ランチェスター戦略はビジネスでも広く用いられていますが、「中小企業は一点突破」「弱者のための戦略」といった、あまりにも単純化された理解が独り歩きしているのも事実です。

たしかに、経営資源の限られた企業が勝つためには、闇雲に戦場を広げるのではなく、集中投下によって勝機を見出す「一点突破」の考え方は重要です。しかしこれは、あくまで状況に応じて導かれるべきであり、企業の規模や立場によって一律に決まるものではありません。

このような誤解が広がっている背景には、多くの人が「ランチェスター戦略」は知っていても、その根幹にある「ランチェスターの法則」を知らないことが一因と考えられます。

ランチェスターの法則とは、もともと第一次世界大戦時に開発された、戦力量の関係を数式で表現する数理モデルです。戦力差が戦局にどう影響するかを客観的かつ定量的に捉えるものであり、ビジネスに応用すれば、「市場シェア」「資源配分」「競争優位性」などをロジカルに判断する強力な武器となります。

一方、ランチェスター戦略とは、この法則を経営者向けに概念化・体系化したものです。「弱者は一点集中」「強者は広域制圧」といった原則は、あくまで“戦い方のパターン”を示すものであり、「強者は広く、弱者は狭く深く」といった表現に代表されるように、ランチェスター戦略はあくまで企業競争の原則を言語化したフレームワークのために、それをそのまま現代のビジネス環境における意思決定に用いるには解像度が不足しています。

とりわけ、競争が激化し、わずかな差が勝敗を分ける現代において、概念のような抽象的な戦略ではもはや通用しません。その判断には、数理的な裏付けが必要不可欠です。

「ランチェスターの法則」は、戦略を客観的・定量的にする数理モデルです。市場縮小期のゼロサムのゲーム型競争市場だからこそ、戦力量を数値化して競争優位性を築く必要があります。

ランチェスター戦略は「3分間英会話」、ランチェスターの法則は「英文法」

ランチェスター戦略とランチェスターの法則の関係性は、言語学習に例えると非常にわかりやすくなります。
たとえば「3分間英会話」は、すぐに使える表現を覚えて短期的な成果を得るための“入り口”です。それに対して、「英文法」は英語を本質的に理解し、応用力を持って使いこなすために必要な“土台”です。

これと同様に、ランチェスター戦略は、ビジネスの現場で「こう戦えばよい」と直感的に使える戦術的フレーム。
一方、ランチェスターの法則は、その戦略の根拠となる戦力差・効果比を数式で捉えた数理的な理論基盤です。

「中小企業は一点集中」「弱者は局地戦」といったランチェスター戦略の有名なフレーズも、法則に基づいて初めて意味を持ちます。
裏付けのない戦略は、実は“戦略”ではなく“願望”にすぎません。

だからこそ、本当に戦略を“使いこなす”には、感覚で語るだけでなく、ランチェスターの法則という“文法”から学び直すことが必要なんです。

〜フェルミ推定とTAM・SAM・SOMで“どのくらい売れるか”を見極める〜

「がん患者にこういうツールがあれば便利だと思う」「医師がこういう機能を求めていた」 現場の声に触れると、つい「これは売れそうだ!」と思い即行動したくなるものです。しかし本当に重要なのは、行動を起こす前に、「どのくらい売れるのか?」という問いに、構造的かつ定量的に答えられる必要があります。

ニーズは、確かに事業のチャンスです。でも、それだけでは収益化にはなりません。
ここで役立つのが、フェルミ推定とTAM・SAM・SOMを活用した、現実的な市場規模の算定手法です。


フェルミ推定:常識的な掛け算で全体感をつかむ

たとえば「化学療法中の副作用モニタリングアプリ」を構想したとします。
このとき、ざっくりとした仮定で対象母数を割り出します。

  • 年間のがん新規患者数:約100万人
  • うち外来で抗がん剤治療を受ける人:約40万人
  • そのうち副作用の自己管理に課題を感じる人:約50%

100万人 × 40% × 50% = 約20万人

この20万人が、この製品の対象になり得る全体像(母数)です。
これが、フェルミ推定によって導かれる「市場の兆し」です。


■ TAM:Total Addressable Market(理論上の最大市場)

この20万人が、製品・サービスが理論的に届けられる最大市場(TAM)となります。
まだこの時点では、「誰にでも売れる」と仮定しています。


■ SAM:Serviceable Available Market(提供可能な市場)

