麻疹の流行により、ワクチン接種を希望する人が増えており、供給が間に合わないようです。今やワクチンは製薬企業の世界戦略です。なぜ、製薬企業はワクチンに戦略をシフトするのでしょうか?

製薬企業にとって、ワクチンの開発と売上には治療薬と比較していくつかの特有のメリットがあります。例えば、ワクチンは、特定の感染症を予防するために広範囲の人口に接種されます。年間を通じて、または特定の季節やパンデミックの際に高い需要が見込まれるため、長期的に安定した売上を生み出す可能性があります。

定期的な接種が必要なもの(例えばインフルエンザワクチン)や、新たな変異株に対応するための更新が必要なものが多いです。これにより、一度市場に導入されたワクチンは、長期にわたって収益を生み出し続けることができます。

さらに、ワクチンの供給は公衆衛生の重要な部分を占めるため、政府や国際保健機関との大規模な契約を獲得する機会があります。これらの契約は、大量のワクチンを確実な市場で販売できるため、安定した収益源となり得ます。

ファイザー社とそのパートナーであるBioNTech社が開発したCOVID-19ワクチン(商標名: コミナティ)は、政府や国際機関との契約機会に関する顕著な事例です。このワクチンは、2020年末に世界で初めて広範な使用が承認されたCOVID-19ワクチンの一つであり、その後、世界中で広く使用されるようになりました。

ファイザー社は、世界中の多くの国々や地域、国際機関とCOVID-19ワクチンの供給契約を締結しました。これらの契約には、予め定義された数百万から数億回分のワクチン供給が含まれており、総額は数十億ドルに上ります。特に、アメリカ、欧州連合(EU)、日本などの国や地域が大量のワクチンを事前購入しました。

政府との協力も大きな要因です。例えば、アメリカ政府は「オペレーション・ワープ・スピード」の一環として、研究開発と製造の加速を支援し、ワクチンの大量生産と配布の準備に資金を提供しました。また、国際機関との連携では、ファイザー社のワクチンを含む複数のワクチンを、加盟国や途上国に公平に配分するための枠組みを提供しました。

ファイザー社にとって、これらの契約は莫大な収益をもたらしました。COVID-19ワクチンの売上は、2021年だけで数十億ドルに達しています。