「平均」と「有意差」は、統計に触れた人なら誰でもが耳にするお馴染みの概念です。多くのデータが平均値を中心に左右対称の山を形成する「正規分布」は、私たちが当たり前のように受け入れている世界の姿です。

「結局、そんなに大差はない」というこの「正規分布的な世界観」は、どこか安心感を与えてくれます。しかし、社会の現実を冷静に見つめると、この常識はもはや通用しません。


一握りの勝者が全てを握る「べき乗分布」の世界

私たちが生きる現代は、もはや正規分布で説明できる世界ではありません。GAFAのようなごく一部の企業が市場の大部分を独占し、トップ1%が富の大半を握る。SNSのフォロワー数やYouTubeの再生回数も、一部のインフルエンサーに集中しています。これは、勝者が全てを総取りする「べき乗分布(Power-law distribution)」が支配する世界です。

正規分布が「どんぐりの背比べ」を表現するのに対し、べき乗分布は「一強多敗」の構造です。しかし、私たちは無意識のうちに、正規分布というレンズを通して現実を見させられてしまっています。


「正規分布」は格差を覆い隠す装置か?

なぜ、現実と異なる正規分布が「ゴールデンスタンダード」として扱われ続けるのでしょうか。そこには、ある種の「作為」が隠されているかもしれません。

正規分布は、極端に成功した「超強者」や、声を上げられない「マイノリティ」を「外れ値」として扱います。つまり、社会の支配構造を形成する存在を、最初から「例外」として見えなくしてしまうのです。これにより、本来存在するはずの大きな格差や不平等が覆い隠され、あたかも「皆が平均的な生活を送っている」かのような幻想が生まれます。

この「幻想」を維持するために、研究や分析では、本来正規分布に従わないデータを無理やり層別化して正規分布に当てはめたり、都合の良い結果が出るまで何度も分析を繰り返す「pハッキング」が横行しています。これは統計学的な健全性を損なうだけでなく、現実の歪みをさらに助長する行為に他なりません。


視点を変え、ビジネスの勝機を見出せ

今、企業に求められているのは、この「平均と有意差」の呪縛から解き放たれることです。

自社のデータが本当に正規分布に従っているのか?顧客の行動、製品の売上、従業員のパフォーマンス…これらが「平均」で語れるものなのか、それとも「一握りのスター」に支えられているのかを、分布の形そのものから問い直す視点を持つべきです。

正規分布の「平均」にとらわれず、べき乗分布が示す「勝者総取り」の現実を直視すること。そこにこそ、これからのビジネス戦略の勝敗を分けるヒントが隠されているはずです。

例えば、SNSマーケティングを考える際、フォロワー数やエンゲージメントの平均値に一喜一憂するのではなく、ごく少数の「超インフルエンサー」がどのように影響力を拡大しているのか、その「べき乗」のメカニズムを解明し、戦略に組み込むことが重要です。

データ分析の常識を疑い、真の分布を見抜くこと。それが、新たな成長の扉を開く鍵となるでしょう。

これまでの社会やビジネスにおける科学的探求の中心は、集団間の「比較」に大きく依存してきました。平均値や分散を基準に、マジョリティ(多数派)の特徴を捉える統計手法です。効率的に大勢を理解し、品質管理やマーケティングの進化を支えてきたのは間違いありません。

しかし一方で、平均から大きく外れた存在、いわゆる「外れ値」はどう扱われてきたでしょうか。従来はノイズや例外として排除され、意思決定から切り捨てられることが常態でした。

ところが今、多様性を尊重する社会の潮流、すなわち Diversity 、そして Inclusion まで深化させる観点から状況は変わりつつあります。
医療の現場では「平均的な患者」ではなく「この一人の患者」を対象にするIndividualization(個別化) が進んでいます。特定の遺伝子変異を持つ患者にのみ劇的に効く薬は、従来なら外れ値として無視されていた存在です。ところが今では、治療法のブレークスルーを生む「鍵」として注目されています。

これは医療に限りません。ビジネス、教育、金融といったあらゆる分野において、マジョリティに向けた画一的アプローチは限界を迎えています。多様な才能やリスクに応える Individualization が、新しい価値創出の源泉となりつつあるのです。

私たちが提唱する「分布構造分析(DSA)」は、こうした時代の要請に応える方法論です。データを平均化してマジョリティに近づけるのではなく、本来の分布構造を尊重し、個々のデータの位置づけを定量化します。従来の外れ値は「構造的特異点」として再評価され、そこから新しい可能性を見いだすことができます。

