「営業」と「販売」それぞれの役割の違いを理解してください。

「営業」は新しい顧客を獲得する
「販売」はすでに獲得している顧客のサポートをする

つまりMRによる情報提供を単純にデジタルによる情報提供に置き換えても同じような期待する効果は得られないということです。

生産性を向上させるためにMRの人員を削減することは戦力ダウンを招きます。

MRの存在意義について今一度考えるべきです。

あなたの会社のヘッドカウントは本社より営業の方が多いはずです。

人数の少ない本社スタッフがより人数の多い営業を動かした方が高いレバレッジ効果が得られるはずです。

本社での仕事の質を高めるのも大切ですが営業サポートはさらに重要です。

MRによる顧客との面会機会の減少を背景に、各社デジタルによる情報提供を推進しています。

しかし、当初期待した処方インパクトが得られず、最近ではMRとデジタルによるハイブリッド型の情報提供に移行しつつあります。

なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

それは「営業」と「販売」それぞれの役割の違いを考えれば見えてきます。

「営業」は新しい顧客を獲得する
「販売」はすでに獲得している顧客のサポートをする

「MR活動の中心は医薬情報の提供や、集めた副作用情報のフィードバックが主であり、医薬品の販売促進活動ではない」と定義されています。

しかし、実際にはMRは製薬業界における医療従事者を相手とした営業職です。

それでは営業とはなんでしょうか?

営業とは物を購入する意思がない、サービスを利用するつもりのない顧客をターゲットに自社製品を販売します。

つまり、MRとは、自社製品を処方する意思がない顧客をターゲットとし行動変容をおこさせる存在です。

デジタルによる情報提供は営業というよりも販売です。

販売はある程度の製品やサービスを購入する意思のある顧客をサポートする存在です。

当然、売上に対する寄与率は販売より営業が大きくなります。

製薬企業の減収減益が続いていますが、医薬品卸においても同様に減収減益は問題になっています。

そんな中、2021年4月より、GSKがメディセオグループとの取引打ち切るとのニュースは衝撃的でした。

2019年にはノボノルディスクもメディセオとの取引打ち切りを発表しています。

加熱する値引き競争抑制のために割戻しを1次に含める動きも出ています。

製薬メーカーの思惑はどのようなものでしょうか?

減収減益で苦しい製品メーカーは、取引卸の減少によるコストの削減や流通経費の圧縮によるコストの削減を推し進めています。

ではコストカットさえ実現できればそれでよいのでしょうか?

製品メーカーはMS(卸)の力を借りなくても医薬品は売れると考えているようです。

確かに売れるとは思いますが、それが自社製品とは限らないのではないでしょうか。

なぜなら「競争市場には必ず競合が存在する」からです。

同一クラスの製剤であれば大きな違いはなく代替え可能です。

製品メーカーが卸をチェネルの一つとして選べるように、顧客も製品メーカーを選ぶことが出来ます。

競合との市場内における自社の競争優位性を担保しなければ、コストを優先した結果の戦力ダウンでは売上の低下を招きます。

皆さんはB2BやB2Cという言葉を知っている、あるいは聞いたことがあるかと思います。

では医薬品ビジネスはB2Bでしょうか?それともB2Cでしょうか。

一般的なB2Cでは不特定多数が対象顧客となる分散型市場になるため、全体市場から徐々に市場を狭めてブルーオーシャンを探します。

一方、医薬品ビジネスでは全体市場から対象疾患、対象顧客と絞り込んでも、対象顧客である患者に直接的なプロモーションが出来ません。

処方権限のある医師に対して製品価値を訴求する必要があります。

さらに国からの承認を受けた同一クラス内での医薬品の製品特性には決定的な違いはない事が通常です。

すなわち極めて限局的な市場でしのぎを削りあうビジネス環境にあります。

レッドオーシャンで勝つための戦略とプロセスが必要です。

現代のビジネス環境の変化に対応する新しいフレームワークが登場しています。

しかし私たちが知っている実務応用に定着したフレームワークは意外と少ないように思います。

なぜでしょうか?

