マーケティングの基本戦略策定フレームワークのPPM分析のことは皆さんご存知だと思います。

PPM分析とは、「市場成長率」と「市場占有率(マーケットシェア)」の2軸からなる座標を基に、経営資源の投資配分を判断するための方法です。

花形(Star)、金のなる木(Cash Cow)、問題児(Problem Child)、負け犬(Dog)の四象限の図は有名です。

PPMにおいても市場シェアの理論が使われています。

PPMの横軸は「相対市場シェア」をとります。

つまり市場内において1位かそうでないかを分類しているわけです。

シェアが1位と2位以下では、市場内における競争優位性が全く異なります。

競争市場には必ず競合が存在します。

勝つための理論とプロセスが必要です。

自社の戦略プランは常に外部環境によって決まります。

まず全体市場を分析して、特定市場を分析し、戦略プランを策定します。

戦略プランで重要なポイントは「必ず勝つ、絶対に負けない」ことです。

「必ず勝つ、絶対に負けない」と確信が持てるまで市場細分化を繰り返します。

早いものでコロナ禍のMR活動も3年目に突入しました。

オンラインとオフラインによる情報提供のあり方を模索しつつ、依然として過渡期にはありますが少しずつ環境変化は起きているようです。

ミクスオンライン記事に、顧客の消費行動モデルであるAMTULの法則のフェーズごとの顧客が求める情報提供チャネルの投稿がありました。

デジタルチャネルとMRを介する情報提供における各フェーズごとの割合です。

対面が制限される環境であるため直接的な比較は性急ですが、2つのチャネルの特性を生かしたハイブリット型の情報提供が求められているようです。

プライマリー領域全盛期に活動の中心だった、伝統的な営業マーケティングの代表SOV(シェア・オブ・ボイス)からの脱却を標榜して久しい医薬品業界ですが現状はどうでしょうか。

売上向上のためのディテーリング数や説明会回数をKPIとし、MRの評価基準とされていました。

生活習慣病治療薬の王道のマーケティングとして、多くのMRによる医師への高頻度のコールやディテールのために製薬企業の営業マーケティングコストの大半が費やされました。

SOVが活用されてきた理由は、ディテーリング数と売上の間には相関があるとみられたからです。

根拠として有名なところでは皆さんもご存知の「ザイアンス(ザイオンス)効果」または「単純接触効果」と呼ばれる研究結果です。

しかしディテーリング数と売上に「相関関係」があることと「因果関係」は全く別物です。

現状の面会回数やメールの送信数など回数を追うKPIはSOVとそのお品書きが変わっただけのように見えます。

そしてSOVを含むKPIの課題は、評価項目としてトラッキングされることで、会っていない医師にディテーリングしたとMRが入力する「不適切な日報入力」の可能性があるところです。

虚偽の報告の可能性がある指標はもはや指標としての役割を果たしていません。

正確な数値が把握できなければ進捗の確認や効果の評価が出来なくなります。

また手段が目的化してしまうことで、顧客の治療方針や処方傾向など自社製品のポジションを把握すること、すなわちKRIとなる顧客の行動変容をトラッキング出来なくなります。

SOVは市場が拡大する高度成長期のマーケティング、つまり大量生産/大量消費の時代には非常に有効ですが、現在のように市場が縮小する成熟期から衰退期のフェーズにはあまり適していません。

とはいえSOVはさまざまなマーケティングチャネル上で競合と比較することができる重要な指標です。

手段と目的を間違えないようにしましょう。

皆さんは受発注データを活用していますか?

受発注データの代表はIQVIA社が提供するDDDです。

殆どの製薬企業が購入していると思います。

DDDを見れば顧客ごとの自社および競合の売上状況が分かります。

つまりお互いの状況が丸裸だということです。

これって良い面もあれば恐い面もありますよね。

普通の業界ならばアンケート調査やローラー調査をしなければ得られない、またアンケート結果など定性情報しか得られないのが通常です。

さらに顧客、競合、自社の3Cです。

活用するだけではなく使い倒さないと勿体ないですよ。

皆さんは活動計画を立てていますか?

私がMRだった頃は半年に一回、活動計画を書かされていました。

正直すごく苦手でしたね。

活動のデフォルトになっている説明会や講演会を実施させてもらえる顧客はいいんですが、そうではない顧客にはこれといって書くこともなく、定期訪問などといったこれもまた意味もないような事でマスを埋めてお茶を濁していました。

そもそも説明会や講演会をさせて貰える顧客でも、それが何かを達成するための手段だと明確な目的を持っているかといえばそうでもありません。

活動計画書のマスを埋めるのと同様に日々の勤務時間を埋めていただけかもしれません。

お品書きを売上を達成するための明確な手段にするために12のマトリクスを活用しましょう。

ランチェスターの法則では「武器の性能が同じであれば、兵力数に勝る方が勝つ」とされています。

戦略策定においては「必ず勝つ、絶対に負けない」ことが重要なポイントです。

様々な法規制や薬価制度、学会の治療指針やガイドラインなどの制約が多い医薬品ビジネスでは、製品やサービスによる差別化が非常に難しく、全てが相対的価値として比較されます。

消費財マーケティングであれば、競合が不在、つまり対抗する兵力数がゼロの状況で戦うことを目指すことも出来ます。

しかし医薬品ビジネスにおいては、適応症に限定した使用と医師による処方箋の必要性、薬価制度やガイドラインなどによる、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの選択に制限があります。

すなわち極めて限局的な市場における同一化した競合と市場を奪い合う、究極のレッドオーシャンマーケティングです。

市場が拡大する成長期であれば、勝者になれなくとも敗者になることもありませんでした。

いわゆる、好況期・成長期における順位を競うレース型の経済です。

しかし昨今のビジネス環境は、不況期・成熟期における勝ち負けを競うゲーム型経済の時代です。

特殊性を理解した戦略プランニング手法の必要があります。

まずは市場状況の概要を把握するためにクラス別のシェア類型を確認してみましょう。

既に治療方針や処方傾向が固まっている市場のようです。

これらを覆すにはよほどのインパクトを持ったブロックバスター製品でも無ければ不可能でしょう。

市場参入期の戦略プランニング④でご紹介したアンメットメディカルニーズの潜在市場を開拓するか、競合が投入する経営資源を減らす中で、製品ではなくサービスなどソフト面での戦略プランを検討します。

競合対策として、強者に対する差別化は難しい状況です。

必ず勝てる相手を見つけ、市場を削り取りながらシェアを拡大するしかありません。

クラス別の後に製品毎の分析を行い攻撃目標と競争目標を決定します。

自社製品の戦略プランは必ず、市場/顧客と競合による外部環境の影響を絶え間なく受けています。

外部環境の影響を考慮して戦略を決定しなければなりません。

選択が可能な戦略プランも自ずと決まります。

No,1を目指す主戦場はどこでしょうか?

疾患の治療薬全体市場でしょうか?

それとも同じ作用機序を持つクラスにおけるNo,1でしょうか?

いずれにしてもNo,1を目指す市場の現在のシェア類型を確認してみましょう。

まだ治療方針や処方傾向が定まっていないのか、既に市場での薬剤選択が確立しているのか。

それぞれの状況によっては取るべき戦略プランは大きく異なってきます。

新規参入する自社製品は弱者どころか認知すらされていない可能性があります。

戦略とは「必ず勝つ、絶対に負けない」ことが絶対条件です。