いま求められているのは、「比較」によるマジョリティの理解から一歩進んだ「構造の理解」です。
外れ値を切り捨てるのではなく、多様性と個別性を新しい競争力の源泉として取り込む。これこそが、Diversity & Inclusion の時代におけるIndividualization戦略における思考の核心ではないでしょうか。

皆さまは「2025年問題」を覚えていますか?私はすっかり忘れて、気がつけば2025年もすでに半分以上が経過していました。

「2025年問題」とは、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、日本社会の高齢化が一気に加速する節目を指します。医療や介護の需要が爆発的に増え、財政や人材の不足が深刻化することは、十年以上も前から警鐘を鳴らされてきました。同時に、経済産業省が「2025年の崖」と呼んだDXの遅れも、同じ時期に社会全体を揺るがす課題として示されました。

先の選挙で争点となった「外国人労働者受け入れ」や「DX推進」は、そもそもこの2025年問題に端を発していたはずなのに、いつしか目的が忘れられ、手段だけが独り歩きしている印象を受けます。

例えば、介護現場の人手不足は予測通り顕在化しました。すでに全国で特定技能や技能実習制度を活用して外国人スタッフが働いていますが、受け入れ体制の整備や地域住民との共生は道半ばです。単に「人を増やす」ことが目的化してしまい、「どうすれば介護サービスの質を守り、持続可能な制度を構築できるか」という本来の議論は置き去りになりつつあります。

また、DXも同様です。2025年の崖を回避するためと銘打ち、AIやクラウド導入が進みましたが、現場からは「新しいシステムが複雑で使いこなせない」「結局紙と併用で二重業務が増えた」といった声が少なくありません。デジタル化のためのデジタル化に陥り、「何のために業務を変えるのか」という原点が見失われがちです。

想定された2025年問題は、確実に現実のものとなっています。高齢化は待ったなしで進み、社会保障費は膨張し続けています。医療現場では診療報酬改定が繰り返され、介護施設は人材確保に悲鳴を上げ、企業はレガシーシステムの維持に追われています。

では今後の日本はどうなっていくのでしょうか。重要なのは「手段」ではなく「目的」を取り戻すことです。そこに立ち返らない限り、制度や仕組みは形骸化し、持続可能性を失ってしまいます。

2025年を迎えたいま改めて、「なぜそれをやるのか」を問い直すことが、日本の未来を切り拓く第一歩なのではないでしょうか。

「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を利用する」という言葉があるそうです。実際、数字そのものはただの事実である一方で、解釈や使い方によって、事実が歪められてしまうことがあります。

以前勤めていた会社で新しい分析手法を提案した際、副社長から「数字は一人歩きするから」と言われて却下されたことがあります。その時は、心の中で「歩かせているのは人間の解釈ではないか」と思ったのを思い出しました。つまり分析する人次第。

私は、数字が持つ美しい整合性や、誰が計算しても同じ結果を示す再現性が好きです。だからこそ、数字を基盤にした分析は、本来、物事の本質に迫る力を持っていると思っています。

その時の副社長の言葉がずっと残っていたことが、複数のアルゴリズムを開発し特許取得につながったのかもしれません。

この「数字の独り歩き」という現象には、仮説検証型のアプローチに課題があるのかもしれません。仮説検証は本来「仮説を数字で確かめ、修正する」ためのものですが、現場では「仮説を数字で正当化する」方向に流れてしまいがちです。その結果、数字は検証の道具ではなく、証明の道具となり、あたかも勝手に歩き出したように見えてしまいます。

現在、開発中のデータ分析の手法は、仮説に縛られず、データ全体の構造そのものを捉えるものです。データ全体の分布や偏り、構造的な特徴を客観的に可視化することで、数字を都合よく切り取ることなく、本来の姿に迫ることができます。

数字は嘘をつきません。しかし私たちが扱い方を誤れば、簡単に独り歩きしてしまいます。だからこそ、数字の持つ、整合性と再現性による、データ全体を正しく読み解く仕組みをつくることが重要ですね。

「データ駆動型意思決定」と聞くと、多くの人は経験や感覚ではなく、「データに基づいて判断することだろう」だとイメージするでしょう。たしかにその通りですが、実際に データをどう使い、どう意思決定に落とし込むか を説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。
ここでは、ビジネスのプロセスを医療行為になぞらえて整理してみます。


