読者の皆さんの中にも釣りをされる方がいると思います。

釣りをする際に魚が見えていることは少ないのではないでしょうか?

水面を眺めながら、水中にはきっと魚がいると信じて釣り糸を垂れるわけです。

もし魚が大量にいることが分かっていれば釣り糸など垂れず、網でも投げて一気に囲い込むことを考えるかもしれません。

もしこれが鳥を撃つハンティングだったらどうでしょう?

空は見上げれば鳥がいるかいないかは一目瞭然です。

何もない空に向かって銃を撃つ人はいないでしょう、弾の無駄使いです。

デジタルプロモーションによる情報の一斉配信は、そこにポテンシャル顧客が存在し情報に反応することを前提として実施されています。

釣りに例えるなら魚が大量に目前に存在し、網を投げ入れている状況を想像しているわけです。

しかし実際にポテンシャル顧客が網に引っかかるかどうかは投げてみなければわかりません。

いるかいないのか、または餌に反応するのか、予め試算することは出来ているでしょうか?

デジタルプロモーションの処方インパクトは期待したほど成果をあげていないと聞きます。

もし凄腕の釣り師であれば、何時に何処にいけば魚がいるのか知っているでしょう。

出来るMRは面会が困難な顧客にも不思議と面会をしています。

それを知らなければいつまで糸を垂れても待ちぼうけのボウズで帰宅することになります。

果たして、行動履歴で得られたデジタルデータを駆使することで大物を釣り上げることは出来るでしょうか?

本社が立てるマーケティング戦略から実行プランである営業戦略までは一貫性と連続性が求められます。

一貫性と連続性がある戦略はストーリーとなるため、納得性と実現性が格段に高まります。

シームレスがゆえにマーケティング戦略と営業戦略の境界が曖昧になりがちなので注意が必要です。

何かを実施する際には、なぜ実施するのか、その目的が必要です。

目的が不明確なまま実施していては成果が得られないどころか経営資源がいくらあっても足りません。

さらに目的と手段が混在していることも散見します。

これらを明確化するためにはSTP分析で定めた、セグメント、ターゲット、ポジショニングに沿ってデザインをするとよいでしょう。

特にポジショニングは自社のコアコンピタンスであり、顧客に提供するべき価値です。

価値を伝え提供するために実行プラン、チャネルの活用があります。

STP分析ではセグメント、ターゲット、ポジショニングの分類に迷うかのしれませんが、Where、Who、Whatで考えてみると良いと思います。

マーケティングとは売れるための仕組みを考えることだと言われます。

では、売れる仕組みとは一体どのようなものでしょうか?

マーケティング戦略と営業戦略の境目はとても曖昧です。

特に営業からマーケティング部門に異動になったスーパーMRは、元々ハイパフォーマーであり、センスと勘と経験で売ってしまうために、体系立てて売れる仕組みを作ることは難しく感じるでしょう。

ましてや専門的にマーケターとしての育成を受けていなければなおさらです。

ついつい自分の得意なMRとしての目線で考えてしまい、戦略というよりは何をやるかが中心のプラン、KPIばかり設定してしまいがちです。

しかし、競争市場には必ず競合が存在するため、戦略は常に相対的に策定されるべきものです。

特に昨今のように、市場環境が偏在し顧客ニーズが多様化する状況ではなおさらエリアに即した営業戦略が必要です。

自社製品のポジショニングを起点に、いかにして価値提供を実現するか、その工程が売れる仕組みと言って良いのではないでしょうか?

問題解決の糸口は「Issue」から始めよと言われています。

課題の原因となっている問題点は必ずしも内部環境にあるとは限りません。

内部環境は外部環境の影響を多分に受けています。

俯瞰的に状況を見るためには定量情報を必要とします。

ポジショニング戦略において、他社には真似できない自社の強みであるコアコンピタンスを明確にすることはとても重要です。

No.1になれるカテゴリーまで絞り込むことで、自社だけが提供可能な価値を抽出します。

一般的に消費財マーケティングではブルーオーシャン戦略が中心になり、競合が不在な市場を見つけ出し、「戦わずして勝つ」戦略となりますが、医薬品ビジネスのように極端にコモディティ化している場合では同様にはいきません。

市場内の自社の競争地位に応じて、有効になる「強み」は変化します。

競争市場には必ず競合が存在します。

戦略は常に相対的に策定する必要があります。

どのような競争地位であっても対応が出来るように特性から強みまでをしっかり洗い出す必要があります。

様々な法規制や業界ルールで同一化を強いられる医薬品ビジネスですが、競合に打ち勝ちためにはやはり差別化が必要になります。

差別化とは競合との「違い」であり自社だけの「強み」です。

では「強み」とはなんでしょうか?長所とはどこが異なるのでしょうか?