次に、「本当にサービスを提供できるのは誰か?」という現実的な制約を加味します。

  • 一部の患者はスマホ未所有
  • 高齢患者層は操作に不慣れ
  • 通院先の病院がITに消極的

これらを考慮し、対象のうち30%が実際に利用可能な層(SAM)と見れば、

20万人 × 30% = 6万人


■ SOM:Serviceable Obtainable Market(当面獲得できる市場)

そして、さらに現実的な自社の到達可能性を見積もるのがSOMです。

  • 自社の営業網がカバーできるのは関東圏中心
  • がん拠点病院との連携が未整備
  • 実績・ブランドがまだ浸透していない

こうした状況を加味し、SAMのうち10%を獲得可能市場(SOM)と見積もると、

6万人 × 10% = 6,000人

仮にこのアプリの価格が月額1,000円(年間1万2,000円)だとすると:

6,000人 × 12,000円 = 年間7,200万円の売上ポテンシャル


数字で示せなければ、投資も、判断も、始まらない

「これ便利そう!」だけで走り出すのは危険です。
「誰に、どれくらい、いくらで売れるのか?」を数式で可視化できてこそ、事業としての実行性が見えてきます。

そのためには:

  • フェルミ推定で全体像をつかむ
  • TAMで可能性を最大化し、SAMで提供力を冷静に見積もり、SOMで現実的な収益性を算定する

という段階的な市場評価が不可欠です。


「ニーズに熱く、数字に冷静に」
それがビジネスを成功に導く第一歩です。

あなたはこれまでに「変わってるね?」と言われたことがありますか?
もしそうであれば、それはすでにあなたが凡人ではない証明を手にしているということです。
あとは、その“変わり者”ぶりをどう活かすか。それが分岐点になります。

「変わってるね」という評価は、少数派であることの表れです。
しかし、多数派であること=正しさ・正義とは限りません。

たとえば日本では、就業者全体の約85%がサラリーマン(被雇用者)であり、法人の代表者(社長)は全体のわずか5〜6%に過ぎません。
つまり、起業や法人化という道を選ぶ人は、明らかに「少数派」なのです。

【全就業者に対するおおよその比率(日本)】

区分人数(概算)割合(概算)
サラリーマン(被雇用者)約5,600万人約85%
個人事業主(フリーランス含む)約600万人約9%
会社社長(法人代表者)約400万人約6%
合計約6,600万人100%

※ 就業者全体に対する概算。重複や副業・兼業は考慮していません。

【補足】

  • サラリーマン:正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトを含む被雇用者。
  • 個人事業主:開業届を出している人(青色・白色申告含む)、フリーランス、農林漁業者など。
  • 会社社長:法人登記された会社の代表(株式会社・合同会社・NPO法人など)。一人社長も含まれます。

全体の5〜6%に入る生き方を選ぶ時点で、「変わってる」と見られるのは、むしろ自然なことです。というより、「普通」であり続けていたら、そこには到達できません。

そしてむしろ、「多数派に依存される側」へと立場を移したこの6%こそが、社会の土台を支え、動かしているとも言えるでしょう。
雇用される人がどれだけ多くても、その雇用を創っている存在がいなければ社会は成り立たないのです。
つまり、多数派が生きていけるのは、少数派が動いているからにほかなりません。

属性多数派(雇用される側)少数派(雇用を生む側)
数量約94%約6%
安定性高い(見せかけの)低い(ように見える)
主体性低い(指示待ち)高い(意思決定者)
収益構造労働対価仕組み・スケーラブル収益
社会への影響小さい大きい

起業や法人化を選ぶ人たちの違いは、スキルや経験だけでなく、根本的な考え方や姿勢にあります。
このメンタリティーの差こそが、「踏み出すかどうか」「継続できるかどうか」の境界線になります。

多数派=正解に見えるのは、思考停止によって得られる安心感によるものです。
しかし、「みんなと同じ」であることが正義なら、革新も成長も生まれません。

歴史を振り返れば、時代を動かしてきたのは常に少数派でした。
常識に疑問を持ち、多数派の空気に流されず、自らの信念を貫いた人たちが、新たな価値を生み出し、社会を前に進めてきたのです。

一方、現代の日本社会にはいまだに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という考えが根強く残っています。
周囲と同じ行動を取っていれば安心・安全であるという無意識の同調圧力が、多くの人を判断停止に陥らせているのです。

しかし、この価値観はすでに限界を迎えつつあります。
昨今の大企業による突然の大規模リストラは、正社員という「安定の象徴」すら、もはや保証ではないことを私たちに突きつけています。
「まさか自分が対象になるとは思っていなかった」――この声こそ、集団心理への依存が生んだ結果です。

