存在して当然は意外と当然ではない話

世の中、あって当然と思うことが意外とそうでなかったりします。

医薬品では今でこそED治療薬やAGA治療薬は保険適用外ながらも病気の治療薬として認知されています。

そのうち加齢自体が疾患として考えられるようになるかもしれません。

イノベーションは意外と身近にあるのかもしれませんよ。

認知バイアスから解き放たれるにはチャネル②のSlow thinkingが必要です。

説得する技術

あなたは今、新しいクルマが欲しいとします。

新しいクルマを買うためには奥さんという大きな壁を攻略せずには実現不可能です。

欲しい気持ちを熱く語れば語るほど、「一時的なものだから、そんなに熱くならずに冷静になった方がいい」とむしろ相手の脇を閉めさせることになります。

ノーベル経済学賞を獲得したダニエルカーネマンの「プロスペクト理論」では、人は自分が持っているものを失うことに対して、仮に得られるものが同等であったとしても、失う方に過敏に反応すると言われています(プロスペクト理論/損失効果)。

今の車によって得られる、快適さ、コストの明確さ、愛着などを、”失う”ということに対して、条件反射的に恒常性維持の姿勢を取るのです。

すなわち、いかに熱く語ろうとも、ほとんどの場合にはその熱意が伝わらずむしろ反対される確率を高くしかねません。

相手はFast thinkingのチェネル①で本能的に拒否の回答で攻撃という最大の防御で応戦してきます。

Slow thinkingを発動してチャネル②で論理的に考えさせればどうでしょうか?

残念ながら車は負債です、お金を生むことはありません。

「必要ない」これが正解です。

あとは「しょうがない(仕方ない)わね」を引き出す戦略くらいしか残っていないように思えます。
そう、相手の口から言わせる事が正解です。

説得を続ければ続けるほど、考えを押し付ければ押し付けるほど、相手の反発力は高まっていきます。

こちらが押せば押すほど相手は逃げるのです。

ならば引くことで相手の口から言葉を引き出す、質問をして相手に答えさせれば良いのです。

「〇〇ですよね?」「○○だと思いませんか?」などYesを引き出すクローズド質問を用いてFast thinkingで反応させる手法です。

今日のブログ記事はとても熱が入っています、なぜなら私がクルマを欲しいからです。

色々と解説してきましたが、私自身うまくいく自信はありません。

どうせ買うのなら、どうせ怒られるのなら事後報告で「大丈夫、心配ないから」とほとぼりが冷めるまで距離をとりつつ、チャネル①の反応を最小限に抑え、チャネル②は絶対に発動しないよう祈ることになると思います。

医師が薬剤を選択する、あるいは変更する動機の一番重要なポイントはなんでしょうか?

それはその薬剤を使うことで「何かが変わる」ことを期待することにあります。

何も変わらないのであれば現状で十分です。

その場合はあなたが処方して欲しい自社製品ではなく、使い慣れた薬剤を引き続き使っていくことになります。

競合が競争地位で言う、強者の地位にある場合はこの傾向が強く出ます。

医師が薬剤を選択する、あるいは変更するためには「何かが変わる」ことを具体的に『期待』させる必要があります。

医師があなたの自社製品を使用することで、患者に起こる良い変化をイメージし、処方に対する期待値を高めるためにはどうすればいいでしょうか?

何かが変わる、つまり今までとは違うsomething else、すなわち差別化です。

他社がそうしているから自社もそうする、それが業界のデフォルト(標準)だと無意識に思い込むことで、新しいことを考えることを止めてしませんか?

