本社一元管理でマーケティングプランを策定するとしたらどこに基準を持てば良いでしょうか?

市場規模が大きな顧客からパレートによる優先順位をつけると仮定します。

東京に次いで人口増加率の高い、沖縄県、神奈川県、埼玉県、千葉県を比較してみました。

人口増加の将来推計は沖縄県を除き概ね同じような傾向を辿りそうです。

しかし上位の都道府県の基準を全国の戦略プランとして推し進めて果たして良いでしょうか?

上位の都道府県の構成比および寄与率など検討すべき点はありますが、なにより残りの都道府県では通用しない戦略プランを営業に落としすことは問題があるように感じますがいかがでしょうか?

人口統計とその将来推計から、市場規模と成長性を確保してみました。

最も市場規模が大きな東京と最も人口減少が深刻な秋田県を全国平均と比較しています。

人口ピラミッドで視覚化すればその違いは一目瞭然です。

さらにSCRで診療状況、NDBオープンデータで薬剤の使用状況を比較することが出来ます。

NDPではクラス分類から特定の製品までフォロー出来るのでご興味があれば試してみると良いと思います。

全国を一つマーケットとした戦略プランが有効であるかないかがよくわかるでしょう。

少子高齢化による人口減少が進むことにより国内市場の縮小が生じます。

需要面からみた場合、少子高齢化とそれに伴う人口減少は、多くの分野で需要の縮小要因となる一方で、医療・介護サービスなど一部の分野で需要を拡大させることになります。

日本における医薬品需要量は1991年を境にその成長率が低下し、かつての感染症から生活習慣病や老化に伴う疾患中心へと疾病構造が転換しています。

実際、医科診療費の3分の1以上が生活習慣病関連となっています。

今後はオンコロジー領域やジェネリック医薬品のシェアが拡大していくことが予想されています。

人口減少による市場の縮小、すなわち需要の減少に対して製薬企業はどのような転換を行っているでしょうか?

国内の大手製薬会社は、今後の事業計画の中でもDXが大きな柱の一つになることを発表しており、デジタル化はますます医療業界のスタンダードになっていくでしょう。

これらの状況を市場のライフサイクルのフェーズに照らし合わせてみると、導入期には多くの製薬企業が参入することで顧客にとっての選択の幅が広がり、成長期にはより良い製品が登場します。

製品そのものへのメディカルニーズが満たされ市場の成長が鈍化してくると、新たな市場開拓のために潜在的な顧客ニーズの掘り起こしが始まります。

アンメットニーズが枯渇すると製品そのものではなく付帯するサービスの充足に主眼が置かれるようになってきますが、市場のライフサイクルは既に衰退期に入っています。

これら顧客を中心とした戦略は重要ですが競争市場である以上、競合の存在を忘れるわけにはいきません。

「競争パターンの4類型」では、導入期には多くの競合が参入しますが市場ライフサイクルのフェーズが進むにつれて競争に破れ脱落していきます。

競争市場には必ず競合が存在します。

勝つための戦略プランが必要です。

競争市場では「戦力に勝る側が勝つ」ということが大原則です。

戦力とは「武器性能×兵力」であり、様々な法規制によって製品特性の比較が難し医薬品ビジネスでは武器性能が同一化し差別化が難しい環境にあります。

では兵力に勝る大手製薬企業が必ず勝つかと言えばそうではありません。

経営資源には限りがあるため、必要な場所に必要な量の兵力を配分する必要があります。

製薬企業では市場規模の大きな順から優先してターゲティングを行うパレートの手法を用いるケースが少なくありません。

市場参入期は自社データがないことも理由のひとつです。

成長期から成熟期に入る頃には市場規模に加えて自社製品の前年の売上の高い顧客を優先する、同じくパレートの軸を組み合わせることもあります。

このパレートの落し穴は競争市場にあるにもかかわらず競合の存在を加味していない点です。

戦後の高度成長期からバブル期の市場の拡大を背景とした「レース型の競争」と、リーマンショック後の世界的な景気の後退による市場縮小を背景とする「ゲーム型競争」では戦略プランは全く異なります。

