市場に新規参入した際に、既に競争強者が存在するケースは珍しくありません。
不眠症治療薬のオレキシン受容体拮抗薬が登場した2014年頃はベンゾ系不眠症治療が当たり前のように使用されていました。
新規作用機序であるオレキシン受容体拮抗薬はいきなり脱ベンゾをうたわず、ベンゾ系の無効例や併用薬としてのポジショニング戦略をとりました。
既にシェアを獲得している市場内の競争強者の併用薬のポジショニングが成功すればシェアの拡大は容易となります。
多分、発売当初から脱ベンゾ戦略プランであれば、市場内弱者であるオレキシン受容体拮抗薬が短期間でシェアを拡大することは難しかったと思います。
その後、2018年頃からベンゾ系不眠症治療の長期継続使用が減算の対象となり、この追い風を受け一気にシェアを拡大、脱ベンゾ戦略にスイッチし成功しました。
しかしその後、効果で上回る後発品の参入によってシェアを奪われることになります。
脱ベンゾ戦略と合わせて新しいポジショニングを築くことが出来なかったことにより、効果という分かりやすい差別化で後発競合からの攻略を許すことになったのかもしれません。