1. 検査=データの収集

病気を疑ったとき、まず行うのは血液検査や画像診断です。これと同じく、ビジネスにおける第一歩は 現状を把握するためのデータ収集 です。
売上や顧客属性だけでなく、競合動向や市場の変化といった外部データも組み合わせることで、はじめて全体像が見えてきます。検査が不十分なら診断を誤るように、データの収集が偏れば意思決定の精度は下がります。


2. 診断=データ分析

検査結果をどう読み解くかが医師の腕の見せ所であるように、ビジネスでは データ分析 が次のステップです。
単なる平均値や前年比だけでなく、分布や相関関係、因果関係を探ることで「なぜ売上が伸びないのか」「どの顧客層に潜在的な伸びがあるのか」といった診断が可能になります。
分析をせずに「なんとなく調子が悪そうだから売上対策を」と言うのは、症状だけ見て「たぶん風邪でしょう」と片付けるのと同じです。


3. 処方=計画の立案

診断がついたら、医師は薬を処方します。ビジネスにおいては 具体的な計画の立案 にあたります。
「重点顧客をこのセグメントに絞る」「広告費をこのチャネルに再配分する」といった戦略的意思決定がここで下されます。診断結果に基づいた処方でなければ、効果は限定的ですし、むしろ副作用(リソースの浪費)を招きかねません。


4. 治療=実行とフィードバック

処方された薬を服用し、経過を観察するのが治療です。ビジネスでは、計画を実行し、効果をモニタリングすること に相当します。
数値の変化を定期的に追い、思った効果が出なければ処方を変える。まさに医療における「治療計画の修正」と同じです。このフィードバックの有無が、データ駆動型意思決定と単なる思いつきの施策を分ける決定的なポイントです。


おわりに

「データ駆動型意思決定」とは、単にデータを見て判断することではなく、

  • 検査=データの収集
  • 診断=分析と洞察
  • 処方=計画の立案
  • 治療=実行とフィードバック

というプロセス全体を通じて、データを意思決定の論理的基盤に組み込む営みです。
経験や勘も大切ですが、それを「根拠ある診療」に昇華させるのがデータの役割だと考えると、その本質がよりクリアに見えてくるのではないでしょうか。

負け惜しみか、反論か?

私は、中小企業診断士が審査を担当する、シード〜アーリーステージの事業アイデアやプランを支援する公募に「独自に開発した分析手法」を応募したのですが、結果は不採択。自信があっただけに非常に残念でした。

講評では「数値を見える化するだけでは不十分で、解釈や改善支援まで含まなければ中小企業には活用できない」という指摘がありました。


違和感の正体

一見もっともらしい意見に聞こえますが、私は、そこに大きな違和感を覚えました。
なぜなら「数値を見える化=診断」に相当する部分を軽視し、いきなり「改善策を与えること」を求めているからです。

診断を抜きにした改善策は、偶然当たることはあっても、持続的な成果にはつながりません。
それでもなお、短期的に分かりやすい「処方」や「伴走支援」が優先される傾向が強い。
この視点の偏りこそが、現在の支援の限界だと感じました。

実際、私の提案は分析手法にとどまらず、そこから解釈や改善支援につながる戦略的意思決定を支援するものです。


新しい分析手法が評価されにくい理由

私が開発した分析手法は、企業が自ら市場を診断し、戦略を立て、意思決定を自立的に行うための仕組みです。
しかし「解釈や改善まで含めてこそ支援だ」という審査の視点からすれば、これは“未完成”に映ったのかもしれません。

つまり、短期的な伴走支援を評価する枠組みの中では、長期的に企業の自立を支える仕組みは価値を正しく評価されにくいのだと感じました。


不採択が示したもの

今回の不採択は悔しい経験でしたが、同時に重要な気づきでもありました。
それは、既存の公募や審査制度が「診断に基づく自立的な意思決定の力」を正しく評価する仕組みになっていないということです。

正しく評価するためのは、マーケティング知識だけではなく、アナリティクスとエンジニアリングの知識が求められています。

外部環境の変化が激しく、予測が効かない時代にこそ、本当に必要なのは「改善策を与える支援」ではなく、自ら診断し戦略を描ける仕組みです。
そこにこそ、私の取り組む新しい分析手法の存在意義があるのだと改めて実感しました。

