人員計画の議論が始まると、多くの組織ではこうなりがちです。
「人件費が重い。削減額を決めて、人数を逆算する。」
そして次に起きるのが、“給与レンジの高い50歳代を狙い撃ち”という発想です。確かに短期の帳尻は合いそうに見えます。ですが、その一手は本当に「経営を良くする因果」を踏んでいるでしょうか。
ここで必要なのは、人数や年齢の算数ではなく、因果の設計です。
私は、人員構成の適正化を DSA+DAG(Distribution Structure Analysis + Directed Acyclic Graph)でスキーム化しています。
ポイントはシンプルで、「人件費」ではなく「分布」と「因果」で人員計画を作ることです。
*ミュートされています。
DSA:なぜ“50歳代狙い撃ち”が起こるのかを構造で捉える
人件費が経営を圧迫する局面では、問題は平均ではなく 高コスト帯(右裾)に現れます。多くの組織ではその右裾が、昇給カーブの上にある 50歳代に集中します。だから「ここを薄くすれば効く」と見える。
しかしDSAでは、年齢だけを見ません。
年齢×職種×部門×等級×勤務形態(夜勤/当直)の分布で、次を同時に特定します。
- 本当に“右裾”を形成しているのはどの層か
- その層が担っている機能は代替可能か(育成年数は何年か)
- 抜けたときに欠損が起きるボトルネックはどこか
つまり、「高いから狙う」ではなく「狙ってよい高コスト帯」と「触ると壊れる高コスト帯」を分けるのがDSAです。
DAG:50歳代を抜くと何が起きるか――逆噴射経路を切り分ける
50歳代は給与レンジが高い一方で、現場では次の役割を担っていることが多い層です。
- 現場の段取り・調整・マネジメント(暗黙知のハブ)
- 若手の教育(育成の要)
- 有事対応(当直・トラブル対応の最後の砦)
この層を“コストだけ”で狙うと、DAG上ではこういう逆噴射経路が立ち上がります。
- 早期退職(50歳代集中) → 人件費↓(プラス)
- しかし同時に
- 稼働↓ → 収入↓(マイナス)
- 残業↑ → 疲弊↑ → 離職↑(マイナス)
- 置換で派遣/委託↑ → 単価↑(マイナス)
DSA+DAGでは、これらを最初から分けて評価します。
だから「50歳代を狙うべきか」は、“気分”ではなく、純効果(プラス−マイナス)がプラスになる設計かどうかで判断できます。
すると、募集人数は「若干名」ではなく“説明できる設計値”になる
このアプローチを使うと、募集人数は曖昧な「若干名」ではなくなります。例えば、こう言えるようになります。
「高コスト帯(主に50歳代)のうち、代替可能性が高く、稼働への影響が小さい領域に限定して○〜○名。
一方、当直・稼働・育成のボトルネックに該当する50歳代は除外(または上限設定)。
稼働KPI・残業・欠員が閾値を超えた場合は募集停止・対象修正。」
つまり、人員計画が“人件費削減の算数”から、説明責任に耐える因果設計に変わります。
これは単なる削減ではなく「構造を組み替える」施策です
DSA+DAGは、早期退職だけで完結させません。
採用・育成・タスクシフト・外注最適化まで含めて、**人員構成を“持続可能な形に組み替える”**ための意思決定スキームです。
赤字でも人材不足でも、打ち手を誤れば組織は弱体化します。だからこそ、構造と因果で設計する価値があります。
もし、
- 人員計画が「人件費」だけで決まり、50歳代が狙われている
- 削減が稼働や離職にどう影響するか説明できない
- “削減しても楽にならない”状態が続いている
…こうした課題に心当たりがあれば、DSA+DAGの因果モデル人員計画は有効です。