かつては「変わってるね」と揶揄された人も、今では「変わっててすごいね」と評価される時代が来ています。
時代は確実に変わり始めているのです。

今、必要とされるのは、「みんながそうしているから自分もそうする」という思考を手放し、自分の頭で考える力です。

多数派は「消費する側」、少数派は「創造する側」。
そして、その6%は、「働く場所」ではなく、「働く意味」そのものを自分で定義している人たちです。

「ランチェスターの法則」を応用することで、薬剤の採用状況(シェア構造)を定量的に分析し、戦略的なフォーミュラリ選定が可能になると考えられます。以下にその考え方を整理し、実務での応用可能性を提示します。

ランチェスター分類による薬剤ポートフォリオの再評価フレーム

ランチェスター分類では、競争の構造(=シェア分布)を以下の4つの型に分類し、それぞれの市場構造に適した戦略(採用・維持・削減)を導き出します。

市場構造特徴課題と示唆対応策の検討
分散型上位製剤のシェアが小さく、接戦が多数選定根拠の曖昧さ、過剰採用の可能性絞り込み・統合を検討
三強型上位3製剤で6~8割のシェアを占有市場に均衡があるが、最下位製剤は不要な可能性採用薬を3つ以内に絞る余地
二強型上位2製剤が圧倒的なシェア明確な寡占構造3位以下の採用を見直し検討
一強型1製剤が7割以上のシェアを占有実質的な独占市場他剤は在庫圧迫要因、原則として削除を検討

Google スプレッドシートにエクスポート

活用方法の例(病院薬剤部視点)

  1. 同効薬群ごとの処方実績データ収集・分析:
    • 施設内の同効薬群における処方実績(件数・日数)を集計します。
    • 各製剤のシェア(%)を算出します。
    • 算出されたシェアに基づき、ランチェスターの分類ルールに従って市場構造を判定します。
  2. 市場構造に応じた採用妥当性の判断:
    • 分散型: 「標準薬が不在」である可能性を検討します。
    • 一強型: 「その他の薬剤は本当に必要か?」という観点で見直しを行います。
  3. 薬剤選定見直し提案の薬事委員会提出:
    • 見直しの根拠として、「重複採用」「在庫管理の煩雑さ」「費用対効果」などの観点を整理します。
    • 必要に応じて、DXS Stratify®などのツールを活用し、他施設との比較データを示すことも有効です。

【3】DXS Stratify®との連携

DXS Stratify®を用いてランチェスター分類による市場構造分析の結果をマトリクス化することで、以下の点が明確になります。

  • 競争構造の可視化: 自施設の薬剤シェアが競合施設と比較してどのような位置にあるかを視覚的に把握できます。
  • フォーミュラリ再編の戦略的根拠: 定量的なデータに基づいた、より客観的な薬剤採用・削除の判断が可能になります。
  • 医療現場への説明責任: 薬剤の採用・維持・削除の判断について、客観的なデータを示すことで医療従事者の理解と協力を得やすくなります。

さらに、製薬企業側の競争強度やリソース集中状況といった外部要因を併せて検討することで、より客観的かつ論理的な意思決定が可能になります。

メリット

  • 属人的な判断に依らない、定量的な選定理由の提示が可能になります。
  • フォーミュラリの明文化と、その根拠に対する説明責任が強化されます。
  • 医師への提案においても、「使われていない薬」を数字で示すことができるため、高い納得感が得られます。

補足:一部例外の考慮

以下の領域においては、定量評価に加えて臨床的な必要性を総合的に判断する必要があります。

  • 治療指針やレジメンにより多剤選択が求められる領域(例:抗がん剤)。
  • 副作用・禁忌の回避のために複数の選択肢を残すべき疾患群。

結論

「どの薬剤を残し、どれを減らすべきか」という、これまで現場依存・属人的な側面が強かった課題に対し、ランチェスターの法則という競争理論の視点を導入することで、治療の質、経営効率、供給リスクのバランスを科学的に評価する基盤が確立されます。 これはまさに、フォーミュラリを「戦略として設計する」時代と言えるでしょう。

フォーミュラリ時代における「戦略的インフラ」としてのDXS Stratify®

「医薬品アクセスの確保」は、単なる企業の利益確保の問題ではありません。少子高齢化、医療費抑制、ゼロサム化する市場環境の中で、それは地域医療の持続性そのものを問う社会課題となりつつあります。

