予測不能で変化のスピードが速いVUCAの時代では、企業は急速に変化する環境に適応し続けなければなりません。観察により定性的に顧客を認識し、無意識のうちに顧客に合せる営業部門と、分析により定量的に顧客像を認識する本社部門とでは、そのスピード感の違いはより大きなものになります。

営業部門は直接顧客と接触し、顧客のニーズや反応をリアルタイムで捉えることが可能です。そのため、変化する市場の状況や顧客の要求に迅速に対応する能力があります。

一方で、本社部門では、市場調査やデータ分析を通じて顧客像を定量的に把握します。このプロセスは時間がかかる場合があり、データの収集、分析、そして戦略立案には綿密な作業が必要です。

そのため、営業部門と本社部門のアプローチの違いは、反応のスピード感に大きな違いを生じさせます。営業部門は「現場の声」に基づいて迅速に行動を起こせる一方で、本社部門は「大局的な視点」からのアクションが必要であり、それは時間を要することがあります。この違いは、特にVUCAのような不確実性が高い環境では、さらに顕著になると言えるでしょう。

そのため、営業部門では本社部門の指示を待たず、自ら意思決定を行うことを求められます。営業部門はしばしば「日単位」または「週単位」で動くことができますが、本社部門は「月単位」または「四半期単位」で動くことが一般的です。この違いを「倍率」で表すことは抽象的ですが、感覚的には営業部門の方が本社部門に比べて数倍から十倍程度の違いを感じるかもしれません。

① 短期での分析サイクルで柔軟な戦略修正を行う
中長期的な予測に頼る代わりに、短期での分析サイクルを用いることで、営業部門は迅速に市場の変化に対応し、戦略を修正することができます。これにより、リアルタイムでのデータを基にした意思決定が可能となり、変動性や不確実性が高い状況下でも、柔軟性と敏捷性を保つことができます。短期間での戦略の調整は、変化に対する応答速度を高め、市場の機会を捉える能力を強化します。

② 結果からの逆推論的アプローチで迅速な意思決定を行う
データの蓄積を待たずに、既存の結果から逆推論的にアプローチすることは、不確実性を管理し、迅速な意思決定を促進するための重要な戦略です。この手法では、結果を分析することで、さらなる戦略的方向性を定め、迅速に市場の変化に適応し、リスクを最小限に抑えながら、新たな機会を探求することが可能となります。

③ 形式知と暗黙知のクロストークによる、継続的な競争優位を確保する
形式知(明示的に文書化された知識)と暗黙知(経験や直感に基づく非公式な知識)の組み合わせは、VUCAの時代における競争優位の確保に非常に効果的です。形式知と暗黙知のクロストークを促進することで、営業部門は継続的な学習と革新のプロセスを構築できます。このアプローチにより、チームは経験から得られる洞察を共有し、その知識を戦略的な意思決定に活用することができます。このようにして、持続可能な競争優位を構築することが可能となります。

VUCAの時代において、組織は絶えず変化するビジネス環境に適応し、長期的な成功を確保する必要があるでしょう。