コモディティは競争優位性を生みません。

競争市場には必ず競合が存在します、勝つための理論とプロセスが必要です。

現在の企業のプロモーション戦略は、顧客の満足向上に軸足が置かれています。

しかし、顧客ニーズの多様化は、何をもってして満足とするか多種多様となり、全てに応えることはとても難しくなっています。

コトラーのマーケティングに表されるように、精神的な満足は概念としては理解できますが、実際に理解することは不可能に近いと言えます。

顧客個々により異なる満足感をコントロールするには、期待を満足に対し有効に作用させる「期待値コントロール」が不可欠です。

事前に顧客が何を期待しているのかを認識していれば、満足をコントロールすることは可能と考えられます。

期待値コントロールとは相手の期待値と自身の状況を踏まえて、期待値のレベルをコントロールすることです。

プロモーション戦略に置き換えると、製品特性についてついついマイナスポイント修正方式で、特に競合製品に対して劣位性を見せたくないという心理が働きます。

しかし実際には大きな製品特性に違いが無ければ期待して処方した医師にとって期待外れの結果となり信頼を失いかねません。

さらに多くの製品特性を一度に訴求することは差別化戦略を無効化してしまいます。

継続的に成果を上げるために、期待値コントロールにチャレンジしてみてください。

人はほとんどの場合、無意識のうちに直感的思考による印象で物事を判断しているそうです。

そして多くの場合、その印象が何に由来しているのか知らず、印象や直感の基になっている情報のことを考えることすらありません。

思考がどのようにして決まるのか?ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの著書、「thinking, Fast & Slow」を読まれた方もおられるのではないでしょうか。

