医師へのエンゲージメントに占める対面の割合は79%で、メール(17%)、電話(2%)、ビデオ(2%)だそうです。このデータを数理モデルを用いて分析し、対面エンゲージメントの優位性や今後の変化について検証してみましょう。
1. 基本的な数理モデルの枠組み
医師へのエンゲージメントに関するデータをモデル化するために、確率モデルや動的システムモデルを適用します。
(1) マルコフ連鎖モデル
医師とMRのエンゲージメントを状態遷移としてモデル化すると、以下のような遷移行列 PPP を設定できます。

ここで、
- F は対面(Face-to-Face)
- E はメール(Email)
- T は電話(Telephone)
- V はビデオ(Video)
各要素 Px→Y は、エンゲージメントの形態 X から Y に変化する確率です。
例えば、現状の79%が対面エンゲージメントであることから、Pf→f は高い値を持つと予想されます。一方、デジタルチャネルの増加によって、PF→E、PF→T、PF→Vがどの程度の影響を及ぼすかを分析することが重要です。
(2) ロジスティック成長モデル
医師のエンゲージメントがデジタルシフトする速度をモデル化するために、ロジスティック方程式を用います。

ここで、
- E(t)は時間 t におけるデジタルエンゲージメント(メール・電話・ビデオ)の割合
- r は成長率(デジタルへの移行速度)
- K はキャパシティ(デジタルエンゲージメントが飽和する最大値)
現在のデータではデジタルエンゲージメント(17% + 2% + 2% = 21%)ですが、将来的な変化率 r を推定することで、デジタルの浸透度合いを予測できます。
2. モデルを用いた考察
(1) デジタルエンゲージメントの浸透速度
- 現在の79%の対面比率が高いことから、対面エンゲージメントには高い維持力がある(PF→F が高い)。
- しかし、COVID-19の影響以降、デジタルエンゲージメントは増加傾向にあるため、PF→E、PF→T、PF→V は長期的に上昇すると考えられる。
ロジスティックモデルに基づくと、現在の成長率 rrr を推定すれば、デジタルエンゲージメントの浸透速度が明らかになります。
(2) 医師側のインセンティブ
- 医師の立場で考えると、対面は情報量が多いが時間を取られるため、デジタルシフトが進む可能性がある。
- 特に、診療の合間に手軽に対応できるメールや電話が、長期的にどの程度シェアを伸ばせるかが鍵となる。
この点を考慮すると、ロジスティックモデルのキャパシティ K をどこに設定するかが重要になります。たとえば、K = 50%(デジタルエンゲージメントの上限は50%)と仮定すれば、現在の21%がどの程度の速度で上昇するか予測できます。
3. まとめと示唆
- 対面エンゲージメントの高い維持力
マルコフモデルから見ても、現在の79%の対面比率は高い定着率を示唆。
ただし、デジタルの成長率を考慮すると、数年後にはデジタル比率が上昇する可能性がある。
- デジタルシフトの進行速度
ロジスティック成長モデルを適用すると、r の値次第でデジタルエンゲージメントが今後どのように増加するかを予測可能。
COVID-19の影響で r が一時的に増加したが、現在は再び落ち着いている可能性も。
- エンゲージメント最適化の戦略
企業側は、短期的には対面を中心とした施策が有効だが、長期的にはデジタルエンゲージメントの最適化が必須。
例えば、「メールでの定期フォロー + 必要時に対面」を組み合わせたハイブリッド戦略が合理的。
結論
対面エンゲージメントの割合が79%と高いのは、情報量や信頼構築の観点から理にかなっている。しかし、デジタルエンゲージメント(特にメール)の浸透は今後も進む可能性があり、数理モデルを用いた推定により適切なデジタル比率を見極めることが戦略立案の鍵となりそうです。