データ駆動型の意思決定プロセスには、市場の動向を予測するために二つの主要なアプローチがあります。1つは、過去のデータを基にして市場の中長期的な動向を予測する純粋推論的アプローチ、そしてもう一つは、実際の結果を基にして市場の短期的な動きを理解する逆推移論的アプローチです。

現代は変動性、不確実性、複雑性、曖昧さの特徴を持つ予測困難なVUCAの時代であり、過去のデータに基づく予測は不確実性が高くなります。さらに、ビッグデータの収集と分析には時間がかかるために、迅速な対応が求められる今日のビジネス環境においては、スピード感に劣るという課題があります。

加えて、人口減少や景気後退により市場が縮小している現在のビジネス環境では、ビジネスの競争形態がレース型からゲーム型へと変化し、競争はより一層厳しいゼロサムゲームの様相を呈しています。このような競争環境の中で、競合他社に対する遅れは、市場における致命的な結果をもたらす恐れがあります。

営業部門と本社部門のアプローチの違いは、特に重要です。営業部門は顧客を直接観察することで、顧客のニーズに対し定性的に迅速に対応できます。一方で、本社部門は分析を通じて顧客像を定量的に把握し、月単位や四半期単位で計画を立てるため、反応速度に差が出る場合があります。具体的な倍率で示すのは難しいものの、営業部門が本社部門に比べて数倍から十倍程度迅速に対応していると感じることがあるでしょう。

さらに、市場が成長期にある時は、企業は広範な市場に焦点を当てることが可能ですが、市場が縮小期に入ると、企業はより特定のセグメントやターゲットに焦点を絞る必要が出てきます。この時期には、市場開拓型のアプローチよりも、既存の市場のニーズに迅速に対応する市場対応型のアプローチが求められます。そのためには、企業は顧客の具体的なニーズに応えることで、より狭い市場範囲内で競争の優位性を確立する必要があります。

データ駆動型意思決定は、VUCA時代のビジネス環境において、戦略的な意思決定を行うための重要な手段です。市場の縮小期においては、企業は定量的なデータ分析と定性的な直感のバランスを取りながら、セグメントとターゲットを絞り込み、市場対応型のアプローチを取ることで、柔軟で俊敏な対応が可能になり、競争市場での優位性を得ることが出来るでしょう。