それは「顧客が他社と比べて自社を選択する理由」です。

そのためには「他社より魅力的」であり、その魅力が顧客にとって「付加価値を生む」必要があります。

3C分析はまさに、顧客が求める価値、競合が提供する価値から、自社だけが提供出来る価値を抽出するプロセスです。

日本の学校教育はマイナスポイント修正型です。

自分の劣っている部分を改善するために、好きなことや得意なことではなく、苦手なこと、好きではないことをして学生時代を過ごします。

それらの経験を通じて、人生とは嫌なことを我慢してやることだ、それに対して対価として給料が支払われるのだと思い込みます。

・人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。
・弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。
・強みに集中し、卓越した成果をあげよ。

・弱みを改善することは時間の浪費でしかない。

とはピータードラッガーの言葉です。

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について、河野規制改革担当大臣が、先行接種の対象となった医療従事者は年内から、高齢者は年明けから、それぞれ開始するという見通しを示しました。

9月22日公表データでは、全国の療従事者等も含めた全体のワクチン1回目の接種率(総人口比)は68%です。

また、65歳以上の高齢者のうち、ワクチン接種を行った人の割合は1回接種が90.1%、2回目接種が88.7%とほぼ接種が完了しています。

つまり64歳以下のポピュレーションで接種が進んでいないことが読み取れます。

4月までのワクチン接種のターゲティングが明確であったことに比べ、その後のターゲットが20歳代であったり、小児であったり、40~50代の接種を曖昧にしたりと、ロードマップがやや不明確になったように見受けられます。

さらに、ワクチン接種については副反応に加えて当初期待したほどのインパクトが得られていない現状があることも要因として考えられます。

最近では製薬企業が盛んに有効性を訴求していますが、顧客にとっての必要性、つまりニーズの顕在化が不十分といえます。

製品の良さを訴求するマーケティング手法は1900年代の高度成長期の手法です。

現代のマーケティングでは顧客にとっての精神的な価値を提供することが不可欠です。

良い製品であれば売れる時代はとっくに終わっています。

具体的なベネフィットを伝達することが重要なポイントです。

現時点での有望な「既存顧客」は、医療関係者および65歳以上の「既接種者」です。

未接種者に比べて接種へのハードルは低いことが予想されます。

新規市場開拓だけではなく、既存顧客のリピート率を高め、再接種を進める「既存市場の拡大」も重要な戦略といえます。

ということで、河野大臣の見通しはマーケティング戦略的には有効と言えるのではないでしょうか。

*当ブログはワクチン接種をマーケティングの視点から取り上げたものであり、接種の推奨・否定をするものではありません。

医薬品ビジネスにおけるジレンマの一つに、エンドユーザーである患者と、インターフェースである医師の2種類のプレイヤーが存在することです。

またエンドユーザーである患者に医薬品企業がダイレクトに接触することは非常に限定されます。

2種類のプレイヤーそれぞれの目線で価値を考え、伝達する方法、チャネルを確保しなければなりません。

STP分析を行う場合には、この2種類のプレイヤーはどのフレームで扱うべきでしょうか?

STPを「どこで」「だれに」「なにを」と考えると整理しやすくなると思います。

ビジネスフレームワークは必ずしも特定の業界に特化していません。

活用する側が上手く自社の所属する業界にアレンジする必要があります。

戦略策定には「経営戦略」⇒「マーケティング戦略」⇒「営業戦略」のヒエラルキーがあります。

下位の戦略は上位の戦略に基づいて策定される必要があります。

多くの場合で、「営業戦略」を「マーケティング戦略」の中で行ってしまう事があります。

その場合は、戦略というよりは単なるKPIによる評価指標であることも少なくありません。

現代のように市場の偏在と顧客ニーズの多様化が進む市場環境ではエリアマーケティングはとても重要です。

「営業戦略」策定の手法は持っていますか?