「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を利用する」という言葉があるそうです。実際、数字そのものはただの事実である一方で、解釈や使い方によって、事実が歪められてしまうことがあります。
以前勤めていた会社で新しい分析手法を提案した際、副社長から「数字は一人歩きするから」と言われて却下されたことがあります。その時は、心の中で「歩かせているのは人間の解釈ではないか」と思ったのを思い出しました。つまり分析する人次第。
私は、数字が持つ美しい整合性や、誰が計算しても同じ結果を示す再現性が好きです。だからこそ、数字を基盤にした分析は、本来、物事の本質に迫る力を持っていると思っています。
その時の副社長の言葉がずっと残っていたことが、複数のアルゴリズムを開発し特許取得につながったのかもしれません。
この「数字の独り歩き」という現象には、仮説検証型のアプローチに課題があるのかもしれません。仮説検証は本来「仮説を数字で確かめ、修正する」ためのものですが、現場では「仮説を数字で正当化する」方向に流れてしまいがちです。その結果、数字は検証の道具ではなく、証明の道具となり、あたかも勝手に歩き出したように見えてしまいます。
現在、開発中のデータ分析の手法は、仮説に縛られず、データ全体の構造そのものを捉えるものです。データ全体の分布や偏り、構造的な特徴を客観的に可視化することで、数字を都合よく切り取ることなく、本来の姿に迫ることができます。
数字は嘘をつきません。しかし私たちが扱い方を誤れば、簡単に独り歩きしてしまいます。だからこそ、数字の持つ、整合性と再現性による、データ全体を正しく読み解く仕組みをつくることが重要ですね。