ビジネス環境は急激に複雑になっています。

市場が拡大している時であればマーケティングプランニングはとてもシンプルなものでした。

ビジネス環境に応じたMECEなプロセスを構築しようとすると非常に複雑化してしまいます。

とてもビジネス書を斜め読みしただけでは手に負えません。

膨大な情報をA.Iに投げ込んで後はお願いするしかないかもしれません。

マーケティング戦略を考える上でのプロセスを標準化する方法の一つにフレームワークがあります。

PESTや3C,SWOTなど皆さんご存知の超有名なフレームワークです。

しかしこれらの多くは戦後復興期からバブル期に登場したものです。

今のビジネス環境と大きく異なることは容易に想像が出来ます。

高度成長期の市場が拡大する場合と、世界的な景気の後退を受け市場が縮小している場合とでは、選択すべき戦略プランは違うのです。

フレームワークは2000年代以降も数多くの提唱されていますが実務応用としてはあまり定着していないように見えます。

今まで数多くのフレームワークを使ったマーケティングプランニングのセミナーを開催してきました。

しかし実際には学んだ方の多くは実践応用をするまでに定着していないのが事実です。

フレームワークは役に立たないという意見もあります。

なぜでしょうか?いくつかの要因が考えられます。

①一貫性を持つ連続性と、偏りない非常に多くの客観的情報が必要

②顧客との面会機会の減少により情報の収集が困難

③経験を通して獲得した情報は定量化が難しく、定性的な情報だけでは十分な分析を行うことが不可能

④必要な情報を取得した上で現況を整理し戦略プランを決定するための技能が必要

要因はいくつか考えられますが、必ずしもフレームワークを活用する側ではなく、フレームワークそのものにも要因はあると考えられます。

多くのフレームワークの基本は第二次世界大戦後に提唱されています。

実に100年も前のことです。

新型コロナウイルスが発生しビジネス環境が急速に変化した現在のビジネス環境にも果たして応用は可能なのでしょうか?

医薬品市場の縮小とは裏腹にDXビジネスは急速に拡大しており、エムスリーの売上および営業利益の額が桁違いに大きいですね。

多くの製薬企業がこれらのサービス提供を受けているはずですが製薬企業は減収減益です。

MRに変わる有効なチャネルとして期待されていたはずですが期待した処方インパクトは得られていないようです。

多くの企業が「会える」「会えない」の軸で戦略プランニングを行うため、不特定多数を対象とした分散型市場に有効なマスマーケティングの手法を取りがちです。

売上を意識し、「必ず会わなければならない」顧客にどのようにしてリーチするかという観点が抜けています。

このアプローチ方法では「強者」の一人勝ちを招きます。

デジタル技術を活用したチャネルはツールであり、手段でありプロセスです。

MRであれ、デジタルであれ、チャネルにこだわらず伝えたいメッセージをいかに優先ターゲット顧客に届けるかが鍵となります。

ともあれマーケティングの上手さでは完全にDX企業が上手のようです。

各社、MRを中心に人員削減を推し進めています。

それによって生産性が改善されますが、売上が減少することでそれも一過性のカンフル剤となってしまいます。

なぜ売上が減少するのか?

それの理由は簡単です。

戦力がダウンするからです。

なぜ戦力ダウンは売上低下を招くのか?

それは競争市場には必ず競合が存在し、戦力ダウンにより競合との戦いに競り負けてしまうからです。

少ない戦力で競合に打ち勝つには限られた経営資源を最適に分配し効率良く使い切らなければ勝てません。

そのためには競合を意識した戦略マーケティングプランニングの手法が必要です。

各企業、デジタルツールによる情報提供のチャネル整備を進めてきましたが、最近ではMRとデジタルツールを組み合わせた「ハイブリッド型」が注目されるようになってきました。

メールやeディテールなどのリモートツールだけでは、期待したほどの処方獲得インパクトが得られなかったという背景があります。

なぜ、顧客が知りたい情報を必要な時に提供が可能なデジタルチャネルだけでは売上が向上しないのでしょうか?

良い製品を作り、正しく情報を伝えれば売れると考えていませんか?

これは高度成長期のように市場ニーズが高く、市場が拡大している時であれば有効な戦略マーケティングプランです。

しかし現代では、少子高齢化と世界的な景気の後退により医薬品ビジネスの市場は急激に縮小しています。

製品がコモディティ化しており、既に市場は成熟しています。

縮小市場では競争はより激しく、消耗戦になりやすい傾向があります。

効率よく経営資源を投下し市場シェアを確保することが重要です。