なぜアメリカの癌死亡率は低く、女性は世界一、男性も上位をキープする長寿国の日本は世界的な癌大国なのか?早期発見・早期治療が病気の件数を増やすことに繋がる可能性を数理モデルで説明するために、以下のようなアプローチが考えられます。
1. 基本的な数理モデルの設定
以下の要因を考慮したモデルを構築します。
P:全体の人口数
I:病気の有病率(ある時点で病気を持つ人の割合)
D:診断率(早期発見プログラムによって診断される割合)
T:治療率(診断後に治療を受ける割合)
R:病気の自然治癒率または死亡率(治療を受けない場合)
S:治療成功率(治療によって病気が治る確率)
診断率 D が上がる(早期発見が進む)場合、以下のメカニズムが発生します。
2. 早期発見が病気件数を増やすメカニズム
早期発見によって表面化する病気の件数増加を次のように数理モデルで説明します。
(1) サイレントケースの掘り起こし
病気の中には症状が軽微で自然治癒するものや、患者が気づかずに放置されているケースがあります。早期発見により、これらの潜在的な病気のケースが診断され、統計上の「病気件数」に加算されます。
数式的には、新規診断件数 Cは以下で表されます:
C = P・D・I
診断率 D が増えることで、新規診断件数 C が増加します。
(2) 疾患の経過の長期化
早期発見により、従来は症状が顕在化してから診断されていた病気が、より早い段階で診断されるため、以下のような現象が起きます。
- 患者が「病気を抱える期間」が長くなる。
- 統計上、ある時点で病気を持っている人 Iが増える。
例えば、病気の進行にかかる平均期間を Lとした場合、治療に成功しない場合の病気を持っている人の数は以下で推定されます:
I = C⋅L
診断件数 Cが増加することで、有病率 I も増加します。
(3) 再発や関連疾患の増加
早期治療が必ずしも完全に病気を根治するわけではありません。一部の治療は、以下のような要因で病気の件数を増やす可能性があります。
- 治療後の再発率 Rr が存在する場合、以下のように再発件数が計算されます:
C再発 = C⋅(1−S)⋅Rr
- また、治療の過程で関連疾患や合併症が生じることも考えられます。
3. 具体的なモデルのシミュレーション
実際に早期発見・早期治療による影響をシミュレーションで検証する場合、以下のパラメータを設定します:
- 診断率 D の変化:早期発見プログラム導入前後で D を変化させる。
- 治療成功率 S:治療の効果が高い場合と低い場合のシナリオを比較。
- 再発率 Rr :治療後の再発率を変化させる。
シミュレーションでは、診断率 D が増加すると、最初は早期発見による件数増加が統計上大きく現れることが確認できます。また、長期的には治療成功率や再発率の影響がより大きくなり、病気の件数増加に寄与することも見えてきます。
4. 結論
早期発見・早期治療が病気件数を増やす理由は、以下のように数理モデルで説明できます:
- 潜在的な病気ケースの掘り起こしにより診断件数が増加。
- 病気の診断タイミングが早まることで統計上の有病期間が長くなり、有病率が上昇。
- 再発や関連疾患による病気件数の増加。
これらの要因を定量的に示すことで、早期発見・早期治療が持つ潜在的なリスクも含めた理解が促進されます。