·  評価された点

  • 業界、企業規模を問わず応用可能な高度な分析ツール。
  • 市場の裾野が広がればビジネスチャンスが増える。
  • 経営コンサルタント業界を主要顧客にする可能性がある。

·  懸念・改善点

数値化(見える化)だけでなく、解釈支援や改善支援まで含めないと導入は難しい

中小企業が使いこなせるか不明

多業種へのサポート体制が不透明

私は戦略コンサルタントとして活動する中で、データ分析の重要性を痛感し、自ら分析ツールを開発するまでになりました。マーケティングに加え、アナリティクスとエンジニアリングの知識を身につけることで、検査、診断、問診、処方箋という一連のコンサルティングプロセスを一貫して提供できるようになります。

一方で周りを見渡すと、コンサルタントや中小企業診断士には大きく2つのタイプに分かれると感じています。

それが「薬局型コンサル」と「医師型コンサル」です。

薬局型コンサル

薬局型は、クライアントの要望や表面的な課題を聞き、すぐに解決策を提示します。

たとえば、「売上を伸ばしたい」なら営業支援、「新規顧客を獲得したい」ならマーケティング施策、「効率化したい」ならDX導入、といった具合です。

一見スピーディーですが、十分な検査や診断なしに薬を処方するのは、根本的な解決に至らず、一時的な対症療法に終わってしまいます。


医師型コンサル

一方、医師型はまず検査(データ収集)と診断(分析)を重視します。

現状の市場構造、競合との関係、自社の強みを正しく把握することから始め、その上で問診(経営者の意向や現場の事情)を行い、ようやく処方箋(戦略や施策)に至ります。


どちらが本当に必要か

短期的な課題解決であれば、薬局型でも効果は得られるでしょう。しかし、市場環境が縮小し、ゼロサムゲームへと向かう現代では、根拠のない解決策だけでは限界があります。

今、本当に求められているのは、正しい診断に基づいた自立的な意思決定です。医師型コンサルが行うのは、その診断力を通じて、クライアントが持続的に競争優位を築くための支援です。


まとめ

外部環境の変化が加速し、将来を予測するのがますます難しくなっています。だからこそ、変化に柔軟に対応できる「診断力」を備えた医師型コンサルが、これまで以上に必要とされているのではないでしょうか。

医療の世界では、検査・診断・治療のそれぞれ一連のプロセスが欠かせません。
検査は病気の有無や重症度を判断するための重要な基礎データを提供します。
しかし、そのデータをどう読み解き、最終的に診断として確定し、治療につなげるかは医師の判断に委ねられています。
検査結果を読み解き、病状を特定するのが診断です。
そして診断をもとに治療法を選び、さらに治療計画を立てて初めて成果につながります。


BIツールは「検査止まり」

従来のBIツールは、このうち検査にあたります。
膨大なデータをグラフや数値で提示することはできますが、そこから 何が問題かを診断し、どう治療(戦略)するかを決める ことまではできません。
言い換えれば、BIツールは「検査止まり」なのです。


分布構造分析とDXS Stratifyの違い

弊社の開発した分布構造分析と、その実装であるDXS Stratifyは、この流れを一貫して支えます。

  • 検査:データを収集し、数値化(見える化)する。
  • 診断:参入市場の妥当性や競争優位性を分析し、狙うべきセグメントを特定する。
  • 治療=処方:ターゲティングを決定し、どのように戦うかの方針を示す。
  • 治療計画=実行設計:必要なリソース量や配分を試算し、活動チャネルやKPIを設計する。

つまり、DXS Stratifyは「検査+診断+治療+治療計画」を一連でデータドリブンに実現できる仕組みです。


真にデータドリブンな意思決定へ

大切なのは、外部に依存して答えを与えられることではなく、企業自身が数値を基盤に 自ら診断し、処方を選び、実行計画を描けることです。

なぜそれが重要なのか。
それは、競争環境が常に変化し続けるからです。
外部の助言や一時的な改善策に頼っていては、環境の変化に即応できず、戦略はすぐに陳腐化してしまいます。
自ら診断して意思決定できる企業は、変化をチャンスに変え、持続的に競争優位を築くことができます。

DXS Stratifyはその自立支援を実現する、従来のBIツールとは一線を画すソリューションなのです。


まとめ

検査結果だけでは病気は治りません。
同じように、BIツールが提示するグラフや数値だけでは、戦略的な意思決定にはつながりません。
分布構造分析とDXS Stratifyは、検査で終わらせず、診断・処方・実行設計までをつなげることで、
企業の意思決定を真にデータドリブンなものへと変革していきます。

