営資源が割かれることになるでしょう。

そのため目的を達成する過程にこそ価値を見出し、目的と手段が逆転することがないように心してください。

ビジネスフレームワークとマトリクス分析の比較

「戦略」とは、主戦場、正敵、陣形、すなわち「どこで」「だれと」「どのように」戦うかを決めることです。

そして至上命題は「必ず勝つ、絶対に負けない」ための戦略を選択することにあります。

マトリクスを用いた戦略プランニングの手法は定量データを用いた数学的アプローチによって行う全く新しい分析手段です。

分析のための専門性は必要なく、客観的で再現性に優れた独自のものです。

入力データの範囲に応じて、「全社戦略」、「エリア戦略」、「担当者ごとの戦略」の全てが同じロジック認識共有されるため同じ物差し、同じ言語での検討が可能です。

分析は受発注データを使用するため、受発注データが更新される頻度に応じて実施すれば目まぐるしく変化する競争環境に対して柔軟かつ俊敏に戦略を修正することが出来ます。

分析の基本構造は3C分析に基づき、市場/顧客と競合、そして自社を相対的に分析します。

そのため分析と戦略立案だけではなく、3Cを基本とした実践前後のトラッキング、検証にも利用が可能です。

マトリクス分析はその新規性と進歩性により、経済産業省 特許庁より特許番号:特許第7101426号を取得しています。

「マーケティング戦略」という用語があります。

この用語は私に違和感を感じさせます。

「マーケティング」とは売るための方法・仕組みです。

つまり手段です。

目的である「戦略」と一つの用語にしてしまう事で境界が曖昧になってしまいます。

『戦略の誤りは戦術では補えない』と言われるように、戦略がなければその戦術=

マーケティングプランがいかに優れていたとしても戦いには勝てません。

戦略のない戦術はただのファンタジーです。

マーケティングの機能不全

マーケティングの上で競合に対して優位性を得るために不可欠な要素が「差別化」です。

差別化が機能するためには「他と比較して差異がありかつ優越性を有している」必要があります。

製薬企業がこぞって情報提供のチャネルをデジタル化したことによって、顧客自身が容易に製品に関する情報を入手出来るようになり、競合製品と比較しながら自ら選択する時代になりました。

一方で洪水のように情報が溢れていることで、かえって選択を困難にしている側面もあります。

そのため新しい製品に対するニーズが薄れ「選べないのでどれも選ばない」という状況を招く可能性があります。

特にフォーミュラリが進む地域では新薬よりもむしろ安価な既存製品を中心に使用する薬剤が選択される傾向にあります。

医薬品ビジネスでは様々な法規制や保護により競合との同一化を余儀なくされるため、差別化が機能せず極めて限局的なマーケティングとなる傾向にあります。

すなわちマーケティングによって競合への優位性を得ることが非常に難しいビジネス環境にあると言えます。

そのため、マーケティングによる競合への優位性を得ることが困難であり、売るための仕組みが機能しにくいビジネスです。

「戦略」の優劣が勝敗を決定する重要なカギです。