戦略プランを考える際に売上目標金額を基にロードマップを作成していませんか?

市場には顧客と競合が存在し、戦略プランは常に相対的です。

売上目標金額ではなく、市場シェア値を用いる必要があります。

狙うシェア値によって攻略の難易度、必要となるリソース量は大きく変わってきます。

またニッチ市場を狙うことで最大市場が狙えなくなると考える方が居ますが、一部の例外を除き、最初から最大市場を狙うことで多くの場合は失敗します。

市場を細分化し、ドミナント的に拡大することで最終的に目指す売上目標金額に到達することが出来るのです。

2021年8月26日、モデルナ社製新型コロナワクチンの特定のロットに異物の混入が確認されました。

また死亡例(因果関係不明)の報告もあり、モデルナ社製ワクチンへの安全性に関する疑念が広がっています。

それを受けてファイザー社製のワクチン接種を希望する傾向が一層強まったように見えます。

果たしてファイザー社製ワクチン接種を希望する方は、実際にモデルナ社製ワクチンとの比較を行っての判断なのでしょうか。

ファイザー社製のワクチンはドイツのベンチャー会社であるビオンテック社が開発した技術をベースに開発されており、一方モデルナ社製もmRNAを用いるワクチンなどの医薬品開発を目指して設立されたアメリカのベンチャー企業です。

両剤の接種対処は異なっており、ファイザー社製は個別接種、モデルナ社製は集団接種となっています。

なぜ、このような違いがあるのか、クリティカルに考えてみる習慣が必要です。

ファイザー社製は希釈の必要がありますがモデルナ社製は希釈の必要がなく、さらにファイザー社製のように超低温冷凍庫も必要ないことが集団接種に用いられる理由のようです。

モデルナ社製は現場の医療スタッフにとって管理がしやすく負担が少ないため大規模接種に向いています。

一方でファイザー社製は希釈が必要なので希釈ミスによる濃度の不均一、混合時の衝撃による不安定性、充填作業など行程が増えるため安全性への懸念があります。

両剤の特徴を比較すると必ずしもファイザー社製ワクチンが簡便性の高いモデルナ社製ワクチンを効果・安全性で上回るとも言えませんが、モデルナ社製ワクチンのネガティブ情報が広がることでファイザー社製ワクチンが良いという認知バイアスが発生します。

ここに市場内における強者であることのメリットがあります。

総接種回数のデータではファイザー社製ワクチンが9割弱を占拠しており、圧倒的独走状態の強者です。

強者の強みは競合との差別化が不必要な点にあります。

市場の占拠が進みブランドとして確立することで顧客が勝手に自社製品を選択してくれるようになるのです。

売上高よりもシェアを意識することの大切さが改めて良く分かります。

もしかしたら集団接種よりも個別接種の方がプレミア感を感じる方もいるかもしれません。

需要は確実にあるのでモデルナ社はVC分析やVRIO分析を行って差別化戦略プランを立てる必要がありますね。

コストリーダーシップ戦略は同業他社よりも低コストで製品を生産することで競争優位性を確立する経営戦略です。

低コストで製品を生産するために大量生産による規模の経済性により製品一個あたりの生産コストを低下させます。

コストリーダーシップ戦略以外には差別化戦略と集中化戦略があります。

差別化戦略では価格以外の面で他社との違いを打ち出して競争優位性を築き、集中戦略では特定の小さい市場(ニッチ市場)をターゲットとした上で差別化もしくはコスト面で競争優位性を築く戦略です。

シェアによる4つの戦略プランには非差別化戦略、差別化戦略、集中化戦略、ニッチ戦略があり、ポーターの4つの競争地位と似ているようですが実際には異なります。

非差別化戦略ではコストリーダーシップ戦略のように必ずしも大量生産によるコスト削減を目的にはしていません。

ポーターの3つの競争戦略は1980年に提唱された戦略です。

1980年は戦後の高度成長期であり、大量生産・大量消費の時代です。

しかし現代は景気の後退や人口減少により市場は縮小しており、大量消費を前提とした戦略は機能しません。

また多くのビジネスフレームワークは定性情報を基盤に作成される傾向があります。

それに定性情報より定量情報の方が分析には向いています。

製薬業界のように定量データが豊富な恵まれた環境下では最大限活用すべきです。

医薬品ビジネスは頭脳戦です、データを活用する者が市場を制します。

情報提供ガイドラインの策定に関わった日本薬剤師会の磯部専務理事のことはご存知の方も多くいらっしゃると思います。

MR不要論、MR減算の言い出しっぺとして知られています。

「MRの情報提供のメインは広告宣伝であり、本来の安全管理情報の収集・提供と乖離している。これまではMRの提供する情報で処方が左右される、MRベースドメディスンだった」というのも面白い視点です。

また、MR認定センターの田中専務理事も情報提供ガイドラインを引き合いに出しながら、「私たちは変わるのです。ここで変わらないとMRの将来はありません。」と熱く語っています。

当然のことですが、MRの認定業務が減少すればMR認定センターの将来もありませんね。

そのうえでMRの呼称を「適正使用推進者」に変更を提案しています。

名称変更も重要ですが、何をすべきかを明確にすることはもっと重要だと思います。

マーケティングの手法を使ってワークショップをしてみてはいかがでしょうか?

