「データ駆動型意思決定」と聞くと、多くの人は経験や感覚ではなく、「データに基づいて判断することだろう」だとイメージするでしょう。たしかにその通りですが、実際に データをどう使い、どう意思決定に落とし込むか を説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。
ここでは、ビジネスのプロセスを医療行為になぞらえて整理してみます。
1. 検査=データの収集
病気を疑ったとき、まず行うのは血液検査や画像診断です。これと同じく、ビジネスにおける第一歩は 現状を把握するためのデータ収集 です。
売上や顧客属性だけでなく、競合動向や市場の変化といった外部データも組み合わせることで、はじめて全体像が見えてきます。検査が不十分なら診断を誤るように、データの収集が偏れば意思決定の精度は下がります。
2. 診断=データ分析
検査結果をどう読み解くかが医師の腕の見せ所であるように、ビジネスでは データ分析 が次のステップです。
単なる平均値や前年比だけでなく、分布や相関関係、因果関係を探ることで「なぜ売上が伸びないのか」「どの顧客層に潜在的な伸びがあるのか」といった診断が可能になります。
分析をせずに「なんとなく調子が悪そうだから売上対策を」と言うのは、症状だけ見て「たぶん風邪でしょう」と片付けるのと同じです。
3. 処方=計画の立案
診断がついたら、医師は薬を処方します。ビジネスにおいては 具体的な計画の立案 にあたります。
「重点顧客をこのセグメントに絞る」「広告費をこのチャネルに再配分する」といった戦略的意思決定がここで下されます。診断結果に基づいた処方でなければ、効果は限定的ですし、むしろ副作用(リソースの浪費)を招きかねません。
4. 治療=実行とフィードバック
処方された薬を服用し、経過を観察するのが治療です。ビジネスでは、計画を実行し、効果をモニタリングすること に相当します。
数値の変化を定期的に追い、思った効果が出なければ処方を変える。まさに医療における「治療計画の修正」と同じです。このフィードバックの有無が、データ駆動型意思決定と単なる思いつきの施策を分ける決定的なポイントです。
おわりに
「データ駆動型意思決定」とは、単にデータを見て判断することではなく、
- 検査=データの収集
- 診断=分析と洞察
- 処方=計画の立案
- 治療=実行とフィードバック
というプロセス全体を通じて、データを意思決定の論理的基盤に組み込む営みです。
経験や勘も大切ですが、それを「根拠ある診療」に昇華させるのがデータの役割だと考えると、その本質がよりクリアに見えてくるのではないでしょうか。
