AmazonとNetflix。どちらも世界的な企業であり、映像ストリーミングサービスではよく比較されます。しかし、AmazonにとってNetflixは本当に”競争相手”なのでしょうか? 実は、Amazonが本当に意識しなければならないのは、映像の世界ではなく、EC市場での戦いです。その本当のライバルはNetflixではなく、日本市場では楽天なのです。

Amazonにとって映像ストリーミングは主戦場ではない

NetflixとAmazon Prime Videoは、どちらも映像ストリーミングサービスを提供しています。しかし、Amazonが映像事業を強化する目的は、Netflixのように映像ビジネスそのもので収益を上げることではありません。AmazonにとってPrime Videoは、あくまでECビジネスを支えるための”特典”なのです。

Amazonの本業はEC(電子商取引)であり、さらにクラウド事業(AWS)や広告事業なども展開しています。そのため、Netflixのように映像配信の成功が企業の存続に直結するわけではありません。むしろ、Prime Videoは「Amazon Prime」の付加価値を高め、プライム会員の維持率を向上させることが主な役割なのです。

たとえば、日本ではプライム会員の継続率が非常に高いことが知られています。その一因は、送料無料や翌日配送といったECのメリットだけでなく、Prime VideoやPrime Musicといったエンターテインメント特典があるからです。つまり、AmazonがPrime Videoを運営する最大の理由は、Netflixと競争するためではなく、ECの競争力を高めるためなのです。

以下に、Amazon、Netflix、楽天のSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を比較した表を作成しました。

Amazon・Netflix・楽天のSTP比較表

この比較から、各社の戦略的な違いが明確になります。

  1. Amazonは「ECとクラウドの巨人」であり、映像ストリーミングはプライム会員の付加価値として運営。
  2. Netflixは「映像に特化」し、オリジナルコンテンツと視聴データ分析によるパーソナライズが強み。
  3. 楽天は「ポイント経済圏での囲い込み」を武器に、ECだけでなく金融・通信などのサービスを統合。

Amazonにとって、Netflixは直接の競争相手ではなく、むしろ楽天のようなEC市場の競争相手にどう対応するかが重要な戦略課題となります。