プライマリー領域全盛期に活動の中心だった、伝統的な営業マーケティングの代表SOV(シェア・オブ・ボイス)からの脱却を標榜して久しい医薬品業界ですが現状はどうでしょうか。
売上向上のためのディテーリング数や説明会回数をKPIとし、MRの評価基準とされていました。
生活習慣病治療薬の王道のマーケティングとして、多くのMRによる医師への高頻度のコールやディテールのために製薬企業の営業マーケティングコストの大半が費やされました。
SOVが活用されてきた理由は、ディテーリング数と売上の間には相関があるとみられたからです。
根拠として有名なところでは皆さんもご存知の「ザイアンス(ザイオンス)効果」または「単純接触効果」と呼ばれる研究結果です。
しかしディテーリング数と売上に「相関関係」があることと「因果関係」は全く別物です。
現状の面会回数やメールの送信数など回数を追うKPIはSOVとそのお品書きが変わっただけのように見えます。
そしてSOVを含むKPIの課題は、評価項目としてトラッキングされることで、会っていない医師にディテーリングしたとMRが入力する「不適切な日報入力」の可能性があるところです。
虚偽の報告の可能性がある指標はもはや指標としての役割を果たしていません。
正確な数値が把握できなければ進捗の確認や効果の評価が出来なくなります。
また手段が目的化してしまうことで、顧客の治療方針や処方傾向など自社製品のポジションを把握すること、すなわちKRIとなる顧客の行動変容をトラッキング出来なくなります。
SOVは市場が拡大する高度成長期のマーケティング、つまり大量生産/大量消費の時代には非常に有効ですが、現在のように市場が縮小する成熟期から衰退期のフェーズにはあまり適していません。
とはいえSOVはさまざまなマーケティングチャネル上で競合と比較することができる重要な指標です。
手段と目的を間違えないようにしましょう。