医薬品ビジネスは、一見すると“自由競争”の市場に見えますが、実態は厳しい規制のもとに設計された、非常に特殊な競争空間です。
薬機法、薬価制度、適応症、ガイドライン、エビデンス──こうした制度や科学的根拠が厳格に定められているがゆえに、企業の自由裁量で差別化できる余地は極めて限られているのです。
つまり、「保護と規制によって競争が制限される」構造でありながら、その枠の中では熾烈な自由競争が繰り広げられているという、矛盾を抱えたレッドオーシャンマーケットなのです。
さらに、近年はDXの名のもとに、業界全体でビッグデータからのトレンドやパレート分析による標準化や、ソリューションの共通化(BI、CRM、医薬品販売データベースなど)が進んでいます。
その結果、本来であれば企業ごとの独自性につながるはずのデータ活用やCRM施策までもが「同じ武器で戦う均質化競争」へと収束しており、まさに血で血を洗う戦場と化しつつあります。
競争が進むほど、標準化が進み、標準化が進むほど、差別化が困難になる。
この“標準化の罠”こそが、今の医薬品ビジネスを最も過酷なレッドオーシャンにしているのです。
まるで、戦略参謀が自らの軍を、出口のない均質化された死戦場に送り込んでいるようなものです。
武器(ソリューション)も、地図(データ)も、戦術(施策)も、すべてが競合と同じであるならば、そこに勝機などあるはずがありません。
いま求められているのは、同じ戦場に立ち続けることではなく、戦う場所そのものを変える戦略の転換なのです。