こうした時代背景のもと、「営業支援ツール」としてではなく、「アクセス最適化インフラ」として開発されたのがDXS Stratify®です。今回は、その社会的意義と、注目が集まる「フォーミュラリ」への応用可能性について考えてみましょう。


「営業最適化」ではなく「アクセス最適化」へ

従来の営業支援ツールは、シェアの高い医療機関への集中投下や訪問頻度の最大化といったロジックに従って設計されてきました。しかしその結果、ある施設では企業の訪問が集中することで情報提供が過剰に重複し、他方では全く情報がこない。そんな“営業の偏在”が生まれています。

DXS Stratify®が目指すのは、そのような非効率を回避し、企業の強みを発揮できる“戦略的戦場”への適正配置を行うこと。結果として、地域ごとの棲み分けや、アクセスの公平性を支える仕組みにつながるのです。


企業の戦略が、医療現場を守る

製薬企業にとって「勝てない市場からの撤退」は合理的な判断かもしれません。しかし、それが地域の医療機関における選択肢の喪失や、製品の供給停止を引き起こすのであれば、それは単なる企業判断では済まされません。

特に中堅・内資系企業がカバーしてきた希少疾患や特定診療科の分野では、撤退=アクセス喪失に直結するケースも。DXS Stratify®は、こうした“戦わないための戦略”を設計するための基盤となり、ひいては地域医療の多様性維持にもつながります。


「フォーミュラリ運用」への応用可能性


DXS Stratify®は「営業活動の最適化」ではなく「医薬品アクセスの最適化」

DXS Stratify®の設計思想は、企業の強みが発揮できる“最適戦場”を明確化することで、非効率な競争を避け、健全な棲み分けと供給安定性を実現することにあります。

これは、

  • 市場構造を可視化し、
  • 競合との相対優位を分析し、
  • リソースの配分を戦略的に再構築する
    というプロセスによって、個社の業績と社会的医薬品アクセスのバランスを両立させるものです。

結論:営業のためのツールから、社会を支えるインフラへ

繰り返しますが、DXS Stratify®は「売上を最大化するためにターゲットを選ぶ」ためのツールではありません。

それは、「アクセスの偏在」「情報提供の空白」「医療供給の過不足」といった社会課題に対し、戦略の視点から構造的にアプローチする意思決定基盤です。

医薬品アクセスの公平性と持続性を支える。企業の合理的な経営判断と、社会的責任を両立する。その橋渡しを担う存在として、DXS Stratify®の意義は今後ますます高まっていくでしょう。

近年、営業部門を中心とした人員削減を繰り返す製薬企業が増えています。財務の視点から見れば、一見合理的な判断にも思えます。しかし、その裏に潜む構造的な問題に目を向けると、これらの企業が負のスパイラルに陥っている可能性が高いことが見えてきます。

製薬業界は、薬機法・薬価制度・適応症・ガイドラインといった厳格な制度により差別化が難しく、もともと「同質化しやすい」を余儀なくされる業界です。さらに近年はDXの波が押し寄せ、どの企業も同じようにビッグデータを用いて、同じような意思決定プロセスを行い、同じような営業戦略にたどり着く、“誰がやっても同じ”という均質化競争が進行することで、自ら厳しい競争環境を招き、究極のレッドオーシャンを作り上げています。

このような環境では、営業活動の成果が得られなくなり、「営業は非効率」「コストに見合わない」との認識が広がります。そしてその結果、真っ先に手をつけられるのが営業部門の人員削減です。ところが、人員削減による戦力量の低下によって再び売上が減少し、生産性もさらに低下します。これがまた次の削減判断を呼び、企業は自ら競争力を削る悪循環に陥っていきます。

このように、「営業が機能しない → 人員削減 → さらに成果が出ない → さらなる削減」というループに入ってしまうと、構造的に回復が難しくなります。人員削減は一時的に財務指標を改善させるかもしれませんが、中長期的には競争力の基盤そのものを崩している可能性が高いのです。

このスパイラルの原因はどこにあるのか。

営業力強化のためにスキルアップのための研修やDX推進を行う、対処療法的な部分最適では改善することはできません。余分な経費がかさむだけです。営業成果が出にくくなっているのは、市場の構造的な同質化や差別化困難な環境が原因であり、営業個人の能力や努力不足ではありません。営業部門は本社が推し進める「差別化の無効化」施策に従い活動しただけです。しかしそれを見極めず、「営業の生産性が低い=人員削減すべき」と短絡的に判断した経営層の責任は大きいでしょう。

