最近、多くの業界でキャリア関連セミナーが急増しています。製薬業界も例外ではなく、「キャリア自律」「リスキリング」「副業」「市場価値」といったキーワードが並ぶセミナーを毎日のように目にします。
一見すると前向きな取り組みですが、その急拡大の背景には、ポジティブな成長意欲よりも “構造的な不安” が見え隠れしています。
まず、社会全体の不確実性がかつてないほど高まっています。市場のゼロサム化、AI・DXによる職種転換、大企業の早期退職制度の常態化、ジョブ型雇用の普及、、、
「会社がキャリアを守ってくれる時代ではない」という認識が広がり、個々人の不安が増幅しています。
製薬業界はその傾向が特に顕著です。MR職の大幅縮小、専門領域の偏り、デジタル化による職種変容、製品ライフサイクルの短期化などにより、「今のスキルが5年後も通用するのか」という不安が生まれやすい業界構造になっているからです。
そして、この不安の高まりを背景に、市場が大きく動いています。
それが 転職エージェントとマッチングビジネス です。
転職エージェントは、求職者が増えるほど売上が伸びるビジネスモデルです。また、企業と個人をつなぐ「マッチングプラットフォーム」は、登録者数と相談件数が増えることで価値が高まります。そのため、キャリアセミナーは「不安を解消する場」であると同時に、「不安を集客導線に変える場」という側面を持ちます。
多くのセミナーが一般論や自己啓発で終わり、業界構造の変化や専門スキルの方向性には踏み込まないのはこのためです。内容が薄いほど不安だけが残り、不安 → 相談 → 登録 → マッチング → 手数料という流れが強化される構造になっています。
もちろん、キャリアセミナーのすべてを否定する必要はありません。しかし、キャリアを本当に変えるのは「情報」ではなく「行動」です。特に製薬業界であれば、データ活用、診療報酬・制度理解、RWE/RWD、戦略構築、PMDA対応など、企業にとっての実務価値が高いスキルは明確です。
不安が市場をつくり、市場が不安を増幅する時代だからこそ、不安のスパイラルに落ちないためにも自分のキャリア価値を「不安」ではなく「構造」で理解することが何よりも重要です。
