医薬品は医師の処方が必要な製品であり、直接消費者に販売されるわけではないため、消費財ビジネスで注目されるカスタマージャーニーや顧客体験のマーケティング手法を直接適用することは難しい面があります。

医薬品のエンドユーザー(患者)は直接的な購買決定者ではありません。意思決定プロセスには、医師、薬剤師など複数のステークホルダーが関与します。したがって、カスタマージャーニーは患者の体験だけでなく、これらのステークホルダーの体験も考慮する必要があります。

一方で、市場の開拓・拡大を図るために、患者サポートプログラムや疾患啓発キャンペーン、デジタルヘルスツールやモバイルアプリケーションを利用して、患者の体験を向上させることは有効な手段です。

しかし、経営資源を投じて開拓した市場が必ずしも自社製品に還元されるわけではありません。市場内における競合他社との競争地位によっては、せっかく拡大した市場がみすみす競合製品の売上につながる可能性があるため十分に検討する必要があるでしょう。