過去には多くの製薬企業が行っていたブロックバスター戦略は、近年では小さな市場や特定のニーズを満たす市場へと変化しています。その背景には、高額な開発コストや長い開発時間、そして高い不確実性、高い規制のハードルなどがあります。

これらの小さな市場や特定のニーズを満たす市場は、以前では製薬企業の主なターゲットではありませんでした。しかし、特定のニーズに応える治療薬の開発を促進するために、税制上の優遇措置や市場独占期間の延長などのインセンティブが提供されています。また、これらの市場においては、必要とされる患者数が少ないことから、臨床試験をより小規模で実施することが可能です。

これにより、開発試験の実施が容易になり、コストと時間を削減できることから、製薬企業は小さな市場や特定のニーズを満たす市場の治療薬開発において、リスクが低減され、投資対効果が向上します。

しかし、メリットがある一方で、特定のニーズを除き、これらの市場の中には治療ニーズが必ずしも顕在化していないものもあります。その場合には市場の醸成をしていく必要が生じます。

市場の醸成に効果的なのは競合他社の市場参入です。競争により市場浸透、拡大のスピードは一段と速くなります。

では両社で開拓した市場は仲良く分け合うことになるでしょうか?残念ながらそうではありません。最終的には一強型の競争市場、すなわち勝者と敗者が生まれます。

特に市場に自社の他に競合他社が1社のみの2者間競争の場合、その傾向はシビアです。なぜなら目の前の敵に全戦力を投入することになるため戦力量に勝る方が圧倒的に競争優位になるからです。

また一般的には後発参入が有利になることがあります。先発参入メーカーをリード獲得として利用し、SQLを人的営業で一気に刈り取る戦略が可能だからです。

認知症の治療薬とRSウイルス(呼吸器合胞性ウイルス)ワクチンの開発は、市場の醸成において挑戦に直面している領域の事例と言えるでしょう。これらの分野は、高い医療ニーズと科学的な課題の両方を抱えていますが、それぞれ独自の困難さがあります。

RSウイルスワクチンでは先行参入したGSKを後追いする形でファイザーが市場参入します。このことにより市場はどのように拡大するのか、また勝者となるのはどちらでしょうか?

両社の戦略に注目したいと思います。