本来、経営層が担うべきは、「どの市場で、どの武器で、どのように戦うか」という戦略的判断です。ところが、実際にはその根幹を見直すことなく、DXや標準化に流され、他社と同じ土俵・同じ戦術での勝負に終始してしまっています。これでは、差別化による競争優位性が得られるどころか、企業独自の勝ち筋すら見えなくなってしまいます。

「同質化の中でどう戦うか」「自社が選ぶべき競争領域はどこか」という根本的な戦略設計を怠り、他社と同じ分析・同じ行動を繰り返すことで、差別化の機会を放棄したといえます。

繰り返される人員削減は、企業の体力を削ぐだけでなく、組織文化や現場の士気をも蝕みます。そして何より、それを導いているのが、戦略を描けていない経営層の判断であるならば、本当に見直すべきは「現場」ではなく「経営」そのものかもしれません。

主要製薬企業の人員削減事例

1. 塩野義製薬

2023年度に単体ベースで13.9%(341人)の人員削減を実施。同社は「特別早期退職プログラム」を実施し、約200人の募集に対して301人が応募した。過去10年間の推移を見ると、2013年度と比較して従業員数は49.3%(2061人)減少しており、ほぼ半減している状況だ。

2. 参天製薬

2023年度に単体ベースで7.2%(131人)減少。人数を定めず早期退職者を募集し、180人の応募があった。連結ベースでは9.7%(400人)減少しており、米国事業の合理化も影響している。

3. 中外製薬

2023年度に単体ベースで3.9%(200人)減少。早期退職を実施し、374人の応募があった。

4. アステラス製薬

2023年度に単体ベースで1.3%(61人)減少。500人規模の応募を想定して早期退職を募集した。2018年3月末時点で2400人いたMRを2023年8月までに半分に削減し、さらに2024年3月末にも早期退職で多くのMRが会社を去った。

5. 住友ファーマ

連結ベースで20.3%(1270人)減少。米国での人員削減が主因とされている。2年連続の大幅赤字の中で、事業構造改革とともに700人規模の削減を実施した。2024年も国内で人員削減を行う可能性に言及している。

6. 武田薬品工業

2024年3月期決算発表の場で、2025年3月期に1400億円を事業構造再編費用に投じることを発表。クリストフ・ウェバー社長CEO就任以来、頻繁にリストラが行われており、2024年8月には国内でのリストラが公表された。単体ベースでは2023年度に4.8%(261人)増加しているが、2024年度以降は複数年にわたる人員の最適化を含む事業構造再編を行う方針を明らかにしている。

7. 協和キリン

2025年5月7日に早期退職制度の導入を発表。対象は40歳以上、勤続3年以上で、募集人数は「特に定めず」としている。2024年にも同様の制度を導入しており、今回が第二弾となる。単体ベースでは2023年度に2.0%(80人)増加していたが、2024年7月から8月にかけて希望退職者募集の実施が公表された。

8. MSD(日本法人)

2024年7月までに希望退職者募集の実施を公表。55歳以上、勤続1年以上(ワクチンファーマ営業部門)を対象に約100人の募集を行い、退職日は2025年3月末としている。2023年6月に日本法人で約200人の人員削減を発表し、対象は営業部門の社員で、MRの数は約1000人から800人に減少した。

9. トーアエイヨー

2024年に希望退職者募集を実施。勤続3年以上(生産部、信頼性保証部は対象外)を対象に約100人を募集し、退職日は2024年11月末としている。

10. 田辺三菱製薬

2024年に希望退職者募集を実施。45歳以上、勤続5年以上を対象に人数を定めずに募集し、退職日は2024年12月末としている。

企業規模別に見る再編の特徴

人員削減の動きは企業規模によって異なる特徴を見せている:

大手企業:アステラス、武田、塩野義、住友ファーマなど、世界市場を視野に入れた企業群では、営業部門中心にスリム化が進んでいる。組織内で特定領域のスペシャリストやグローバル人材に重点が置かれる傾向がある。

中小企業:富士製薬工業、JCRファーマなど、ニッチ市場に強みを持つ企業ではむしろ人員増加傾向が見られる。特に配置薬や希少疾病薬など需要が安定している分野では、採用強化が行われている。

このように、製薬業界の人員削減は「一律の削減」ではなく、「構造的再編」の性格が強い。

1. 現状認識:市場構造の偏重と競争構造の変化

  • 現在の国内医薬品市場はショートヘッド・ロングテール型のべき乗分布を示し、上位数社による寡占状態(Winner Takes All)が顕著。
  • 一部の大手企業が市場を占有する一方で、多くの企業が持続可能性のない過当競争に巻き込まれている。

