使ったことはなくても「回帰分析」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。営業活動の成果と訪問回数の関係や、広告費と売上の関係などを数値で示すことができる便利な道具です。Excelの標準的な機能でもあるので是非いじってみてください。標準的な手法ですが、しかしここに落とし穴があります。
回帰分析でわかるのは、あくまで「相関」、つまり一緒に動いているかどうかです。例えば「残業時間が長い社員は成果も高い」という結果が得られたとしても、それは「残業すれば成果が上がる」ことを意味しません。むしろ成果を上げる人ほど任される仕事が多く、残業が増えているだけかもしれません。これを疑似相関と言います。
このように、相関と因果を混同すると、誤った戦略や施策につながりかねません。
本当に知りたいのは「原因と結果」の関係、つまり「因果」です。これを明らかにするために必要なのが「因果推論(Causal Inference)」という考え方です。因果推論では、「もし施策をしなかったらどうなっていたか?」という“反実仮想”を想定し、その差分から施策の効果を測ります。医療の臨床試験や経済政策の評価などで広く活用されており、ビジネス領域でも人的資本経営やマーケティング施策の評価に欠かせない考え方となっています。
- AとBに関連性ある
- Aが原因となってBが起きる
とはいえ、回帰分析にも因果推論にも課題はあります。
前者は相関にとどまり、後者は設計やデータ条件によって結論が揺らぐことも少なくありません。現実のビジネスデータは常にきれいに整理されているわけではなく、多様な分布や偏りを含んでいます。こうした「データそのものの構造」を無視すると、いくら因果を追っても本質を見誤る可能性があるのです。
そこで私自身は、データの“分布”そのものを見極めることで構造的な優位性や弱点を浮かび上がらせる「分布構造分析」という手法を開発しています。これは、相関や因果では見落とされがちなパターンを可視化し、戦略的な意思決定を支援する新しいアプローチです。
