――答えを聞かずに、意思決定の構造を読む技術――

営業や事業開発の場面で、つい聞きたくなる質問があります。

  • なぜ検討が止まっているのですか?
  • どんなリスクを感じているのですか?
  • 誰の合意が必要なのですか?

いずれも一見、核心を突いた「正しい質問」に見えます。
しかし、こうした質問をそのまま投げた瞬間に商談が停滞する――そんな経験はないでしょうか。

正論の質問ほど、人は防御する

これらの質問に共通するのは、
すべて 「判断の責任」や「意思決定の正当性」 に触れている点です。

多くのビジネス現場では、

  • 検討が止まっている理由
  • 感じている本当のリスク
  • 合意形成の力学

は、個人の怠慢ではなく、組織を守るための結果として存在しています。

そのためダイレクトに聞かれると、相手は無意識に
「説明できる答え」「安全な答え」
へと話を変えてしまいます。

結果として、本音や構造には辿り着けません。


ティプス①

「なぜ検討が止まっているのか?」を聞かない

その代わりに、こう聞きます。

  • 「これまでに、似た話が出たことはありますか?」
  • 「そのときは、どこまで進んだのでしょうか?」

ポイントは 過去形 です。

人は「今の判断」を説明するのは苦手ですが、
「過去の出来事」を語るのは得意です。

そこから、

  • 過去の失敗体験
  • 忙しさによる中断
  • 判断できなかった組織構造

が自然に見えてきます。

止まっている理由”は、現在ではなく過去にあります。


ティプス②

「どんなリスクを感じていますか?」を聞かない

代わりに、こう聞きます。

  • 「もし進めるとしたら、一番気を遣うのはどこでしょう?」
  • 「逆に、ここだけは変えたくない、という点はありますか?」

この質問で出てくる言葉こそが、
相手が本当に警戒しているリスクです。

多くのケースで、リスクの正体は

  • 技術的失敗
  • 数値的損失

よりも、

  • 説明責任
  • 社内調整
  • 手間が増えること

にあります。

人は「損」よりも「面倒」や「責任」を恐れます。


ティプス③

「誰の合意が必要ですか?」を聞かない

代わりに、こう聞きます。

  • 「こういった話は、普段どこで共有されることが多いですか?」
  • 「進めるとしたら、最初に相談すると安心なのは誰でしょうか?」

ここで重要なのは、
決裁者の名前を知ることではありません。

本当に知るべきなのは、

  • 暗黙の拒否権を持つ人
  • 前例を握っている人
  • “一言で空気を変えられる人”

です。

組織は、公式ルートより非公式の力学で動いています。


営業で見るべきは「答え」ではない

質問の目的は、
YES/NOを引き出すことではありません。

  • 話すスピード
  • 言葉の濁り
  • 主語の変化(私 → 部署 → 会社)
  • 無意識の言い換え

こうした反応の変化こそが、
その組織が動かない理由を教えてくれます。


まとめ

ビジネス・営業で失敗しない質問の原則

  • 正しい質問ほど、直接は聞かない
  • 本音は「過去」と「仮定」の話に出る
  • 組織は個人ではなく、構造で止まっている

だから、答えを求めない。
でも、必ず分かるように聞く。

この問い方ができると、
営業は「説得」ではなく、
意思決定の構造を読み解く仕事に変わります。