本社施策と営業担当者の実行性の間にコンフリクトが起きることがあります。

それは両者のアプローチの違いにあります。

本社施策は定量データを基にした客観的なアプローチであるのに対して、営業担当者は個人の判断を基にした主観的なアプローチ方法です。

特にマーケターと営業担当者の間で顧客認識が異なることは珍しくありません。

直接顧客と接する営業担当者は観察により顧客を認識し、無意識のうちに顧客に合うアプローチをしています。

すなわち経験や勘といった言語化が難しい主観的な知識である暗黙知です。

効果的な施策を立案し、それを確実に実行するには、営業担当者の無意識の顧客アプローチを言葉や数式などの論理的構造で説明できる形式知に変換して、組織全体の共通認識にしなければなりません。

とはいえアプローチ方法が異なっていても同じビジネスゴールに向かう仲間が妥協点を見いだせず、相反してしまうのはなぜでしょうか?

それは戦略の欠如にあります。

「戦略」とは目的を実現するための方向性となる指針であり、皆が同じ方向に進むためのナビゲーションの役割です。

医薬品ビジネスは競争環境の非常に厳しいレッドオーシャンマーケットです。

適応症や公定価格が定められ、処方箋が不可欠であることからマーケティングアプローチは極めて限局的で限定的です。

さらに様々な法的な保護や規制はコモディティ化を招き、公的ガイドラインにより情報提供活動が規制されることから差別化が機能しません。

また不特定多数の潜在顧客から受注確率の高い顧客を抽出するマスマーケティンとは異なり、予め定められた処方意思の高い顧客と低い顧客か混在したターゲットマーケティングのため個別最適化が求められます。

そのため、マーケティングの上位概念である戦略が非常に重要になります。

戦略の無いマーケティングプランは砂上の楼閣のようなものです。

特に景気後退や社会保障費抑制などにより市場が縮小に向かう現在では、それまでのレース型競争市場からゲーム型競争市場へと転換しています。

それまでは市場の拡大に乗じて市場に参入する皆で市場を分け合うことが出来たのに対して、ゲーム型競争市場では誰かが市場を獲得すれば誰かが市場を奪われるゼロサムゲームです。

マーケティングの主たる目的である差別化により、競合に対して優越性を得ることが困難な競争環境下では、競合を上回る戦力量を投下することで優越性を得るしかありません。

限られた経営資源を効果的に投下するための戦略プランが必要です。

戦略プランは7割程度の客観性を保ちながら、営業担当者との対話を通じて全体感と納得性のある意思決定を行います。

意思決定のプロセスが標準化されることで再現性が格段に高くなります。

マトリクス分析法は、データに基づいた顧客ターゲティングとその優先順位付けによるベンチマークとしての機能を果たし、営業現場との全体感と納得性のある戦略プランニングの手段として優れています。