マーケティングの理想はセールスを不要にすること

これはドラッガーの有名な言葉なのでご存知の方も多いと思います。

マーケティング部門に配属されたならこの言葉を実現しようと燃えた方も居るかもしれません。

しかしこの言葉には大きな落とし穴があります。

きっとドラッガーはオーストリア・ウィーン生まれなのでドイツ語でこの言葉を言ったでしょう。

セールス、セリングとも言いますが、日本語では「販売」と「営業」と訳されます。

英語では同じセールスですが、日本語での「販売」と「営業」は異なった意味合いを持ちます。

「営業」は購入意思の無い顧客の購買意欲を高め、「販売」は購入意思のある顧客の購入をサポート行います。

コスト削減と生産性向上のためにMRの人員削減が進められていますが、MRよる人的販売は最もコストがかかるけれども顧客を購入に向かわせる最も有効な手段です。

実際にデジタルでは当初期待した処方インパクトが得られず、MRとデジタルのハイブリッドを模索中です。

「マーケティングで営業や販売を不要にはできない」と言えるのではないでしょうか。

コトラーが提唱する「競争地位戦略」では4つの象限に分類されます。

リーダーとは業界内で最大の市場シェアを持つ企業のことで、市場シェアでは、日医工とメディパルHDともに1位の地位です。

リーダー戦略では市場シェア率の維持または拡大には、市場規模の拡大が不可欠です。

①市場の拡大(周辺需要の拡大)、②非価格対応、③同質化、④最適シェア維持などを行います。

しかし日医工とメディパルHD共に1位ですが、2位以下に√3倍以上のシェアの差は築けておらず拮抗状態にあり絶対的な市場内リーダーとは言えません。

医薬品市場は縮小しており、シェア拡大は急務です。

企業体力に勝る企業は攻めにでるでしょう。

全体市場で消耗戦を戦い抜くか、市場細分化で活路を見出すか、各社どのような経営戦略を打ち出してくるでしょうか。

日医工がメディパルHDとの資本業務提携を発表しました。

後発医薬品の計画発注・計画生産、物流・営業体制などの資本業務提携を行います。

これにより、後発医薬品国内最大手の日医工と医薬品卸最大手のメディパルHDの提携が構築されることになります。

激変する市場環境を見据えた後発医薬品ビジネスへの投資と新たな方向性を探るためと言われています。

日医工の総販売実績に占める取引卸の割合は、メディセオの21.1%、アルフレッサは14.6%、スズケン14.4%です。

資本業務提携は、お互いに業務面や資金面で協力する提携関係を築くための手法です。

提携先企業の株式を取得、あるいはそれぞれの企業が株式を持ち寄って提携関係を築く株式の取得という資本の移動が発生します。

元々、メディパルHDは日医工の株式を75万株保有しているほか、日医工もメディパルHDの株式を47万株保有するなど資本関係もあります。

この流れは必然でしょうか。








製薬企業は利益の減少を背景に人員削減を進めています。

それによって起きる戦力の低下はデジタルによる情報提供に置き換えることで対応しています。

しかし結果的には期待した処方インパクトが得られていない現状です。

何故でしょうか?

「マーケティングの理想は販売を不要にすることである」

これはドラッガーの言葉ですが、ここに落とし穴があります。

それは「販売」です。

販売はセールスあるいはセリングと訳すことが出来ます。

またセールス、セリングは「営業」と訳す事も出来ます。

英語では同じとなる「販売」と「営業」ですが、日本語では異なる意味合いで使われます。

この役割を混同し間違った役割として使っているために期待した処方インパクトが得られていないのです。

将来的にはデジタルに「営業」の役割を担わせることが可能になるかもしれませんが、現時点では「営業」においてMRは必要不可欠な存在と言えるでしょう。

メーカーだけではなく医薬品ビジネスでは卸の収益も悪化しています。

1978年には615社も有った医薬品卸は、合従連衡により2019年には70社にまで減少しました。

皆さんご存知のように広域主要卸はメガ4と呼ばれるまで統合が進んでいます。

シェア類型を視ると実際にはメガ4から3強時代に入っています。

現状では42%を超える安定強者は存在していませんが、やがて2強、そして1強に推移していくものと予測されます。

今後は各社の経営戦略がとても重要になって来ます。

縮小市場ではシェアを高めることが重要な戦略となります。

メガ4であれば経営資源に物を言わせて面で占拠していく戦略があります。

現在では処方元には面会していないMSも増えてきました。

良し悪しはありますが、価格でグループチェーンなどの調剤薬局を獲っていくことも戦略と言えます。

競合を排除し、全体市場で勝ち残ればコストリーダーシップ戦略で価格をコントロール出来るようになるからです。

あるいはバイタルネットのように全体市場でのシェアは低くとも東北、新潟などのエリアでの強者を狙う戦略もあります。

市場細分化によるNo1戦略です。

またバイタルネットは処方元に強いとの評価があるため、MRの顧客面会が減少した今の状況下では大きな差別化となります。

MRによる情報提供からデジタルによる情報提供への切替を進めてきましたが期待したような処方インパクトが得られていません。

やはりターゲットに集約したリソース投下が売上向上には不可欠です。

各社の戦略に注目ですね。

多くの製薬企業が減収減益となっています。

その場合には、意識改革、人員削減による組織のスリム化、コスト削減による対処が行われます。

コスト構造の変動費を抑える手法です。

家庭に例えると節約です。

家賃や光熱費などの固定費を減らす事は難しいため、食費やレジャー費を抑えることで出費を減らします。

しかしこれでは根本的には解決が出来ませんよね。

サラリーマンの場合、残業・休日出勤で手当をもらう、出世して基本給を上げる、もっと給料の良い会社に転職するなど収入を上げる方法を考えるでしょう。

当然、出費が収入を超えれば貯蓄を崩し、貯蓄も無くなったら白旗を上げることになります。

対処療法では状況は変わらぬまま延々と続きます。

原因療法で根本的な課題を解決する必要ありますね。