働き方改革とコロナ禍により、在宅ワークとリモート化が進んでいます。

医薬品企業では情報提供チャネルを従来のMRによる訪問型からDXへの転換を進めています。

製薬企業しかり、知識集約型や資本集約型のビジネスではオフィスへ出社せずに在宅ワークが主流となり、オフィスを縮小/廃止することも珍しくありません。

では顧客である医療機関ではどうでしょうか?

医療機関は医師、看護師、その他スタッフの全てが労働集約型ビジネスのためリモートによる労働は不可能です。

つまり以前と変わらず同じ場所で働いているということです。

製薬企業が先を争ってコミュニケーションチャネルをデジタル化することは本当に有効な戦略プランだと言えるのでしょうか?

双方向型コミュニケーションである営業は市場創造に必要なコミュニケーションチャネルです。

顕在化していない市場/顧客を開拓するには対話による双方向型のコミュニケーションが欠かせません。

減少の一途を辿るMRですが、マーケティングのアプローチも変わっていくのでしょうか?

度重なる診療報酬の改定による減算の影響を受け、医療機関の経営は年々厳しくなっています。

医療機関数と利益率はどちらも減少しています。

医療機関のうち7割を占める医療法人ですが、やはり減少の兆しが見えてきました。

地域医療構想による機能分化にも対応していかなければなりません。

政府統計の総合窓口、e-Statを参照すれば地域の病院数および病床数とその種類を確認できますので担当地域の状況を見ておくと良いでしょう。

ポジショニング戦略とは、差別化などにより優位性を確立するために、想定する顧客から見た自社(製品)の位置づけを明確にすることで顧客が具体的にイメージできるようにすることです。

マーケティングは需要をコントロールするための社会的・経済的プロセスであり、セグメト設定と適切なターゲット設定を行い、ターゲットの嗜好性、興味・関心や行動を理解した上で、ニーズに合った商品・サービスを提供する必要があります。

そもそもターゲティングはなぜ必要なのでしょうか? 

それは80%の売上を全体のわずか20%から得ているとの法則があるからです。

あなたのビジネスプランでは具体的な対象顧客が想起出来ているでしょうか?

機能しないKPI設定についてお話ししてきましたが、良い事例があったので共有します。

「ワクチン対応が後手に回っている」との批判で尻に火が付いたのか、岸田文雄首相が新型コロナウイルスの3回目ワクチン接種について、1日100万回にすると目標を掲げました。

さて、1日100万回の接種はKGIでしょうか?

それともKPIでしょうか?

目的、ゴール、目標およびKGI、KSF、KPIの設定がでたらめだと計画は進みません。

単なる数値目標ではなく、目的、ゴール、目標およびKGI、KSF、KPIのセットで設定する必要があります。

KPIを業務目標にしても機能しません。

実行状況をPDCAでトラッキングしても、現在のように市場変化が大きなビジネス環境では変化に対応することは困難です。

変化に対応するためには測定と分析による改善が必要です。

顧客の行動変容フェーズを定量的に把握し、フェーズに応じたKPIを設定しましょう。

KPIの量は外部環境、すなわち市場/顧客と競合の影響を受けます。

ですので本来はこちらの事情で決められるものではなく、決めたとしても状況変化に応じて柔軟で俊敏に変化させる必要があります。

しかしその変化する指標を固定し、かつ評価に用いれば少なくてもダメですが多くても評価されず、外部環境変化に応じて柔軟に対応することは評価につながるどころか逆になる可能性があります。

評価されないのであれば必要があっても対応しないという方も出てきても不思議ではありませんね。

私のように数字を拠り所に仕事をする人間にとって、数字はファクトでありエビデンスです。

しかしその数字がミスリードを誘うこともあります。

昨今の過剰ともいえるコロナ報道を見ていると数字の意味するところの理解が追い付かず混乱することがあります。

例えば連日、感染者数(陽性者数)を前同日比や前同曜日比など普段あまり使わない指標を用いて実数報告したと思えば、病床については利用率と%で表示したりしています。

%だけでは絶対数が分からないため大小の判断が出来ません。

気になったので全国の都道府県別に一般病床数とコロナ病床数を比較してみました。

私は医療法人の顧問もさせていただいており、その病院ではコロナ病床数は2床持っています。

つまり1人入院すれば50%の利用率となるわけです。

病院経営において空床率は収益性に大きく影響します。

アパート経営の空室と同じで空床では利益が出せません。

病床稼働率が85%を下回れば完全に赤字です。

病床コントロールを行って90%以上を維持したいところです。

一般病床数とコロナ病床数を比較したところ、コロナ病床数は一般病床数に対して4%前後と限られています。

2類から5類への変更が議論されますが、一般病床に受け入れが可能になれば理論上は受け入れには余力がありそうです。

同じ定量情報であっても絶対数を用いたり、割合を用いたりする際は何を目的としているのか注意して用いるようにしましょう。

顧客の行動変容を促すには、顧客個々人が主体となる目標の欲求充足などミクロ的視点が必要です。

ミクロ的視点は本社によるワンオペレーションでは難しく、顧客に対面する営業部門にあります。

では顧客の行動変容を促すための活動内容および量は誰が決めるべきでしょうか?

やはり顧客に直接対面する営業部門が設定すべきでしょう。