コロンブスは卵を立てるという難題に対し、「尻を潰す」というシンプルな発想で解決しました。また、有名な「象を冷蔵庫に入れる方法」の話では、①冷蔵庫の扉を開ける、②象を入れる、③扉を閉める、というシンプルな3ステップで完了します。これらのエピソードが示すのは、「複雑な問題も、シンプルに捉えれば突破口が見える」 ということです。

この考え方は、現代のマーケティングや行動変容モデルにも当てはまります。従来のAIDMA(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)は、消費者が購買に至るまでの心理プロセスを段階的に整理したものですが、情報過多の現代では、このような段階を経ずに意思決定するケースが増えています。

行動変容モデルの変化:シンプルな意思決定へ

現代の消費者は、SNSや口コミ、検索エンジンを活用しながら、より直感的に購買を決定しています。そのため、従来のAIDMAのようなプロセスを飛び越え、よりシンプルな行動変容モデルが提唱されています。

たとえば、SIPSモデル(Sympathize, Identify, Participate, Share) では、消費者は企業の広告ではなく、「共感」や「参加」を通じて意思決定をします。つまり、知識を積み重ねるのではなく、「この商品が好き」「みんなが使っているから買う」といった直感的な動機で購買が行われるのです。

また、AISASモデル(Attention, Interest, Search, Action, Share)では、検索(Search)というステップが入り、消費者自身が情報を取りに行く時代になったことを反映しています。

シンプルな行動変容が求められる理由

なぜ、行動変容モデルはシンプルになったのでしょうか? その理由は、大きく以下の3つにまとめられます。

  1. 情報過多による意思決定の短縮化
    スマートフォンやSNSの普及により、情報量が爆発的に増加しました。そのため、消費者はすべての情報を精査せず、「直感的な判断」や「口コミの影響」で決定するようになりました。
  1. ワンクリック文化の浸透
    Amazonのワンクリック購入や、サブスクリプションモデルの拡大により、「考える前に購入する」流れが生まれています。消費者は、できるだけ簡単な手順で商品やサービスを利用できることを求めています。
  1. 緊急性・必然性の増加
    「今すぐ使える」「すぐに解決できる」といった要素が、購買決定を促します。限定販売やタイムセールなどが成功するのは、この心理をうまく活用しているからです。

まとめ:シンプルな発想が行動変容を生む

コロンブスが卵を立てたように、また象を冷蔵庫に入れる方法がシンプルであるように、行動変容も「余計なステップを省き、直感的に決める」方向に進化しています。企業側も、消費者の意思決定プロセスを複雑にするのではなく、「認知 → 共感 → 購買」 のようなシンプルな流れを意識することで、より効果的なマーケティングが可能になります。