これまでの社会やビジネスにおける科学的探求の中心は、集団間の「比較」に大きく依存してきました。平均値や分散を基準に、マジョリティ(多数派)の特徴を捉える統計手法です。効率的に大勢を理解し、品質管理やマーケティングの進化を支えてきたのは間違いありません。
しかし一方で、平均から大きく外れた存在、いわゆる「外れ値」はどう扱われてきたでしょうか。従来はノイズや例外として排除され、意思決定から切り捨てられることが常態でした。
ところが今、多様性を尊重する社会の潮流、すなわち Diversity 、そして Inclusion まで深化させる観点から状況は変わりつつあります。
医療の現場では「平均的な患者」ではなく「この一人の患者」を対象にするIndividualization(個別化) が進んでいます。特定の遺伝子変異を持つ患者にのみ劇的に効く薬は、従来なら外れ値として無視されていた存在です。ところが今では、治療法のブレークスルーを生む「鍵」として注目されています。
これは医療に限りません。ビジネス、教育、金融といったあらゆる分野において、マジョリティに向けた画一的アプローチは限界を迎えています。多様な才能やリスクに応える Individualization が、新しい価値創出の源泉となりつつあるのです。
私たちが提唱する「分布構造分析(DSA)」は、こうした時代の要請に応える方法論です。データを平均化してマジョリティに近づけるのではなく、本来の分布構造を尊重し、個々のデータの位置づけを定量化します。従来の外れ値は「構造的特異点」として再評価され、そこから新しい可能性を見いだすことができます。
いま求められているのは、「比較」によるマジョリティの理解から一歩進んだ「構造の理解」です。
外れ値を切り捨てるのではなく、多様性と個別性を新しい競争力の源泉として取り込む。これこそが、Diversity & Inclusion の時代におけるIndividualization戦略における思考の核心ではないでしょうか。