MR(医薬情報担当者)の営業力を「個人スキル」だけで評価するのは限界があります。特に製薬業界では、顧客基盤や市場の状況によって成果が大きく左右されるため、市場構造を考慮した指標の方が高い感度を得ることができます。


1. 個人スキル評価の限界

  • プレゼン能力や関係構築力は重要だが、測定が主観的になりやすい。
  • 担当エリアの市場規模や成長性が異なると、同じスキルでも成果が変わって見える。
  • 例えば、成長市場を担当するMRと縮小市場を担当するMRでは、成果の差がスキルを反映しているとは限らない。

2. 市場構造ベースの評価指標

次のような指標であれば、実際に競争優位や成長余地を数値化しやすく、成果に直結します。

  • 市場規模:そもそも拡大余地が大きいかどうか。
  • 市場成長率:成長市場ならアプローチの効果が出やすい。
  • 自社製品ロイヤルカスタマー数(率):安定的な売上基盤を示す。
  • 競合と拮抗する顧客数(率):勝敗が戦力量に左右されやすい「接戦領域」。
  • 競合ロイヤルカスタマー数(率):切り崩しが難しく、多くのリソースを必要とする。
  • 未取引顧客数(率):開拓ポテンシャルに時間がかかる。

3. 感度の高い理由

  • 相対評価が可能:同じMRの努力でも「市場の構造」によって成果が出やすい/出にくいがあるため、数値化で公平性が増す。
  • 戦略と直結:どの顧客層を重点ターゲットにすべきか、会社全体の資源配分とリンクする。
  • スキルとの掛け合わせ:個人スキルは「どう戦うか」、市場構造は「どこで戦うか」を示すため、両方を組み合わせることで本当の営業力を測れる。

4. 実務的なまとめ

  • 「スキル評価」=MRの行動特性(説明力、関係性、行動量など)。
  • 「市場構造評価」=担当市場のポテンシャルと難易度。
  • → この二軸を掛け合わせることで、MRの成果をより正確に位置づけられる。

  • 結論として、市場規模・成長率・ロイヤルカスタマー率などの市場構造指標は、MRの成果を評価するうえで個人スキル以上に感度が高いと考えられます。スキルは担当セグメント、専門医数などと相関するため、むしろ市場構造の中で「どれだけ成果を最大化できたか」を補正するために使うのが適切だと思います。


使ったことはなくても「回帰分析」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。営業活動の成果と訪問回数の関係や、広告費と売上の関係などを数値で示すことができる便利な道具です。Excelの標準的な機能でもあるので是非いじってみてください。標準的な手法ですが、しかしここに落とし穴があります。

回帰分析でわかるのは、あくまで「相関」、つまり一緒に動いているかどうかです。例えば「残業時間が長い社員は成果も高い」という結果が得られたとしても、それは「残業すれば成果が上がる」ことを意味しません。むしろ成果を上げる人ほど任される仕事が多く、残業が増えているだけかもしれません。これを疑似相関と言います。

このように、相関と因果を混同すると、誤った戦略や施策につながりかねません。
本当に知りたいのは「原因と結果」の関係、つまり「因果」です。これを明らかにするために必要なのが「因果推論(Causal Inference)」という考え方です。因果推論では、「もし施策をしなかったらどうなっていたか?」という“反実仮想”を想定し、その差分から施策の効果を測ります。医療の臨床試験や経済政策の評価などで広く活用されており、ビジネス領域でも人的資本経営やマーケティング施策の評価に欠かせない考え方となっています。

  • AとBに関連性ある
  • Aが原因となってBが起きる

とはいえ、回帰分析にも因果推論にも課題はあります。
前者は相関にとどまり、後者は設計やデータ条件によって結論が揺らぐことも少なくありません。現実のビジネスデータは常にきれいに整理されているわけではなく、多様な分布や偏りを含んでいます。こうした「データそのものの構造」を無視すると、いくら因果を追っても本質を見誤る可能性があるのです。

そこで私自身は、データの“分布”そのものを見極めることで構造的な優位性や弱点を浮かび上がらせる「分布構造分析」という手法を開発しています。これは、相関や因果では見落とされがちなパターンを可視化し、戦略的な意思決定を支援する新しいアプローチです。