医薬品市場は成熟期から衰退期に向かっています。

縮小市場では限られたパイを奪い合うゼロ・サムゲームとなります。

戦略に求められる「必ず勝つ、絶対に負けない」ことがより重要となります。

「必ず勝つ、絶対に負けない」 ためには勝つため必要条件である「業界KSF」を明確に把握しなければなりません。

KSFを明確にするビジネスフレームワークを活用しましょう。

業界KSFが明確になれば、自社の強み弱みが明確になり、戦略が見えてきます。

武田テバからカンデサルタンのAGが発売されるようです。

武田のカンデサルタンのAGは既に2014年にあすか製薬から発売されています。

また一般後発品も既に30社程度が参入する市場です。

武田のAGを担うと思われたあすか製薬ですが、武田はテバ製薬と経営統合したことで武田テバファーマにシフトしているのでしょうか?

武田薬品の思惑はさておいて、このビジネスの旨味はどこにあるのでしょう。

市場環境を見てみると、後発品:先発品は2:1。

後発品に占めるあすかのAGのシェアは75%を上回っています。

また全体市場においても5割があすかのAGです。

クープマンモデルを参照すればカンデサルタンの後発品市場は既に勝敗の完結した勝負ありの市場です。

新たに参入してもあすかの競争優位をひっくり返すことは非常に困難です。

武田テバとしてもあすかのAGからの切替戦略は取らないと発表しています。

クープマンモデルでいう勝負ありの市場とは74:26の2者間競争です。

100:0になることはありません。

であれば後発品の残り30%のシェアを武田テバのAGが獲得すれば、カンデサルタン全体市場では武田(35%)+あすか(50%)+武田テバ(15%)=100%となり、ALL武田ラインが完成します。

低価格が戦略のコアとなりがちな後発品ビジネスにおいて、全体市場を占拠してしまえば市場内の強者として「コストリーダーシップ戦略」により利益率を向上することが出来ます。

いかがですか?シェア値を観ることで戦略を推測することが可能です。

さて武田の戦略はどのようなものでしょうか?

顧客マトリクス分析の基本

市場が縮小する際には限られた経営資源を適正に分配しなければなりません。

バランス良く、メリハリをつけて、より効果的にです。

そして誰でも簡単にできて共有出来るシンプルさ手軽さも必要です。

共有するためには共通言語となるロジックがなければなりません。

限られた経営資源を適正に配分する理論を持っていますか?

バランスよく

メリハリをつけて

意識して

継続的に

日常的によく使われるこれらの言葉ですが共通認識を持つための共通言語としての役割を果たせているでしょう?

曖昧さを共通言語として評価する合理的な方法は定量化、すなわち数値化することです。

私は営業部門と本社部門のいずれも所属していたことがあります。

イメージとしては営業部門では経験値や感覚が共通言語になり、本社部門では文字情報が共通言語として使われていました。

またこれらの使用言語の違いが本社部門から営業部門への伝達におけるボトルネックとなっているようです。

では定量化すれば良いかと言えばそうではありません。

数値はFACTですがそのままでは意味を持ちません。

一律均等ではなくそれぞれの状況や背景に応じて変化させる必要があります。

残念ながらその際にまた曖昧さを含むことになってしまいます。

ではどうすれば良いでしょうか?

定量化された数値をどのように処理するか、そのロジックを共通言語にすれば良いのです。

数値を用いるためには数学的、統計学的な手法が必要ですが数式があればPCが勝手にやってくれます。

VUCAの時代に戦略プランまで不確実では困りますね。

世界的な景気の後退と人口減少によって医薬品市場は縮小しています。

多くの領域の製剤ライフサイクルは成熟期から衰退期に移っています。

市場が拡大する成長期に用いられる戦略は通用しません。

より緻密で具体的な経営資源の分配が必要です。

競争優位性を得るためには、顧客に自社製品がいかに魅力的であるかを認知・認識させるための活動が必須です。

しかし医薬品のビジネス環境はコモディティ化しており、差別化よる競争優位性の獲得が難しくなっています。

同一化した中でも、顧客に自社製品を認知・認識させ価値を提供するためには営業の力が大きくなります。

デジタルマーケティングを中心とした顧客サポートでは処方インパクトを十分に得ることが出来ません。

現状では各社MRの人員を削減しており、戦力低下は否めません。

この影響は後々顕著になるでしょう。

国からの手厚い保護を背景に「護衛船団方式」の協調路線。

30年以上におよぶ天下太平。

しかし一転、景気の後退とコロナショックにより市場規模が縮小。

過剰設備、余剰人員、高コスト、円高による業績の悪化。

「大企業病」の表れといってよい管理部門の膨張。

世界的な業界再編による経営統合。

経営計画では経費やコストを大幅に削減させることが主要な内容。

経済不況の度に繰り返す徹底した意識改革 人員削減による組織のスリム化、コスト削減による対処。

しかし資産の圧縮、人員削減等による自力更生ではもはや限界。

これはどこの業界の現状だと思いますか?

新日鉄住友やJFEなどの鉄鋼業界の話です。

中国をはじめとしたアジアの鉄鋼メーカーの成長が脅威となっています。

なんとなく製薬業界の現状としての既視感がないでしょうか?

外資系製薬企業の中には日本のマーケットは魅力がなく、今後アジアでは中国に経営資源を優先すると表明しているところもあります。

コスト削減は一過性のカンフル剤のようなものです。

競争市場での競争優位性を獲得し、売上・利益を増やさなければ最終的には縮小の一途となってしまします。

競争市場には必ず競合が存在します。

競争市場で勝つための理論とプロセスが必要です。

5Force分析とは、競合各社や業界全体の状況と収益構造を明らかにし、その中で自社の競争優位性を分析するフレームワークです。

5つの事象から分析を行うことで自社の市場内における競争優位性を明確化します。

①業界内での競争
②業界への新規参入者
③代替品の存在
④顧客の交渉力
⑤サプライヤーの交渉力

医薬品マーケットは数多くの競合が参入し、同じ薬効を示す競合製品がひしめき合うレッドオーシャンです。

また様々な法規制により同一化を余儀なくされる特殊性を持っています。

競争優位性を獲得することは非常に難しいと言えます。

自社の内部と外部の経営環境知り現在自社がおかれている状況を把握するために、外部環境と内部環境の二つの分析が必要となります。

環境分析を行うことで効果の高いマーケティング施策を実現することが出来ます。

医薬品ビジネスの事業環境はどのようなものでしょうか?

経済は後退し市場は縮小、人員は削減されデジタルマーケティングに移行しています。

様々な法規制によりマーケティング戦略プランは限定的です。

自社の状況に照らし合わせて分析してはいかがでしょうか?

東邦HDの医薬卸売事業が74.3%減益だそうです。  

背景には厳しい価格交渉が影響しているとのこと。

このような状況は東邦HDだけではなく、スズケンの医薬卸売事業においても営業損失51億円であり、理由は同じく未妥結先の販売価格などが影響しています。

私は医薬品卸事業の価格交渉について詳しいわけではありませんが、全ての顧客に同じ条件は提示出来ないはずです。

ロイヤルカスタマーや競合から市場を奪取出来る顧客には値引きする必要が生じることがあるのではないでしょうか?

ABCマトリクス分析表の活用方法を検討してみました。

競合の影響を考慮したマトリックス表を使えば、競争市場において現在の売上を維持する、あるいは競合を駆逐して市場を占有するなど戦略に応じた価格交渉に活用が出来ます。

戦略とは何をするかではなく、何をしないかがとても重要です。

価格交渉には応じない顧客を明確化する必要があるでしょう。