昨今、「因果AI」「コーザルAI」といった言葉を目にする機会が急速に増えました。売り文句はどれも似ています。──「AIが因果を自動で見つけます」「ブラックボックスではなく因果で説明します」。まるで、AIさえ使えば、これまでの限界を一気に飛び越えられるかのようです。
しかし冷静に眺めてみると、多くのサービスはコアとなる分析エンジンが従来の延長線上にあることが少なくありません。回帰分析や時系列モデルに多少の工夫を加え、それをAIのUIで包み直しているに過ぎないケースです。外装は最新でも、ボンネットの下に載っているのは「昔ながらのエンジン」であれば、その性能と限界もそのまま引き継がれます。
とりわけ因果の世界では、この「エンジンの古さ」がボトルネックになります。相関ベースの発想から抜け出せない、分布の歪みや裾の重さを正面から扱えない、介入や反事実を十分に表現できなければ、どれだけAIやクラウドを重ねても、根っこがここにある限り、「説明できた気になる」以上のことは難しいといえます。
この限界に対する解として位置づけられるのがDSA+DAGです。DSAは「まず分布構造を正面から解析する」ことを出発点にした5モジュール統合フレームワークで、正規・対数正規・Weibull・ガンマ・べき乗則・混合分布といった多様な分布を自動識別し、その上で最適なモデルを選びます。
そこにDAGベースの因果推論を組み合わせることで、「どの変数がどの変数をどのように生み出しているか」という構造的因果関係と、「もしこの介入を変えたら結果はどう変わるか」という介入・反事実レベルまで一貫して扱える、新しいタイプの因果AIエンジンとして設計されています。
さらにDSA+DAGは、ICH E9(R1) estimand framework 準拠・100%再現性・分布識別精度95.2%といった形で、医療統計・規制要件に耐えうる形で実装されており、単なる「便利ツール」ではなく、RWDをRWEに変換するための基盤エンジンとなる可能性があります。
ポイントは、「AIだから新しい」のではなく、このエンジン自体が従来と別物だということです。テクノロジーの進歩によって、ようやくこのレベルのモデリングが現実的な時間とコストで回すことが可能になり、その器としてAIやクラウドを使っているに過ぎません。
AI+ビッグデータの時代になったからDSA+DAGが“新たに必要になった”のではなく、本来ずっと必要だったが、実装する手段が追いついていなかった。今起きているのは、その「タイムラグの解消」です。
