KPIに基づいて営業活動を数値的にトラッキングし、各活動が売上に与える影響を定量的に検証することで、効果的な活動とそうでない活動を識別し、リソースの配分や戦略の修正を行う取り組みが行われています。しかし、そもそもKPIは売上につながる項目であるべきであり、KPIが売上向上につながるべき項目であるという前提と、活動結果から売上向上につながった項目を検証するというアプローチの間には、一見すると矛盾があるように感じられます。
KPI評価の意義
- 成果の測定と改善
KPIは、改善の余地がある部分を特定し、戦略の修正やリソースの最適化を可能にします。 - 透明性と責任の明確化
KPIは、担当者やチームの責任を明確にする役割を果たします。 - 迅速な意思決定
特に動的な市場環境において、即時の意思決定を可能にすることが重要です。
KPI評価の限界
企業が売上向上を目指す際に、KPIで設定された活動項目がどれだけ売上に貢献したかを知ることは当然の欲求です。しかし、実際には、特定のKPI項目が売上向上にどのように寄与したかを純粋に定量的に検証することは非常に難しいという現実があります。その理由には以下のような要因があります:
- 多様な要因の影響: 売上には複数の要因が影響を与えるため、特定のKPIだけで因果関係を明確にすることが難しい。
- データのばらつき: KPIの結果は担当者ごとや状況ごとにばらつきがあり、再現性を確保するのが難しい。
- 外部要因の介在: 市場環境や競合の動向など、外部要因がKPIの結果に影響を与え、因果関係を曖昧にする可能性がある。
- 短期的効果と長期的効果の違い: KPIが短期的に売上に影響を与えない場合でも、長期的には効果が現れることがあり、これを一貫して測定するのが困難。
- 個別最適化の影響: 営業担当者が暗黙知に基づいて個別最適化を行うことで、標準化されたKPIの適用が難しくなり、結果として再現性が低下する。
- KPI設定のバイアス: KPI設定自体が主観的であり、適切に選ばれていない場合、売上への影響を正確に測ることができず、因果関係が不明瞭になる。
まとめ
KPIによる評価は、組織のパフォーマンス管理や改善において重要な役割を果たしますが、それだけでは売上向上に寄与する要因を完全に捉えることが難しいという限界があります。したがって、KPIの評価と並行して、KSFをCRMを通じて質的に検証するアプローチを取り入れることが、より包括的で効果的な戦略の実現につながると考えられます。