「コロナワクチン接種以降、がんが増えたのか?―統計的ラビリンス」
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「コロナワクチン接種以降、がんが増えたのか?」――この問いは、いまSNSでしばしば見かけます。医師が「体感として増えた」と語る投稿もありますが、主観的な印象だけで結論を急ぐのは危険です。少なくとも現時点で言えるのは、「そう見える可能性もあるし、そうではない可能性もある」というところまででしょう。
とくに2020年前後は、受診控えや検査件数の減少、診断の遅れが起こりやすい特殊な期間でした。もしそこで“見つからなかったがん”が翌年以降にまとめて診断されれば、統計は簡単に「増えたように」見えます。ここを踏まえずに時系列を眺めると、偶然の重なりや制度・行動の変化が、まるで因果関係であるかのように錯覚されてしまいます。
さらに厄介なのは、「がん検診の実施状況」と「がんの罹患率(=診断される率)」の関係です。両者に相関が出るのはむしろ自然です。しかし、その相関だけで「発症リスクが上がった/下がった」とは言えません。なぜなら検診は、“真の発症”そのものを動かすというより、まず“見つかる数(診断される数)”を動かすからです。検出バイアス、過剰診断、受診行動の変化――この「統計的ラビリンス」を抜けない限り、データはどちらの物語にも都合よく読めてしまうのです。
使った公的データ(日本)
- 都道府県別・がん検診受診率(2007–2022)(国立がん研究センター がん情報サービス) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
- 都道府県別・がん罹患(全国がん登録:2016–2021)年齢調整罹患率(同) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
- 都道府県別・成人喫煙率(2001–2022)(同) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
※罹患率は「全国がん登録」ベースで、年齢調整罹患率(昭和60年モデル人口)を用いました。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト



