「レース型競争」では市場に参入した誰もが市場成長に伴い売上を増やすことが出来ますが、市場規模が縮小し競合同士がパイを奪い合うゼロサム(どちらかが勝てばどちらかが負ける)の「ゲーム型競争」では必ず敗者が生まれます。

そのためライフサイクルのフェーズに応じた戦略の選択が重要になります。

競争市場には必ず競合が存在します。

パレートによる市場規模の軸に、競合との戦力の差を測る「競争地位と競争優位性」の軸を加えることで限られた経営資源を効率よく配分し使い切ることが出来ます。

レッドオーシャンの中でブルーオーシャンを見つけるためにはどうすればよいでしょうか?

競合が不在のマーケットを見つけるにはセグメント設定、ターゲット設定、ポジション設定のSTP分析を行います。

同一セグメントに競合が不在、あるいは同一セグメントに競合が存在するがターゲットが異なる、ターゲットは同じだがポジショニングが異なるなど様々な状況があり得ます。

当然ですが市場を細分化すればするほど市場規模は小さくなります。

だからといって市場規模の大きなところを狙う必要はありません。

ニッチ市場であっても着実に攻略し、ドミナント的に市場を積み重ねシェアを拡大すればよいのです。

「必ず勝つ、絶対に負けない」戦略を選択することが必須条件です。

STP分析を行うには、外部環境分析、内部環境、SWOT分析など標準的なマーケティングプランニングプロセスを行う必要があることは言うまでもありません。

後発参入であっても確実に多くの需要があるレッドオーシャン市場では一定の売上を見込めます。

先発参入企業が潜在的な市場を開拓するために広告宣伝費を始めとした営業・マーケティング経費など多額の経営資源を投入した市場に後発参入することは経営資源に劣る企業にとってはメリットとなります。

ライフサイクルに応じた市場参入戦略が確立していますが既に標準化しコモディティ化しているため有効な戦略プランではなくなりつつあります。

競争地位と競争優位性に応じて「守る」「攻める」「撤退する」など戦略プランが必要になります。

医薬品ビジネスでは市場参入期にはブルーオーシャン戦略が成立してもライフサイクルが進めばいずれ競合が登場し、レッドオーシャンで勝つための戦略が必要になることが多いでしょう。

つまり競合を意識した戦略が勝敗を分ける重要なポイントとなるわけです。

しかし多くの製薬企業はカスタマーセントリシティを掲げ、価値提供に勤しんでいます。

ライフサイクルが成長期にあればそれも有効な戦略プランです。

しかし成熟期から衰退期では競合同士によるゼロサムゲーム、どちらからが得をすればもう一方が損をする正に血で血を洗うレッドオーシャンです。

そのため利益確保のために市場規模の大きなセグメントにリソースを集中しますが却って状況を悪化させることになります。

競合各社がより狭し市場に集中し戦力を投入することでより競争を激化させ消耗戦を引き起こすことになります。

結果的に経営資源に勝る強者が勝ち残ることになるわけです。

「ペイシェントをセントリックに、ビッグデータからプリファレンスを探り、あたらな価値をジェネレイトし、ビヘイビアチェンジによって今後のマーケットをパースペクションしていく必要があります。」

先日視聴したWebセミナーではこんな言語が飛び交っていました。

正直なところ殆どフォロー出来ずに途中から何の話をしているのか???でした。

最近では物事が複雑化、難解化し過ぎているように感じます。

「新たな価値を創造し顧客に提供する」というキーワードをよく聞きます。

価値提供とはなんとなく分かるような気もしますが、一言で言い表すとしたらどうでしょうか?

顧客が求める価値とは「顧客ニーズ」です。

顧客ニーズとは市場における「需要」です。

マーケティングは需要と供給のバランスを設計するアプローチ方法です。

表現は変わっても結局のところマーケティングの基本と本質は変わらず至ってシンプルなものです。

シンプルで誰でも簡単に再現できなければ意味をなさないでしょう。