2. 外部環境の構造要因:制度による同質化圧力

  • 医薬品ビジネスは、薬機法・薬価制度・適応症・ガイドライン・エビデンスなど、厳格な制度下の自由競争に位置づけられる。
  • これにより製品の差別化は難しくなり、競争力の源泉が不明確な同質化市場が形成される。
  • 市場はすでに成長期を終え、成熟・衰退フェーズに突入。競争は拡大ではなくゼロサムの奪い合いへと変化している。
  • 成長市場である海外販路を持つ製薬企業にのみ業績改善が見られる。

3. 内部環境の構造要因:戦略なき資源集中と分析の画一化

  • 多くの企業は、ABC分析(パレートの法則)に基づいてターゲティングを行っており、競争優位性の異なる顧客が同一ターゲットに混在
  • 同一ターゲットに複数社が資源を集中させる結果、競争の過熱と非効率な重複投資が発生。
  • さらに、IQVIAのDDD、VEEVAのCRMといった汎用ツール高シェアにより、各社の営業・分析手法が極度に同質化。競争力の源泉が埋没する。

4. 帰結:消耗戦の果てに訪れる“戦わずして沈む”業界構造

  • 同一ターゲットに過剰にリソースが投入され、勝者以外には成果が残らない消耗戦へと突入。
  • 大手企業が圧倒的なリソース差で勝ち残る一方、中堅・中小企業は市場からの撤退や縮小を余儀なくされる。
  • セールス・マーケティング機能は形骸化し、売上インパクトを生まなくなり、営業部門を中心とした人員削減が進行。
  • 人員削減により活動量が低下し、売上がさらに減少。構造的な負のスパイラルが完成する。

5. 社会的影響:医薬品アクセスへの深刻な波及

  • 製薬企業の経営悪化が進行することで、採算性の低い領域からの撤退や情報提供の縮小が相次ぐ。
  • その結果、地域や疾患による医薬品アクセスの格差が拡大し、医療提供体制に支障をきたす可能性がある。
  • 特に、希少疾患・小児・在宅医療分野などでは、企業の撤退が医薬品供給の空白地帯を生みかねない。

このように、製薬企業の構造的衰退は単なる業績の問題にとどまらず、医療現場の安全性・継続性に直結する「医薬品アクセスの危機」を引き起こす可能性がある。業界再構築のためには、競争戦略の抜本的な見直しと差別化軸の再定義が急務である。 縮小市場における戦略スキームに転換した企業だけが、限られたパイを制する相対的競争優位を確立し、生き残りではなく勝ち残る道を歩むことができる。

総務省の調査によれば、2024年時点で日本の個人における生成AIの利用率は9.1%だそうです。予想よりもあまりにも低くてかなり驚きました。

これは、中国(56.3%)、米国(46.3%)、ドイツ(34.6%)と比較しても大きく下回る数値です。出力結果に対する信頼性や正確性への不安が利用を躊躇させる要因というのも良く聞く話です。

でも出力結果が怪しいというのは、操作スキルが原因かもしれませんね。

「正しい情報を入れないと、正しく働かない」、そうAIを効果的に活用するには、適切なプロンプトの入力など一定のスキルが求められます。

一方で、企業に導入されたCRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)も、結局“使われていない”という話はよく耳にします。

AIとCRM。性質も用途も違うように見えて、このふたつに共通している点は「正しい情報を入れないと、正しく働かない」という特性です。

AIは、プロンプト(指示文)の書き方次第で出力が大きく変わります。

文脈を正しく与えれば驚くほど有用な答えが返ってきますが、曖昧な問いを投げかけると、それらしく見えて中身のない“それっぽい答え”が返ってくることがあります。

CRMも同じです。入力情報が誤っていたり、そもそも入力されていなかったりすれば、どれだけ高度な分析機能を持っていても活用できません。

「ゴミを入れれば、ゴミが出る(Garbage In, Garbage Out)」という原則です。

CRMはよく「箱」に例えられますが、これでは「ゴミ箱」です。

「正しい情報を入れないと、正しく働かない」、この当たり前だけど見落とされがちな原則こそ、AIやCRMを“本当の武器”に変えるヒントなのかもしれません。

医薬品ビジネスは、一見すると“自由競争”の市場に見えますが、実態は厳しい規制のもとに設計された、非常に特殊な競争空間です。
薬機法、薬価制度、適応症、ガイドライン、エビデンス──こうした制度や科学的根拠が厳格に定められているがゆえに、企業の自由裁量で差別化できる余地は極めて限られているのです。

