医薬品ビジネスにおいては過去に幾度も「危機的状況」にあると繰り返されてきました。

大型医薬品の特許切れが集中した「2010年問題」や後発医薬品の数量シェア目標が80%に定められた「2020年問題」など、製薬企業を取り巻くビジネス環境は目まぐるしく変化してきました。

そして現在は「団塊の世代」が75歳以上となる2025年問題という新たな「危機的状況」に直面しています。

2025年問題が過去と大きく異なるのは、これまでは「危機的状況」にありながらも医薬品市場は成長してきたということです。

市場ライフサイクルが「成長期」のフェーズであれば、程度の差はあれ市場に参入する全ての企業が売上を拡大することが出来ます。

しかし「成熟期」から「衰退期」へと市場ライフサイクルのフェーズが移ると、限られたパイを奪い合うゼロサムゲームが始まります。

つまり片方が売上を拡大すればもう片方は売上を奪われ、最終的には市場から駆逐されてしまう危険性があるということです。

すなわち現在の医薬品ビジネスは生き残りをかけた熾烈なサバイバル競争です。

「VUCAの時代」と言われるように不安感情が社会的なレベルで高まっています。

生物学的に生命の危険性を感じると、生物は生存の維持と危険回避の2つに集中します。

多くの製薬企業が行っている人員削減や売上維持にのカスタマーセントリック戦略は、まさに現状維持とリスクの回避のように見えます。

しかしこれらの戦略は市場競争で重要な「差別化」戦略を自ら無効化していると言えます。

「差別化」とは自らマイノリティを選ぶことによってマジョリティの中心となる行為です。

市場ライフサイクルの「衰退期」では、勝者と敗者の二極化が進み、差別化が行われないその他大勢は縮小を余儀なくされるか市場を去ることになるでしょう。