市場規模の大きな市場/顧客を優先ターゲットとすることは、正しい戦略の一つように見えますが、それは大きな間違いです。実際に、市場規模の大きさだけに注目して戦略を練ることは、特にスタートアップやリソースが限られている企業にとってはリスクが高い選択となり得ます。

戦略とは外部環境要因と自社の強み領域による競争優位性を見出すことです。競争優位性とはすなわち「必ず勝つ、絶対に負けない」主戦場を定め、対象(市場/顧客や競合他社)を絞り、投入資源を決めることであり、STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)はこのプロセスを体系的に行うためのフレームワークの一つと言えます。

セグメンテーションでは市場を細分化し、ターゲティングでその中から最も魅力的なセグメントを選択し、最後にポジショニングによってそのセグメント内での競争優位を確立します。この過程で、単に市場規模が大きいからという理由で市場を選択するのではなく、自社の強みを最大限に活かせる市場を選択することが重要です。

そのために、市場規模という1軸だけでは、外部環境要因を反映していても、競争優位性の軸が欠落しており、「勝つか負けるか分からない」ものとなってしまいます。

「勝つか負けるか分からない」ものを戦略とは呼びません。

特に競争が激しい市場においては、大きな市場規模を持つ市場への参入が必ずしも成功を意味するわけではありません。むしろ、ニッチながらも自社が圧倒的な競争優位を持てる市場を見つけ出し、資源を集中することで、長期的な成功を確保することができます。

戦略は「勝てる戦い」を選び、そこにリソースを集中することにあります。そのためには、内部の強みと外部環境の双方を深く理解し、それらを融合させる洞察が不可欠です。