つまり、「保護と規制によって競争が制限される」構造でありながら、その枠の中では熾烈な自由競争が繰り広げられているという、矛盾を抱えたレッドオーシャンマーケットなのです。

さらに、近年はDXの名のもとに、業界全体でビッグデータからのトレンドやパレート分析による標準化や、ソリューションの共通化(BI、CRM、医薬品販売データベースなど)が進んでいます。


その結果、本来であれば企業ごとの独自性につながるはずのデータ活用やCRM施策までもが「同じ武器で戦う均質化競争」へと収束しており、まさに血で血を洗う戦場と化しつつあります。

競争が進むほど、標準化が進み、標準化が進むほど、差別化が困難になる。
この“標準化の罠”こそが、今の医薬品ビジネスを最も過酷なレッドオーシャンにしているのです。

まるで、戦略参謀が自らの軍を、出口のない均質化された死戦場に送り込んでいるようなものです。

武器(ソリューション)も、地図(データ)も、戦術(施策)も、すべてが競合と同じであるならば、そこに勝機などあるはずがありません。

いま求められているのは、同じ戦場に立ち続けることではなく、戦う場所そのものを変える戦略の転換なのです。


SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)は、「営業の効率化」「情報の一元化」「売上の最大化」など、さまざまな期待を背負って導入されてきました。
特に1990年代、バブル崩壊をきっかけに、それまでの“個人技に頼る営業”から“組織で支える営業”への転換が求められるようになり、SFA/CRMはその象徴的な取り組みとして脚光を浴びました。

「売れば売れる」時代の終焉

バブル期(1980年代後半)は、企業が営業活動において「属人的」かつ「感覚的」に行動しても、結果が出やすい成長環境でした。売れば売れる時代です。

しかし、バブル崩壊後は景気が急激に冷え込み、「努力=成果」ではなくなり、戦略や効率が求められるようになりました。

それまで“トップセールス”に依存していた企業も、売上確保のために営業活動を「再現性のある仕組み」に変える必要に迫られました。このとき登場したのがSFA(営業支援システム)CRM(顧客管理)です。

③ ITの進化と接続

1990年代後半にはITインフラが整備され始め、データの蓄積と活用が現実的に可能となり、導入機運が高まりました。それから30年近くが経過した今でも、「導入したが活用されていない」「入力されない」「成果が見えない」、そうした声はいまだに多くの企業から聞こえてきます。

一体なぜ、ここまで時間とコストをかけたツールが“営業の武器”になり得ないのでしょうか。その本質的な問題に、いまこそ正面から向き合う必要があります。

SFA/CRMを「使えば成果が出る」は営業的にあり得ない

営業は顧客のニーズに対して製品を売り込んでいく仕事です。本社を営業、営業を顧客ととらえると、「なぜ使うのか?」が明確でないまま「とにかく入力しろ」では、価値が伝わらない=買ってもらえないという構造です。

これは、営業が顧客に対して「うちの製品、機能がすごいんです!」と一方的に語るのと同じで、相手(営業)のニーズや課題を理解せずに提案しても刺さらないのと全く同じです。営業は日々、提案力を試されるプロフェッショナルです。本社からの導入提案が、的確な課題設定や具体的なベネフィットを欠いたものであれば、その“営業力”はたちまち見透かされてしまいます。営業にとってSFA/CRMは、導入する本社から“営業されている商品”なのです。

そしてこの商品(SFA/CRM)を営業が“買う”かどうかは、

  • 「自分の課題を解決するか?」
  • 「自分の仕事を楽にするか?」
  • 「自分の成果につながるか?」

すなわち、どんな得があるの、メリットは?が納得できている必要があるのです。


SFA/CRMは“箱”でしかありません

SFAやCRMはよく「箱」にたとえられます。
確かにその通りで、これはデータを格納し、共有し、活用するための仕組みです。
しかし、どれだけ高機能な箱であっても、「何を入れるか」「どう入れるか」が定義されていなければ、意味のある活用にはつながりません。

実際、多くの現場では「訪問した」「説明した」「資料を渡した」といった“結果の報告”が形式的に入力されているだけで、
・どんな仮説を立てて
・どのようなアプローチを行い
・顧客にどのような変化が見られたのか
といったプロセス情報や行動変容の兆しが記録されていないケースがほとんどです。