要約すると、人には2つの思考システムがあり、システム1は物事を直感的に判断するため即時性に優れているが複雑なことには対応できない。

システム1では対応しきれない場合にはシステム2が発動する。

システム2は複雑な思考に長けているが、塾考を要し、1つのことに集中するために他のことが疎かになる上に多くのエネルギーを必要とする。

そのため平常時はシステム1に判断を任せて省エネモードになっている、ということらしい。

非常にprimitiveであり高度なシステムですね。

これをプロモーション戦略に置き換えてみましょう。

戦略でいえばニッチ戦略、集中化戦略です。

「選択と集中」により、最大市場を狙わず、着実に市場を切り崩し、ドミナント的にシェアを拡大する戦略です。

顧客にとては情報は少ない方が辻褄合わせがしやすく、情報の量と質はほとんど考慮されません。

さらに直感的印象には第一印象重視する認知バイアスが生じやすく、感情的な印象ですべてを評価しようとします。

目の前の情報だけを重視し、手元にない情報を無視するために、限られた情報に基づいて結論に飛びつく傾向は直感的思考の特徴です。

忙しい顧客ほどこの傾向にあると考えられます。

面談時間より面談回数の方がレバレッジは効くかもしれません。

そう考えると、かつてどの製薬企業も行っていた量より質を重視するSOVは理にかなった戦略と言えます。

月初と月末に、あるいは中間地点で、上司から売上実績の推定着地金額の報告を求められる企業があるかと思います。

私がMRだったころは算出方法など知らないため感覚的にこれくらいだろうとある意味適当な報告をしていました。

適当であっても、結局は足りない分を割り当てられた目標数字を積み上げさせられるため、初めから目標金額を報告しておけば良かったのかもしれません。

またマーケティング担当者の方は今期の売上予測、売上目標の設定をする必要があるかと思います。

その場合はよりシビアな作業になります。

感覚的な設定方法では、後々色々とトラブルの元になるからです。

感覚、期待、予想など個人のバイアス、あるいは経営陣からのトップダウンなど、正解性を欠く要因はあちらこちらに潜んでいます。

個人の感覚を排除し、定量データだけで予想する方法があります。

EXCELの関数を用いれば、過去の売上実績から予測を行うことが出来ます。

定量分析を行って、その後に実際の肌感覚で違和感がないか修正します。

「顧客ニーズに応え、価値を提供することで顧客満足度を向上する」

昨今のビジネスでは良く耳にするフレーズですが、とは言えどのようにすれば良いのか具体的にイメージしにくいのではないでしょうか。

ニーズ応え満足して貰うには、まず期待に応える必要があります。

この「期待」や「満足」という定量化出来ない漠然とした物に対応することは非常に厄介な問題です。

また競争市場には必ず競合が存在し、顧客は必ず競合他社の提供する価値にも触れています。

そして競合他社もまた、顧客のニーズを満たすために質的・量的ともに、より高い満足を提供し、他者に打ち勝つため、提供価値を絶えず高める努力を行っています。

つまり顧客の事前の期待は競合他社の提供する価値の影響を多分に反映しています。

そのため、競合がどのような活動を行っているのか、顧客の反応はどうか、常に意識することが必要です。

さらに互いに競い合うことにより、時間の経過とともに顧客の事前期待値はどんどん高まっていくことになり、絶えず提供する価値を向上させていく宿命にあります。

顧客の満足度は事前期待と事後評価の差で決まり、顧客の事前期待をコントロールすることも重要になります。

顧客がサービスや商品を購入前に持っている期待のことを「事前期待」と呼びます。

この事前期待を知ることが出来れば、価値提供のために何をすべきかが見えてきます。

サービスの提供は物質的な商品とは異なり、常に変化し、後に残ることがありません。

特に医療サービスは知識と技術に基づく、高度で専門性が高いという特性があります。

医学的知識に乏しい一般の患者にはサービスの質が伝わりにくい側面を持っています。

そのため、患者心理を遮蔽する要因が多く存在します。

サービスの価値を伝え理解してもらうためには高度なコミュニケーションが必要です。

患者に精神的な満足を与えられなければ、再びリピートせずドロップアウトする可能性があります。

医療経営は確実に競争の時代に突入しています。

2025年に向けた医療機能再編では、競争に打ち勝ち生き残りを目指すか、あるいは統合して効率化を目指すという選択を迫られます。

少子高齢化による市場の縮小は、医療においても供給過多の状況を生んでいます。

医療機関ですら、競合に対して差別化を行い、顧客に働きかける必要があります。

つまりマーケティングが求められているということです。

マーケティングの基本に、顧客への価値提供があります。

医療機関にとっての顧客は患者です。

患者を獲得し定着させることは、医療機関と製薬企業の共通の利益となります。

そのため、これからのMRはマーケティング・スキルが不可欠になります。

医療サービスは非常に高度で専門的のため、医学的知識に乏しい患者にとっては、サービスの内容を理解することが難しい傾向にあります。

本来、患者は望んで医療機関を訪れているわけではありません。

誰も望んで病気になんてなりたくはないからです。

そのため顧客のニーズは顕在化した部分と潜在的な要因が複雑に絡み合っています。

また医学的知識に乏しい患者は自分の状況を医学的に表現することが出来ません。

価値提供のためには、患者のインサイトを知る必要があります。

前のブログ記事でヒエラルキーの話題をしたので、番外編として教授選についてお話してみようと思います。

私が現役MR時代、よく教授選を占っていました。

なぜなら教授が変わることで、それまで築いた関係性がリセットされる危険性があるからです。

新しく赴任する教授が前施設で自社との関係性が無い、あるいは悪く、競合他社と関係性が深ければ最悪の事態を招きます。

教授選がいつ頃になるかは、詳細な月日までは分からなくとも、おおよそは退官する年齢から簡単に分かります。

学内から選出される場合はよいのですが、学外となると広い情報網が必要です。

教授選考の大きな要因は、人柄・人望、役職・政治力などが複雑に絡んできますが、最も大きな要因は業績です。

人が良いだけでは教授にはなれません。

(本院・分院、公立・私立、研究機関ありなしによって異なりますが)

外科系の場合はオペ数などが業績にあたります。

それ以外の定量情報として、インパクトファクターと科研費があります。

Nature、Cell、Sienceなど、インパクトファクターが40~50点クラスの論文を複数もつ候補者もいます。

東大の有名な教授などではインパクトファクター4,000点オーバーという強者が存在します。

科研費は幾ら持参金を持っているかということです。

研究機関では多くの医局員を抱えており、研究成果を出さなければなりません。

業績のスコア化については、別の機会にご紹介しようと思います。

ただ、これもあくまでも勝ち馬の予想であり、絶対という訳にはいきません。

教授選は伏魔殿です。

全候補者の中で圧倒的な業績で大本命の鉄板と思われていた先生が、天狗発言で失脚したケースもあります。

また、教授になるタイミングでは既に競合他社の唾が付いていると思って良いでしょう。

早くから将来の教授を見つけるためにも業績は指標になります。

論文では first author以外にも多くのDrの名前が連なっています。

ある時から、その中に名前が頻出するようになったら、現教授の秘蔵っ子の可能性があるかもしれません。