この状態でいくら分析を行っても、「なぜ成果が出たのか」「次にどうすべきか」といった最適解にはたどり着けません。
つまり、“箱”としての設計はされていても、“中身の構造”が設計されていないということです。


KPIは「動いた量」を測るだけの指標です

SFAの導入と同時に、KPI(Key Performance Indicator)の設定が進みました。
「訪問件数」「面談数」「提案数」「資料配布数」など、活動の量を数値化すること自体は悪いことではありません。
しかし、KPIはあくまで“事後的な活動の記録”にすぎず、「どのような文脈で行ったか」「それが顧客のどの段階に影響したか」までは捉えることができません。

結果、現場ではKPIが目的化し、「数字を埋めること」が仕事の中心になってしまいがちです。
つまり、「訪問すること」や「資料を出すこと」が目的になり、「顧客を動かすこと」が後回しになる構造に陥るのです。

KPIの達成をPlanとして繰り返しDoするだけでは、変化の兆しを捉えることはできません。それは、市場が拡大していた過去には通用しましたが、今のような変化が速くゼロサム化した市場では、効果が薄れているのです。


成果を生むのはKPIではなくKSFです

顧客の行動を変え、購買行動へと導くには、営業担当者が顧客の状況を読み取り、適切なタイミングで適切な提案を行う“個別最適化”が必要です。
そのときに鍵となるのが、KPIではなくKSF(Key Success Factor:成功要因)です。

KSFとは、「この商談が成功したのはなぜか」を紐解くための“プロセス要因”です。
たとえば、
・提案タイミングが顧客の課題と一致していた
・競合との差別化ポイントが響いた
・意思決定者の意見が変化した
といった“顧客の変化”や“勝ち筋の発見”を見出すものです。

こうした情報は、数値ではなくナラティブな文脈や営業の観察によって初めて蓄積されます。
そして、これこそが他社に模倣されにくい競争優位性の源泉となります。


標準化と個別最適化は対立します

SFA/CRMの活用がうまくいかない根本には、「本社が求める標準化」と「営業が必要とする個別最適化」の間にある構造的ジレンマがあります。

営業がまじめにデータを入力すればどんどん蓄積されビッグデータとなります。本社はビッグデータを分析し、トレンドやパターンを抽出し標準化しようとします。
それに対して営業は、目の前の一人ひとりの顧客に合わせて、柔軟に対応する個別最適化を求められています。

さらに、本社が導き出した「標準的な勝ちパターン」は、営業にとってはすでに“過去の話”であり、現場では役立たないことも多々あります。
行動変容プロセスを促す必要がある営業にとって、顧客の反応や空気感は日々刻々と変化しており、営業はその“変化の速度と幅”を肌感覚で追いかけています。
そのスピード感は、本社の分析や意思決定の数倍から十倍は速いといっても過言ではありません。


SFA/CRMは「売上を上げるツール」ではありません

忘れてはならないのは、SFAやCRMそのものが売上をつくるのではないということです。
それはあくまでも、「誰に・何を・どのように届けるか」という戦略があってこそ機能する“実行装置”です。

つまり、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)戦略がなければ、SFA/CRMは動かないのです。

  • どこの市場を狙うのか(Segmentation)
  • どの顧客に集中するのか(Targeting)
  • どのような価値を伝えるのか(Positioning)

この地図とコンパスがあってこそ、SFAは情報を蓄積し、KPI/KSFが紐づき、CRMが生きた関係性を築く道具になります。
逆に言えば、戦略不在のままツールだけが先行してしまうと、現場には“作業だけが増えるツール”としか映らないのです。


いま必要なのは、「再設計」ではなく「再定義」です

SFA/CRMは多くの企業にとって、“仕方なく使うもの”になってしまっています。
この状況を打開するには、必要なのは機能改善やトレーニングではありません。
必要なのは、そもそも「何のためにあるのか」を再定義することです。

営業の成果を支援するために、
顧客の変化を可視化するために、
戦略を実行に移すために。

この本質に立ち戻ることができれば、SFA/CRMはようやく「現場の味方」としての役割を果たせるようになるはずです。


まとめ

SFA/CRMが営業の武器にならなかったのは、営業が悪いからでも、本社が悪いからでもありません。
その間にある“思想のギャップ”が、いまだに埋められていないからです。

KPIだけを追っても売上は上がりません。
標準化を進めても、個別最適の積み重ねには勝てません。

SFA/CRMを“営業の武器”として生まれ変わらせるためには、STP戦略という地図と、箱ではなくコンパスとしての機能を与える必要があるのです。